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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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影の男②

「くそがぁあああああ!!! なんなんだこれはぁ!!!」 


 声の叫びと共に、マシンガンが雨あられのように乱射される。俺はすぐさま鎧の青のレベルを2段階目にまで上げて横にかわす。


 そして足を蹴り、前へ後ろへ、しゃがんで、飛んで、なんとかかわしまくる。


 そしてある程度距離を取ると、そのまま大剣を地面に突き刺して壁にした。ここは広い部屋だとしても、限られた空間では避け切るのは至難の業だ。


「くそ、なんで影から武器が湧き出てきやがる!! ぐぅ!!」


 大剣で防いでいてもその衝撃は強く、大剣が撃ち負けそうになる。


 俺はすぐさま鎧を赤のモードに切り替えた。その瞬間ズシリと鎧と大剣の比重が増し、より防御が上がる。


 衝撃は以前、強力だが、このモードならなんとか持ち切れそうだ。


「くはぁ、これならなんとかいけるか……」


 だがそう思った、その瞬間だった。


「正面だけでなく、横にも気を付けることだ」


「!!?」


 すると奴の影は横にも伸びてきており、銃口が完全に俺の側面へと向いていた。


「まずい!!!」


 その瞬間俺はすぐさま床に這いつくばった。そしてなんとかその初撃を躱す。そしてすぐさま青のモードに切り替える。ただそうした場合当然、正面のマシンガンの衝撃は防げない。


 だから


「一瞬だけだ!! 3本開放する!!」


 鎧に青のラインが3本浮かび上がる。そして前方の防御の要である大剣を引き抜く。しかし、本当に一瞬、ほんの一瞬で、凄まじい速さで引き抜いた。


「おらぁああ!!!!」


 引き抜くと同時に体を回転。そして銃口がある三方向に一気にエネルギーの斬撃を放つ。それは見事に命中し、マシンガンは暴発して吹き飛んだ。


「ぐ、がぁああ……、はかあ」


 それを確認すると、すぐに青のモードのレベル3を解き、レベル1に戻す。そしてふらふら立ち上がった。しかしながら、かなり高速で動いたとはいえ、近距離かつ手負いの状態では流石に三方向の銃撃をすべて防げなかった。


 脇腹には銃弾が何発か、突き刺さっており、血が垂れている。


「たいしたものだ。だがもう満身創痍だな」


 しかし自身の攻撃が防ぎ切られた事に、オシリスは多少ながら感心していた。だが特に驚くなどの感情は見せず、無表情のまま淡々と語り掛けてくるだけだ。


「はぁはぁはぁ。くっそぉ……、あうあ」


 はっきり言って勝てる気がしない。奴に攻撃が当たらない上に、こんな攻撃されてたら近づけもしない。こいつはトラツグでは無さそうだが、明らかに他の奴と一線を画している。


「オシリス君、もうお遊びはいいだろう? ここに招き、彼の戦闘データは見れた」


 俺が絶望する中、スイセンはオシリスに止めをさせと言葉をかけていた。しかし、何故かこいつの態度は不満げだった。


「いや、もう殺すまでもなかろう?」


 そして俺を見据える。


「流石に引け。クライアントは確かにお前の死を望んでいる。だが見るに堪えん。その案内役の軍人に元の場所に帰してもらうといい」


「ぺっ!!」


 しかし、俺は口から血反吐を床にぶちまけた。


「ふざけんな。な……、んで妹を目の前にして、はぁ何で一人で帰るんだよ。それになぁ、仲間もいるんだ……。てめぇらをぶっ潰して、俺は妹と共に、ミナリとフィオネと共に、一緒に帰るんだよ!!」


 そして言葉を放ち、大剣を構えた。だが疲れと恐怖で手足が震え切っているのが分かる。


「信念だけはすさまじい。そう思えるだけの者がいるのが羨ましいな……。だがお前がそう言い張るならもはや慈悲はない。死ね……」


 そう言うと、また影が揺らめき始めた。そして今度はさらにとんでもない武器が露出する。


「ちっ、マジか……。ロケットランチャーだと!? 早くレベル2に……、うぐぅ!?」


 回避のために青のモードをレベル2まで引き上げようと力を込める。しかしながら体に激痛が走り、そのまま片膝をついてしまう。どうやら、能力の発動がままならない状態にまでになっているようだ。


「くそ、いてぇ。も、もうだめ……なのか……」


「終わりだ……」


 そしてそのまま無惨にもロケットランチャーの弾は発射された。もはや避ける術がない。


「くそが!!」


 俺は思わず目をつむった。


 しかし、その直後。俺に弾は当たらず、見当違いな場所で爆発音が響いた。俺は思わず目を見開き、それを確認した。


「なんだ!? どう……なった……」


 視線の先。そこには壁の端の方が爆風により吹き飛び、壁が粉々に粉砕されていた光景が写っていた。なぜか、ロケランの弾がぶれたらしい。一体どういうことかと、今度は正面を振り向く。


「この女……」


 すると目の前にいたオシリスは、トワの方を向いて眉をひそめていた。そしてオシリスの影から出ていたロケットランチャーの銃口はあらぬ方向に向いていたのである。


「ト、トワ……、お前」


「に、兄さ……ん」


 更にその場をよく観察すると、影で動きを抑えられていたはずのトワが、オシリスに抵抗していたのだ。どうやらトワが銃口を逸らしてくれたようだ。


「あぁあああぁあああ!!!!」


「トワ!!?」


 そして再びトワが声を荒げる。その瞬間、トワの全身が紅色に発光した。


「うぐぅ!!?」


「くっ!!?」


 かなり強烈で、目が塞ぎたくなるほどすさまじい発光。特にそれが顕著なのが、間近にいたオシリス。思わず手で視界を覆い、軽くうずくまってしまっていた。


「おらぁああああ!!!!!」


 ここしかチャンスはない。俺は声を荒げて、青のモードレベル2を発動する。そして大剣を振るい、エネルギーの斬撃を奴に向かって放った。


「ぐがぁ!!」


 そしてそれが見事にオシリスに命中する。ただ、奴は直前に体を逸らしたために当たったのは肩のみであった。しかし、間違いなくダメージを与えたという証拠に、血しぶきが舞っていた。


「はぁはぁはぁ、当たった。当たったぞ!!」


 今まで当たらなかった攻撃が何故か当たった。理由はすぐには分からなかった。だがようやく勝機が見えた気がする。


「ぐぅ、おのれ……」


 そしてオシリスは攻撃を受けたことで気が抜けたのか、途端にトワの拘束を解いてしまう。だが解き放たれたトワは力をそのまま使い果たしたのか、そのままその場で気を失い倒れてしまった。


(ありがとなトワ……)


 俺は心の中でトワに感謝を述べつつ、またオシリスの方向に目を向ける。


 相手の今までの行動、そして今のように攻撃が当たった時、当たらなかった時をの状態を考察した。するとある仮説が頭の中によぎった。


「お前、……どういう原理で、はぁ、避けてるか知らん……が、光を伴う攻撃に、弱いんじゃねぇのか?」


「さぁ、どうだろうな?」


 奴は少し声色を落としながら、ケガをした肩を押さえてそう答える。


「俺の直接の攻撃はすり抜けた。しかし、俺がさっき放った衝撃波は、すり抜けないで普通にガードしてたよな。まぁあれは衝撃波を逸らす目的があったから何とも言えなかったんだが、今のお前の傷で確証した」


 俺の言葉にオシリスは少し汗を流す。その反応からどうやら図星のようだ。


 ただ、押さえていた肩からは蒸気のような音がしており、しばらくするとオシリスは手を離した。するとその傷はすっかりと治っていたのである。まさか回復能力まであるとは。


「これで、スタートラインには……、はぁ、立てたわけ……だ。周回遅れのビリケツからスタートだがな」


「減らず口を……」


「へっ! だがこっからの逆転劇は……、なかなかに気持ちいいだろうな」


 もうすでに指の感覚も怪しくなっている。頭痛もずっとしている。視界もぼやけている。だが俺はオシリスに、無理やりの挑発を放つと、再び大剣に力を込めたのであった。

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