2:第1回 幻想郷合同結婚式
ただの冗談が、本気になってしまったとき。
今回の作品はまさにそんなイメージです。
※ガールズラブ要素あり
どうして、こうなってしまったんだろう。
隣に座る白いドレスの金髪美女…逆隣りには、紋付き袴と白無垢の美女二人。
そして、私の色にふさわしく白と黒のタキシード。
はぁ~。
ため息をひとつつきながら、いたずらっぽい笑みを浮かべた親友の紅白巫女と目があった。
…どうしたもんかね。
どうやら…私・霧雨魔理沙と、アリス・マーガトロイド。
そしてさらに、藤原妹紅と上白沢慧音、二組の結婚式が、博麗神社で盛大に執り行われている。
そんな午後。
「結婚式ぃ?」
「そ、慧音と妹紅のね」
その計画を初めて聞いたのは、一週間ほど前。
いつものように博麗神社に遊びに来ていた時だった。
「最近妹紅を含めて、レミリアとか他の連中と話すと、妹紅ったらいっつもけーねがけーねがっていうもんだからね。
「そんなに慧音が好きなら結婚しちゃえば?あ、もしするなら、ウチの神社で神前式にしなさいよ」って言ったのよ。
そしたら「あ、それいい!やろやろ!」って」
「アイツすげぇな…」
「まぁ大分酔わせてたんだけどね。
シラフになってからそれ聞かせたら青ざめてたけど、その時には紫も萃香も動き出してしまっていたし、
もう止められなかったわ」
「ほう…」
「しかも、慧音は慧音でノリノリ。
だから妹紅も引くに引けなくなって、日取りも決まったって段取りよ」
「それは面白くなってきたな」
話を聞いていけば、これは面白いと思った私は出席を一もにもなく承知した。
…それがこんなことになるとは思いもせずに。
「皆様、本日はご多忙の中、博麗神社にお集まりいただき、まこちょっ!!…まことにありがとうございます。
私、本日司会を務めさせていただきます、司会の魂魄妖夢です」
「同じく、司会の八雲藍です」
「本日は、よろしくお願いいたします」
あーあ、のっけから妖夢の奴噛みやがった、大丈夫かね、あいつは。
「ではまずはじめに、本日の式の主催者であります、八雲紫さんに乾杯の音頭をお願いいたします」
「只今、ご紹介にあずかりましたゆかりんです。
では今宵、婦妻となろうとしている二組…上白沢慧音さんと藤原妹紅さん、また霧雨魔理沙さんとアリス・マーガトロイドさん。
本日はご結婚おめでとうございます。
あなた方の幸せ、お祈りしています。
時に、魔理沙」
「な、なんだよ」
紫の挨拶の途中、突然私の名前が呼ばれる。
「こうして本妻を娶ったんだから、これ以上浮気はいけないわよ?」
どっ。
もともと酒飲みに集まった連中だし、マトモにあいさつするわけはないと思ったが、いきなり笑い物かよ。
わたしはむっとしながら慧音と妹紅と向くと、二人はおかしそうに笑っていた。
…こいつらまで敵か。
「冗談はさておき、挨拶が長いと嫌われるわね。
では、皆様グラスを…乾杯!」
「「乾杯!!」」
こうして盛大な結婚式、という名の宴会が幕を開けた。
始まってから数分。
「あはは」
「うふふ」
隣では慧音と妹紅が楽しそうに話している。
「ねぇ魔理沙」
「ん?」
さっきまで霊夢とずっと話していたアリスが、そっちの話が終わったのか私に話しかけてきた。
「少しは嬉しそうにしたら?
結婚式の主役なのよ?」
…それにしてもこのアリス、ノリノリである。
「主役は主役だけど…ニセもんだしなぁ」
「バカ…楽しまなきゃ損よ」
「お前、嬉しそうだな?」
「まぁね。相手があ…だし…」
「ん? 今何か言ったか?」
「んーん、何も」
そうこうするうちアリスの方に紫が来て話を始めた。
「皆様、ご歓談きっ…ご歓談中ではございますが、今回は御来賓に多数の方々をお招きしております。
その中から、数名の方にごあいさつをいただきたいと存じます」
「ではまず、紅魔館の皆様を代表いたしまして、本来であれば霧雨魔理沙・アリスマーガトロイド両名と同じく魔法使いのパチェリー・ノーレッジ様にお願いしたいところではございましたが、本日はお体の調子が悪く御欠席となっておりますので、紅魔館の主でありますレミリア・スカーレット様にお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします」
パチパチパチパチ…。
「只今ご紹介にあずかりました、紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ。
本来なら私の友人で、そちらの魔理沙・アリスと同じく魔法使いのパチェリー・ノーレッジが挨拶をする予定だったけど、持病のぜんそくで迷惑をかけてはいけないから、欠席しているわ。
魔理沙・アリス、そして慧音、妹紅。
本日は本当に、おめでとう。
人間の里以外で結婚式が行われることなんて、初めてのことじゃないかしら」
レミリアの挨拶を聞きながら、私は少しずつ今の状況を考え始めていた。
今日は自分とアリス(と、慧音・妹紅)の結婚式で、アリスは楽しそう。
…もしかして、もしかして、なんだが。
アリスが嬉しそうなのって…。
「というわけで、本日はおめでとうございます。
以上、紅魔館代表・レミリア・スカーレット」
パチパチパチパチ…。
「ありがとうございました、レミリア様。
続きまして、永遠亭を代表いたしまして蓬莱山輝夜様にお願いしたいところでしたが御欠席ですので、代理として八意永琳様にお願いいたします」
「はい、只今ご紹介にあずかりました、八意永琳です。
まずは、姫…私たちの主である輝夜が出席していないことについてお詫びいたします。
今回は輝夜を出席させるのは、皆さまの安全を考えると、危険との判断からです。
と申しますのも、こちらの藤原妹紅さんと輝夜が弾幕勝負をよくやっておりまして…」
いつの間にか挨拶が永琳にあいさつが変わっていた。
永琳の落ち着いた声を聞きながら、アリスに再び考えを戻す。
…もし、私の考えがあっているとするなら…アリス、お前…。
「しかし、私はふたりがいがみ合っているとは思っていません。
妹紅さんも輝夜も…心やさしい人であるのは…皆様ご存じのとおりです。
妹紅」
「…はい」
「あなたにとっては、慧音さんが一番大切な人に、今日なりました。
…でも、輝夜の事も忘れないであげてね」
「…」
妹紅がうなずいたのが見えた。
「以上をもって、ごあいさつと代えさせていただきます。
永遠亭代表、八意永琳」
パチパチパチパチ…。
永琳への拍手を聞きながら次の挨拶に向かう人物が見えた。
…親友の博麗霊夢だ。
「ありがとうございました。
では最後に、今回の主催者の一人であり、会場の提供者でもある、博麗神社の巫女、博麗霊夢さんです」
コホン。
「えー…只今紹介にあずかりました、博麗神社の巫女、博麗霊夢です。
主催者ということもあり、皆様には一言お礼を申し上げます。
まず、慧音、そして妹紅。
この席を設けようと最初に考えたのは、妹紅との会話で、慧音のことでいつも惚気話がでる、ということでした。
この式を境に、さらに妹紅の惚気話が加速すると思うと、ちょっと複雑ではありますが、楽しみでもあります。
そして、私の悪友である二人、霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイド。
魔法使いという共通点もあり、非常に仲が良いという印象でした。
加えて、この神社で行われる宴会の席でも、二人が仲睦まじく談笑しているのをよく目にしていました。
そして、妹紅・慧音の結婚式の話が出た時に、私の中にはこの二人も同時に結婚式を挙げさせてしまいたい…そう思っていました。
数日前にアリスには正直にこのことを話し、快諾を得ました。
しかし新郎となる魔理沙には話しませんでした…妹紅同様照れ屋で、プライドの高い魔理沙はこの話をすると、きっと断るだろう、と。
そこで…実は魔理沙には今日、式が始まるまで新郎であることを知らせていませんでした。
ですので、この場をお借りし…魔理沙に一言」
そう言って霊夢は挨拶用のマイクを手にとり、私の前に歩いてきた。
「ごめんなさい!」
深々と私に対して頭を下げる霊夢。
「だますようなことになってしまって、申し訳なかった…これだけは謝っておきたかったの」
「お、おい…霊夢、頭あげろって…その…そんなには、気にしてないから」
私がそう答えると、霊夢は顔をあげて微笑み、ありがと、と声に出さずに言った。
「…失礼しました、皆様。
私の魔理沙への謝罪の終了をもちまして、私からの二組への挨拶とさせていただきます。
博麗神社、巫女、博麗霊夢」
わー。
パチパチパチパチ。
レミリアや永琳への拍手とは違った、温かい拍手。
はっ、私は悟ったよ。
コイツのカリスマ性には、一生かなわないんだろう、ってね。
「ありがとうございました。
では、宴もたけなわではございますが、二組には、誓いの儀式とあげていただきたく思います。
前の方へ、どうぞ」
「?」
私には何のこと、だったが、他三人にはきちんと話が行っていたようで、恥ずかしそうに今まで座っていたテーブルの前に立たされた。
「では、新郎の慧音さん、魔理沙さん、新婦に誓いの口づけを…」
「!?」
わー!!
幻想郷の魑魅魍魎達は総立ち。
「んっ…」
すでに慧音と妹紅は…顔がぴったりと重なっていた。
そして目の前のアリスは…目を閉じて唇を少しだけ突き出している。
「(…アリスがいいなら…)」
そう思い、私も目を閉じてアリスに…唇を重ねた。
「皆様、本日はご参集いただき、ありがとうございました。
これで本日の式はすべて終了いたしました。
つちゃ…つたない司会にも関わらず、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
司会の魂魄妖夢と」
「同じく司会の八雲藍でした、ありがとうございました」
こうして結婚式は幕を閉じる。
出したシャンパンがアルコール度数の低めのやつを選んだとは、紫の談。
最後の最後まで暴れる奴もおらず式はしめやかに営まれた。
「お疲れさん、四人とも。
これから片付けになるけど、四人は新婚生活スタートってことで、家に向かってちょうだい?」
「ああ、ありがとうな、霊夢」
「ありがとう、霊夢…じゃぁお先に」
そう言って慧音と妹紅が先に帰る。
「よし、私たちも帰ろうぜ、アリス。またな、霊夢」
「…うん…じゃあね、霊夢」
そう言って私はいつもの魔法使いの衣服に着替え、アリスとともに箒にまたがる。
アリスの顔が少し赤い。
「…魔理沙」
「どうした?」
その途中、アリスが私を呼ぶ。
「式の途中の…その、キス、なんだけどさ」
「え、あ、ああ…」
「霊夢と紫が、魔理沙が私にキスするしないで、賭けをしてたらしいわよ?
ひどい話だと思わない?」
「…あいつら、ひどいな…で?」
「で? あ、どっちが勝ったか?
霊夢よ、アイツがする方にかけてたんだって」
「…そっか。
じゃぁあいつ、アリスに助けられたんだな」
「…どうして?」
不思議そうな顔をするアリス。
私は入ってやった。
「だって…アリスがしてほしそうだったから、私はしたんだぜ?」
もちろん、アリスの顔が真っ赤になって、私が叩かれたのは言うまでもない。
こんな調子に、私たちは婦妻として新しい一歩を踏み出すのだった。
~fin~
「霊夢さんのぶらり幻想郷の旅」の冥界の回で、霊夢と妖夢が話していた「魔理沙とアリスの結婚式」というのがこの話を指しています。
書いている際に、妖夢が嚙みまくりというネタを仕込んだので、それを利用する形であの作品を書いていました。
この話を投稿するにあたり、「短編集」としてまとめることにしました。




