まきもまさきもまみむめも②マキが,釣り船?妊活?真樹は大漁!
マキも真樹も伊良湖に帰ってきた。朝早くから船に乗る真樹は寝不足の毎日だが、漁は毎日大漁で、大忙し!真樹の給料も上がった!マキも真樹の一生懸命に働く姿に刺激を受けて、釣り船を始めると、言いだした。同時進行で、妊娠、子育て大作戦!伊良湖の海で、何かが始まりそうだ。
②
真樹が、漁師になることになって、マキも伊良湖に帰て来た。真樹としては、そん
な流れに、乗っただけとは言え、少しマキには申し訳ない気持ちもある。
真樹:マキちゃんは、ホントにトリマーの仕事を諦めちゃってよかったの。
マキ:誰も諦めたって、言ってないよ。カヨリーナは、本格的にトリマーで稼いで
行く店じゃないから、自分の技術が通用するか試すのには丁度良かった。
あのままやってても、なんとなく動物好きで楽しいけど、店の経営としては
成り立ってないし、トリマーとして伸びる環境じゃない。
真樹:経営の方は、なんで、何とかなってたの?
マキ:カヨリーナの入ってるビルは、佳代子さんのお父さんのビルで、佳代子さん
が相続したの。2階から上は、事務所とか大手の企業のネットサーバー室で
埋まってるでしょ。ビル全体で、収益は出てるから、カヨリーナは、娘とし
て商売やってる風で良いんだよ。
真樹:でも、自由にできた環境を捨て、この町に買ってきて、僕も漁師にしてくれ
て、感謝してるよ。
マキ:みんなそう言って、私が夢を捨てて真樹に仕事を与えったって思って褒めて
くれるんだけど、都会で思ったように稼げないから逃げてきたくせに尽くす
良い妻を演じてるだけ。どっかで、結婚、出産、家事手伝いで、旦那の稼ぎ
が悪いから大変って言って愚痴てればいいやって思ってるんだよ。利用した
んだ、真樹の事を。
真樹:俺もマキちゃんに会った頃は、就職も決まらず、バイトして、食ってければ
言いやって、思ってたけどね。
マキ:そう、でも今の真樹が必死に努力してるのを見てると、私もできることを、
やらなきゃって、背中押されてる気がするの。
真樹:おもしろい事が見えてくると、こっちは、努力してる気がしてないんだよ。
皆はそう言って誉めてくれるけどね。
美沙さんとこの船とか農地とか貸してほしいって言ってたけど、トリマーと
関係あるの?
マキ:長い目で見て有る。長ーいい目で見てね。なんか、今日、質問多いし、良く
しゃべるね?
真樹:マキちゃんがあんまり酔ってないから。僕が話しに入る、間が有るんだよ。
マキ:おーっ、なんで、飲んでないか分かる?うふ・・
と、言ってマキが、真樹に抱き付いた。
真樹:うっ、・・なんでだろう・・
マキ:あれ!見てないの・・・
と、冷蔵庫に貼ってある。基礎体温のグラフを指さした。
真樹:あー、最近、ちょっと太ったからか!
マキは、基礎体温のグラフと一緒に体重も記入していた。
マキ:アホ!なんでもいいわ・・今日はチューの日なの”ブチュー、ベロベロ”
そうなのだ、もう30歳になったマキは、出産も計画しなければならない。仕事を
軌道に乗せてからとか、悠長なことは言ってられない。妊娠活動も同時進行で、
ラブラブ、にゃんにゃんと、致さなければ・・
本音を言えば、真樹を帰ってくる口実に利用していたマキだったが、必死に努力し
ている真樹の姿に背中を押されている。
翌朝3時、真樹は、網元の輝さんのとこに漁師の仕事に行った。4月に入り水温
も上がって、魚の活性が高く連日豊漁が続いている。4時に船を出して10時頃
まで沖で網を引いて、魚の選別、12時過ぎに伊良湖港に戻る。魚を水揚げして、
セリは、輝さんに任せて真樹たちは、赤羽港に戻る。船や網の清掃、修理。次の
漁の準備、みんなでやる仕事が終わって自分の練習をする。針の研ぎ方、縛り方、
網の修理の方法や、船の装備の使い方など、覚えなければいけないことは山ほど
ある。
真樹が帰ってくるのはだいたい18時過ぎる。寝るのは早くても21時、漁が続
くと睡眠時間は4,5時間で毎日、寝不足なのだ。
漁師にとっては、好都合なのだが。温暖化のせいかどうか、水温が高く漁場が近く
なってきている。赤羽港を出て、30分ほどで、漁場に着くので、移動中に寝る
時間もない。サワラやトラフグ、太刀魚などの単価の高い魚や、マグロやカツオ等
の大型の魚も取れるようになった。網元の輝さんは、儲かって儲かって、笑いが、
止まらない。
旦那も亡くなった、美沙は、何かとマキを気遣ってくれて、一緒に生活している
ようなものだ。洗濯や掃除こそ別にしているが、夕食は、ほとんど美沙の家で食
べるようになり、泊まることも多い。この日も3人で夕食だ。
マキ:ちょっと、給料上げてくれたね。
真樹:むっちゃクチャ魚取れてるから。仕分けで死にそう。
マキ:でも、こうやって魚をもってきてくれるし、嬉しい!
美沙:そうだよ、直斗は、船に酔うし、あの人は公務員漁師だったから皆が釣れる
ぞって言い出してから、場所聞いて、ちょこっと釣ってくるだけだから魚も
ほとんど買ってた。こんな良い魚もらって帰ってくる。良い婿だなあ!
真樹:先輩たちが、お前ら若いからたくさん食べろって、良い魚くれるんです。
美沙:しっかり稼いでしっかり食べさせてくれないとな、おとうさん!
マキ:おばさん・・まだ分かりませんから。
真樹は全く気が付かない。
寝室で、
真樹:マキちゃん、明日から海が荒れるから、しばらく休みだよ。マキちゃ~ん。
”ブチュー・・”
マキ:うわー、キムチくっさー!歯みがいて無いだろ!あっち行け!オヤスミ・・
真樹は一人歯を磨きながら・・
真樹:先月まで、歯磨き関係なく、やる気マンマンで、寝かしてくれなかったのに
・・・なんで?
やっぱり真樹は、分かってないらしい。
しばらくして、夕食時。この日は、美沙は町の寄り合いで外で食べてくる。
真樹:お風呂、先に入ってくる。
マキ:料理並べちゃうよ。
漁から真樹が帰ってきた。相変わらず漁に出れる日は大漁だ。太刀魚やヒラマサ、
カンパチなどの暖かい海の魚が驚くほど取れる。給料に歩合の手当てが付くよう
になり真樹の収入も多くなった。
マキ:真樹、ビール飲む?
真樹:今日は、飲みたいね。
真樹が風呂から上がってきた。
マキ:頂きまーす!
もずくに、やっこ、キュウリが、1本そのまま。キムチに、チャンジャ・・・
真樹:頂きます。あっさりしてるね。きゅうりどうするの?
マキ:私が、そのままかじる!最近のマイブーム・・
真樹:暑くなってきたから、体には良いかな。端っこの方を残しといて・・
マキ:クワガタの餌!私のきゅうりをクワガタに取られるのか・・
真樹が欲しいと言って生き物美容室カヨリーナから貰ってきたクワガタの幼虫が、
成長して、大きなクワガタが、生まれていた。クワガタの飼育が真樹の楽しみに
なっている。自宅の網戸にとまっていた、伊良湖のカブトムシやヒラタクワガタ、
コクワガタ等も捕まえた。だんだんケースが増えてマキは、気に入らない。
マキ:クワガタのケースを何とかして!捨てろとは言わないから・・
真樹:奥の部屋なら良いだろ。棚を作って並べるから。
マキ:棚作ったら、もっと増えるんじゃない!
真樹:部屋の中だけにするから、良いよね!
部屋数は十分あるから生活に問題ない。日当たりのいい居間からは追い出された。
マキ:真樹君!おとうさんになります。
真樹:赤ちゃん、できたの!やったー!高齢出産だ!
マキ:高齢出産って言って喜ぶな!・・30過ぎなんて今は普通だって言われた
んだから。高齢出産って危ないから良くないよって意味だよ。
真樹:マキちゃんが嬉しそうに言ってるから覚えた言葉なんだけど?・・あれ?
良い意味じゃないんだ・・
真樹は、高礼出産で、お祝いや、補助金がいっぱいもらえると思っていたようだ。
マキ:上手い事仕込んだな!パパ一発で、命中だったんだぞ!!
真樹:上手い事って?
マキ:私の仕事も準備したいし、真樹の仕事のことも考えると冬場に出産した方が
良いと思って、4月に妊娠しないとなあって、2月14日出産予定だから
5月の連休には営業開始できる。良いタイミングで命中させたって事!
真樹:5月の連休に営業?何を・・
マキ:私、釣り船始めるから。
真樹:出産と釣り船って・・なんか関係あるの?
マキ:関係ないよ。私の仕事として、釣り船やる。出産待ってたら遅くなっちゃう
から、妊娠中に準備して、安定期に入ったらプレオープンして、来年の4月
末から本格的に始める。美沙さんに子守手伝ってもらうようにお願いした。
真樹:忙しいね。何で釣り船?
マキ:今始められることが、釣り船しかないから。1級船舶免許もってるし、美沙
さんとこの船がつかえるから。
マキは、父も漁師だったので早くに2級の船舶の免許を取った。1級の免許は、
漁師を手伝うのに必要ないが、他の年配の漁師たちが、学科試験が厳しいので若い
マキなら受かるだろうと、マキがひとり1級船舶掃除氏の免許を持っている。
釣り船をやるのには1級も2級も関係ない。
マキ:名刺に1級小型船舶操縦士って書けるのは伊良湖港の船長で私だけだから、
普通の人なら2級より1級が良いと思うでしょ!
真樹:準備って何するの?
マキ:船を整備したり、登録したり。インスタで予告、釣果報告して、フォロワー
増やしてインフルエンサーになる。それから釣り船のお客さんを募集する。
今どきの商売には、ネットやSNSは、不可欠だが、先にSNSを始めるとは、
準備に余念がない。
真樹の仕事も順調なので、マキもやる気になっているようだ!