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第300話 見ろ! これが真の戦力飽和だ!

 奥多摩ダンジョンの1層で、先頭を歩いていたママが足を止めた。


「作戦がふたつあるわ。ひとつは、1フロアずつヤマトがいないか確認しながら最下層を目指す方法。こっちのメリットは、比較的浅い層にヤマトがいたときにそこでミッション達成になることね。デメリットは、ヤマトが最深部にいた場合やヤマトがいなかった場合、時間が掛かること」


 ママが指を2本立て、その指を1本ずつ自分で指し示しながら説明をしてくれる。

 私は上から順番に見ていくつもりだったんだけど、確かにママが言うとおり、結果的に最深部にいた場合時間が掛かるんだよね。


「もうひとつは、一直線に他の階層は無視して最深部を目指す方法。ヤマトが最深部にいる場合はこれが一番早いわ。最深部にヤマトがいなかった場合、戻りながら1層ずつ探せばいい。――ユズ、どっちの作戦を採るかはあなたが決めなさい」

「私が!?」


 突然決定権を振られて私が困惑していると、ママは今まで見たことないような真剣な目を私に向けていた。

 ……そうだよね、私が決めるべきなんだ。だって、ヤマトを取り戻そうとしてるのは私なんだから。


 私は撫子の気持ちが少しはわかるつもり。ヤマトのことがとても大事で、だからこそ「日本武尊(やまとたけるのみこと)に付き従った大口真神」としてのあり方とはちょっとずれて、「日本武尊の妻の弟橘媛」である私の従魔になってることが許せなかったんだよね。


 だって、私は前世も含めてただの人間。でも日本武尊――小碓王(おうすのみこ)は神の血を引いてるから。末座であろうと神である撫子は、「ただの人間に下る主」を受け入れることができなかったんだと思う。そんなことも言ってたし。


 で、そんな撫子だったらヤマトをどこに飛ばすかというと、それはもう一番安全な最深部に決まってる。私だったらそうするもん。

 最後までヤマトを傷つけるのをためらっていた撫子。あの子がもっと手段を選ばないタイプだったら、私には行動原理は理解出来なかったかもしれない。

 でも、ヤマトが大事で大事で、本来のあり方を取り戻すためなら自分の命を投げ出してでもって姿を見たらさすがにわかるよ。


皇子(みこ)様……私が滅んでも、私の勝ちです』


 あの時の最期の撫子の言葉と、血で汚れた顔に浮かべた壮絶な笑顔は私の中に焼き付いている。そう、自分が滅んでも、ヤマトを取り返したんだから撫子の勝ちだった。


 でもね、撫子。私たちは生きてるからやり直しができるんだよ。撫子と違ってヤマトは受肉しちゃってる以上、必ずどこかのダンジョンにいるの。

 だから、生きてる私はヤマトを取り戻すことができる。――きっと。


「私は、ヤマトは最下層にいると思う。理由は、私が撫子なら送る先はそこだから。逆に、そこにいなかったらヤマトはこのダンジョンにいない。でも、私も彩花ちゃんもヤマトはここにいるって感じてる」


 全ては私が責任を負う決断。その重みを感じながら、私はまっすぐにママを見て言い切った。


「彩花ちゃん、そうなの?」

「うん、ヤマトは元々ボクの(しもべ)だったから。あの日ボクがたまたまダンジョンに行かなくてゆずっちに先に出会ったからゆずっちの従魔になったんであって、ボクとヤマト――シロの間には今でも繋がりが残ってる。撫子にそれは切られなかったから」


 ママが彩花ちゃんに向かって尋ねると、彩花ちゃんは自分の胸に手を当ててはっきりと言った。


「蓮くんと聖弥くん、そういうわけだから最深部まで突っ切るわよ。準備はいい?」

「大丈夫です!」

「行けます」


 蓮と聖弥くんも頷く。するとママは凄く悪い顔でニヤリと笑った。


「歩く災害と言われた私とアグさんの真の強さ、見せてあげるわ」


 思わず喉の奥から「ヒッ……」って声が漏れたよ。

 ママも新宿ダンジョンでのレベリングで、更に強くなってるんだよね。元がLV58だったから上がってても70くらいだと思うけど、それでもそれは十分強い。

 更にアグさんだよ……前にステータス見たから知ってるけど、人間の比じゃない。

 上級ダンジョンでレア湧きするドラゴン四天王の一角・フレイムドラゴン。しかもLV50を超えてる。


 2層に降りると、ママより数歩先をアグさんが進んだ。そして、ママが軽くアグさんにコマンドを出す。


「アグさん、咆吼」

「ギャオオオオオオオオ!!」


 圧倒的強者であるフレイムドラゴンの咆吼に、フロアにいたモンスターは我先にと逃げて行った。

 うわっ、戦う必要すらない……規格外過ぎる!


 アグさんは悠々と歩き、その後を私たちが付いていく。ダンジョンのマップは一応頭に入れてきたけど、ここは新宿ダンジョンと違って電波が通じる普通のダンジョンだから、マップも出回ってるしリアルタイムで見ることができるんだよね。


 最短距離を進んで、2層から3層へ進むまでに戦闘は一度も発生しなかった。

 アグさんの! 咆吼が! 強すぎるのである!! しかもこれMPとか消費しないしチートでは!?


「こんな上級ダンジョン攻略があっていいんだろうか」


 何もしないでただアグさんの後を付いて歩くだけで10層まで易々と進んでしまったことで、蓮が悩み始めた。私なんか「時短できてラッキー」くらいにしか思ってないけどね。


「上級ダンジョンは20層からが本番よ。それまでは全て温存しておきなさい」


 上級ダンジョンで荒稼ぎをしていたママがそう言うからにはそうなんだろうね……。

 途中、エルダートレントが前方にいて、アグさんに気づいて逃げようとしてたけど木だけに足が遅かったから、ブレスで焼き払われていた。


 うん。

 これは。

 確かに「歩く災害」だ……。アグさんが強いのが一番のポイントだけど、それをテイムしたママが化け物だわ。

 そもそも、逃げるモンスに対して、「退避が遅い」って理由でブレスで焼き払う辺りがもう魔王だよ。


 そこを通るときにエルダートレントのドロップをアイテムバッグに放り込みながら、普段とは違う意味で怖いママに私はちょっと震えていた。

読んでいただきありがとうございます!

活動報告に「柴犬無双・登場人物紹介」を作りました。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1600476/blogkey/3242605/


面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

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