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1話

「ミリア……! 無事だったのか?」


 遠くから、聞きなれた声がする。


 なんだか頭がとてもぼんやりしている。

 そして、頬が痛い。


 不思議に思いながら目を開けると、凄く近くに金色の髪をした、整った顔があった。


 私はどうやら彼に抱きかかえられているようだった。


「ストレイン……?」


 すぐに状況を呑み込めなくて、私は目を瞬いた。


 ストレインはシリウスの護衛騎士で、私の幼なじみでもある。

 今日もシリウスの護衛として、パーティーに参加していた。


 私に心配そうな顔を向けるストレインの目は潤み、綺麗な金髪は濡れぽたぽたと水滴が落ちている。


 あまりにも近いストレインの顔に、私は慌てて彼から離れようと体を起こす。


「ぐっ……ごほっ」


 慌てたためか、そのまま私は咳き込んでしまった。ストレインが気遣わしげに背中をさすってくれる。


 そこで私は、やっと先ほどまでのやり取りを思い出した。


 痛む頬は、ストレインが目覚めない私の頬を叩いたのだろう。


 私は殺されかけたのだ。


「急に動くな。ミリアがそんな追い詰められていたとは気が付かなかった……すまない。助かってよかった。本当に」


「え? 何を言っているの?」


「シリウス様から君の姿が見えないと聞いて、探しに来たんだよ」


 慌てて周りを見ると人だかりになっていた。


 当たり前かもしれない。

 この国の王太子であるシリウスの婚約披露パーティーの途中だったのだから。


 発表はパーティーの中頃で行われる予定だったので、シリウスに外で風に当たろうと誘われた時はなんの疑問も持たなかった。


 シリウスでも緊張するのだなと思っただけだった。


 そのシリウスは今、人混みの端に忌々しそうな顔をして立っていた。


 そんな顔をしたら、ばればれですよ。


 死にかけている婚約者を見る目ではない。

 私はため息をついて、ゆっくりと起き上がる。


「ありがとう、ストレイン……」


「君が無事なら、全てがなんてことないよ」


 お礼を言うと、ストレインはさっと手を取って支えてくれた。


 いつでも優しいこの幼なじみは、本当に心配してくれていたみたいだ。


「無理をするなと言っただろう。本当に、何故こんな事を」


「わからない。……ストレインが助けてくれたの?」

 

 私は首を振って、理由は答えなかった。


 先程は気が付かなかったが、ストレインが濡れていたのは髪の毛だけではなかった。


 その均整の取れた身体にとても似合っていた燕尾服もびしょびしょだ。

 彼が飛び込んでくれたのだろう。


 そっとシリウスの様子を伺うと、私の言葉にほっとしたようだった。

 当然のように濡れたりなどはしていない。


 ばーか。


 私は心の中で毒づいた。



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