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幼馴染の理子の場合

 事の発端は一週間前。


 俺は神社でお参りをしていた。


「リア充が爆発しますように、リア充が爆発しますように、リア充が爆発しますように……」


 閑散とした神社の境内の中、俺は神に対して祈りを捧げていた。


 幼馴染の理子は寂れたこの神社の一人娘である。


 家の近い俺たちはいつものように学校から一緒に帰宅することになり、そのついでで俺はこうしてお参りをしていた。


『風見、お前いつも一人で飯食ってんのな、女紹介してやろうか?』


 今日の昼休み。

 いつものように教室でボッチ飯を決めている俺に対して、リア充グループの男が揶揄うように言ってきた言葉を思いだす。


 産まれてこのかた俺には彼女なんてできたことない。


 ……このまま生涯を童貞で終えて来世で魔法使いに転生するからいいもんだ。


 なんてことをその時は考えていたのだが、帰り道に俺は一度思考を反転させてみた。


 俺が彼女のいないぼっちなのは、逆説的に考えて世にはびこるリア充たちのせいである。


 つまり世の中のリア充がみんなして爆発してしまえば、世の中はぼっちがデフォルトの新世界となり、ぼっちの俺でも誰にも何も恥じることなく生きていけるのでは……?


 という天才的思考にたどり着いた俺は、その野望を果たすべく賽銭箱に5円玉を投げ入れ、こうして一心不乱に神に祈っているというわけだ。


「リア充が爆発しますように、リア充が爆発しますように、この世全てのリア充が爆死しますように……」

「まーくん……お祈りじゃなくて呪いみたいになってるよ?」


 背後からする声に振り返ってみれば、そこには巫女服を着た理子がいた。


「理子、着替えてきたのか」

「うんっ! まーくんに見てほしかったからね。どう?理子かわいい?」

「……っ」


 ……正直に言おう、反則的なまでに可愛い。


 理子の容姿は一言で表すならギャルビッチ系。


 栗色の明るい髪はボブカットでウェーブがかかっており。

 ぱっちり二重瞼の目元には泣きぼくろが存在を主張している。


 出るとこはしっかりと出ていて、柔らかさを感じさせる肉付きの良いスタイル。

 学校では常に制服を着崩していてスカートもめちゃくちゃ短い。


 そんないつもの派手系の見た目に反して和を感じさせる巫女服というのは、ものすごいギャップがあって破壊力抜群だった。


「可愛いというよりも何かコスプレしてるみたいだな……」

「もー正直じゃないんだから! まーくんのダメなところは女心が分かってないとこだよ?こういう時は嘘でも可愛いって言えばいいの!」


 どん、と理子から肩を小突かれる。

 気安く触るな! 好きになっちまったらどーすんだ!


「……まぁガチな話、理子はなに着てても可愛いよ。元が可愛いんだからそりゃなに着ても可愛いだろ」

「……」

「理子?どうした?」


「不意打ち……ばか」


 下向いて小声でごにょってるから何言ってるかよく聞こえないんだが……まあいいか。


 こんな感じで、俺たちの付き合いは小学生の時からずっと続いている。


 昔の理子はそれはそれは男勝りな女の子で、家が近くて近所付き合いのあった俺たちは小さいころによく川でザリガニを捕まえたりなんかして遊んでいた。


 しかし中学生にもなれば男女の距離というのは自然と開いていくものである。


 元々人付き合いが得意な性格じゃない俺は、インドア趣味に目覚めてその影響で陰キャ組に。


 理子の方は、その容姿の良さと快活な性格から陽キャグループに属し始め、ボーイッシュだった容姿と性格は年々見違えるほど女の子らしくなっていった。


 陰キャな俺と、陽キャの理子。


 幼馴染といってもそれは小学生のころの子供の話で、こうして人間の距離は離れていくのかと当時の俺は思っていたのだが……。


『まーくん! 一緒に学校いこ?』

『まーくん! 宿題見せて~!』

『まーくん! 今度の日曜日に理子のお買い物に付き合って~!』


 ……なぜかこいつは俺に絡んでくるのだ。


 容姿も人当りもよくて、カースト上位に存在していて、陰を極めし俺なんかとは真逆に位置するはずなのに。


 そのせいで中学の時の俺はよく他の男子からやっかまれたりしていた。


『どうしてあんな死んだ魚みたいな眼をしてる陰キャ童貞が俺たちの理子ちゃんと!!!』


 こんな感じ。


 ……死んだ魚みたいな眼をしてるとはよく言われるが、お前ら死んだ魚の眼みたことあるのか? 

 

 あれマジで魂抜けてるからな、一回ググってみろ。


 話が逸れたな。

 まあそんな感じで何かと理由をつけては絡んでくる理子のことを、俺は別に迷惑だとは思ってなくて。


 理子は理子で、陰キャで友達のいない俺に気をつかって一緒にいてくれるのかもしれないが……。


「あーっ! まーくんが理子のおっぱい見てる~! えっちだ~!」

「ばっ、見てねーよ!」


 くっ、無意識のうちに視線が向いてしまっていたか……恐るべし、理子のおっぱい。


「すーっごいやわらかいよ?触ってみる?」

「触んねーよッ!ばか!」


 触ってみてえええ! 

 すっげー柔らかいんだろうなあ……。


「ところで理子ね……話しておきたいことがあるんだ」

「どうしたんだ?改まって」

「もーすぐ夏休みが始まるじゃない?それでね……」


 そこで理子は少し真剣な顔つきになった。


「今年の夏休みをさ、まーくんと幼馴染として過ごすのは嫌だなって」

「……どういう意味だ?」


 高校二年の夏休み、例年通りに行けばいつものように俺たちは一緒に過ごすのだろう。


 今年の夏休みの宿題も、俺が理子に写させてやらないといけないしな。


「理子をね……まーくんの彼女にして?」

 

 えっ……マジ?ドッキリ?


 もしかして誰かカメラ回してたりするのか、これ。

 明日には【幼馴染の陰キャ童貞に告白ドッキリしてみた】なんて動画がYouTubeに上がったりなんかして……。


「理子、本気だよ」


 しかしそう言う理子の目は本気そのものだった。

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