優勝者は……!!そして芽生えた仲間意識!!
「ではラスト!エントリーナンバーワン!セブラン!いつでも貴様のタイミングで初めて良い!」
俺は指をパチンと鳴らす。
巨大な細長い物体が数人の手によって運ばれてくる。ズッズッズッ…途端に警備の兵が躍り出る。それを制するは王。
「なんと!これは弓!バイオリンに対応した巨大な弓…か?!」
中央がくぼんでしなり、弦が貼ってあるそれは紛れもなく弓だ。1人では持てないため、3人がかりで持たせているが。
「気をてらったのか…!」
3人のパフォーマンスを見てなお、ニコニコ微笑みつつ褒めていた王が初めて真顔になった。その目が語る。早く弾いて見せよ。弾けるものならば…と。
俺は踊り子のもう1人の正体、弦楽器奏者と他の弦楽器奏者三人、つまり四人に合図を送る。
踊り子が通常サイズのバイオリンを持ち、三人はバケツリレーのようにバイオリンを巨大弓で下げ弓の方向に弾き始めた。
「なんと!下げ弓のみでの超ロングトーン!上げるタイミングなどありはしない!気をてらう戦術などを認めはせんと厳しく聴くつもりでいたが…壮大にして雄大!途切れることのないロングトーンが本来実現不可能なレベルの壮大さを醸している!フルオーケストラの絶対的な骨格として機能しているのじゃー!メロディーのポテンシャルの底上げを果たしているのじゃあああ!!」
俺は王を素直に尊敬した。こいつわかっている。
「では王より優勝者の発表を賜る!お願いいたします!」
「ふーむ。私が選ぶ優勝者はシェブロン!エントリーナンバーワンシェブロンじゃー!」
おお、名前を間違えられてしまっているが、直で優勝した。わかっていたが。
俺はうやうやしさを演出しながら、かしづいた。
「確かに他の3名も素晴らしいパフォーマンスであった。だが余が求めていたのは聞いたことがないが接頭に着くとは言えあくまでオーケストラ!!ルス・ストロベリーは単体で歌唱した。ラザファルト・ベラドラゴンは自身がピアノ奏者として凄まじすぎてオーケストラを喰っていた。ビューティースキンにおいては頭を光らせるのは奇抜だったものの、譜面は正直凡庸と言わざるを得ない。
セブランのフルオーケストラは紛れもなく世の探究心を満たすものであった。セブランを栄誉をもって我が宮廷オーケストラの組織として迎え入れよ!」
「ははー、光栄の至りにございます」
適当に合わせて頭を地べたにつけるふりをしておく。
「明日正式に顔合わせがあるからな。曲者ぞろい者が皆腕は一流じゃ。雰囲気に飲まれぬよう心して臨むように」
王が去り、見物勢が散った後の広場には出場者のみが残された。俺は優勝したから気分が良いが他の三人はさぞや悔しい思いをしていることだろう。…だがなぜ帰らない?こいつらも俺と同じ思いでいるとしたら。
「俺には1歩及ばすといった具合であったが、お前たちも凄いパフォーマンスだったと思うぞ!」
俺から少し離れてうつむいていたビューティースキンが反応した。
「…おう、お前の上からのテンションはなんかむかつくが負けたんだから仕方ねぇ。そうだぜ。俺たちよくがんばったよなぁ!」
するとラザファルトが低くうなった。
「負け犬には何も言う権利はない。本当は何も吠えずに去りたいところだが1つだけ言わせろ、セブラン…だっけか」
「なんだよ」
ラザファルト・ベラドラゴンは強い。フルオーケストラ勝負だから勝てたが、単体でピアノを弾かせたら、こいつはおそらく無類の強さを発揮する。その能力の高さはオーケストラを喰っってしまっているなどと称されたことからもうかがえる。すごい男だ。
だから俺も真剣にやつのの次の言葉を待つ。
「お前は不可能を可能にした。俺は限界を超えただけ。どちらが勝ったかを開けたのはそこだ」
「ほう…そこに気づいたか、良い分析だ」
「だから!俺は次こそ大きな不可能を可能にして勝つ!その時はまた勝負してくれ!」
「ああ、受けて立とう」
ラザファルトと俺がこぶしをぶつけ合う。するとあっけにとられて様子を見守っていたビューティースキンも慌てて近づいてきて、こぶしをぶつけてきた。
俺たちはたった1人まだ残っていてルス・ストロベリーの方を見た。ストロベリーはとことこ近づいてくると、無言で小さなこぶしを突き出し俺のこぶしにコツンと当てた。
「あ、なんでセブランにだけ」
ビューティースキンがすねる。
「ストロベリーお前も再戦を望んでくれるのか」
軽く茶化すように言うと顔を少し紅くし、ふいっとすぐ離れてしまう。
その際長いストロベリーブランドが少しあたり、くすぐったい気持ちになる。あくまで興味はないが。
「次に会う時にはまたここウォータリング・サンドでもっと心揺さぶる戦いにしよう!」
そう誓って俺たちはそれぞれの方向に散った。
お読みくださりありがとうございますっ!
応援いただけると大変うれしいです!