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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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次元トンネル②

 俺は目の前の相手に向かってぎろりと睨みつけながら再び軽く呼吸を整えた。すると、鎧の通る全身に通っていた光のラインの『1本』が青色に変わった。


 この青色のラインは、赤の時とは違い、素早さや跳躍力を上げることが出来る。


「まるでゴキブリだな。気持ちわりぃ」


 続々に湧いてくるそれらを見て、気が滅入ってくるが、それとは裏腹に俺の口元は少し歪んでいた。


「旅先までのウォームアップだ。ストレス発散にまたぶっ壊してやるよ!!」


 そう言い放ち、俺は持っていた大剣の刃の側面をコンコンと手の甲で叩いた。呼応するように大剣に通る光のラインも強く発光した。


 ちなみにこの動作は俺なりの儀式。剣を叩くのは俺の癖で、これをやらないとどうにも落ち着かないのだ。


「調子は良し。じゃあいくか……」


 俺は準備が整えると、そのまま高速の勢いでそのロボットたちに突っ込んだ。初めに狙うはデカ物。ある程度そいつの懐に入った瞬間に足に力を入れた。そしてデカ物の真上まで高く跳躍すると、上から下へ大剣を一刀両断した。


『ぎ、ぎぎぴいぃい……』


 すると大剣はめり込み、機械による断末魔をあげながら一瞬にして大破した。


「おらよぉおお!!」


 そして後は雑魚の排除だ。銃火器を武装はしているが、それらの攻撃は高速で動き回りながら避けたり、大剣を使ってガードする。そして後はその場で体を回転させて、周りを囲む敵を一掃した。


『まったくカッコつけて、こっちは解析で忙しいのに』


「そう言わへんの。クオンはんがいないと、ここでゆっくり作業できひんやろ?」


 一方、俺が戦っている最中、ミナリ達は研究員たちが使っていたパソコンを使って準備を進めていた。まずミナリは耳につけられた小型デバイスを取り外し、目の前の機器の一つに取り付ける。


『接続完了。検索を開始いたします』


 小型デバイスが取りついた機器から少女の電子音が響く。それと同時に機器の画面が自動に動き始める。それを確認するとミナリは別のモニター画面の前へと移動して、いくつも並んでいるキーボードを操作し始めた。そして数分後に目的の画面表示に切り替えると、ミナリは安堵の表情を浮かべた。


「ふぅ、二人で探したらあっという間やね。もう見つかったわ」


『いえ、ミナリ様のお力があってこそです。目的地までの次元座標を算出できました。3.5秒後、次元トンネル再生成されます。移動する準備をお願いいたします』


「おおきにな。フィオネちゃん」

 

 ミナリ達の一連の作業が終わると空間にあった渦状のものが消滅し、そして再度形を変えて生成された。


 それを確認するとミナリは大きな機器から小型デバイスを取り外して、再び耳元へとセッティングする。そしてそのまま目の前に設置された機材を華麗な跳躍で飛び越えて、俺の後ろへと降り立った。


「クオンはん準備は万端どす。次の世界にいけまっせ」


「あぁ、こっちも全部片付いた」


 ミナリ達が作業している間に、俺はほぼあらかた警備ロボをぶっ潰し、床には機械の腕やら足やら頭やらがそこら中に転がって、更には力を込めすぎていくつかは壁にめり込んでいる。


 しかしすべて片づけたのだと安堵した矢先、入り口を見ると警備ロボットが再び現れ始めた。


「ち、本当に無限湧きしやがる」


「心配無用やで。後はうちがやったる。クオンさんそこ、どいといてや」


 ミナリはそう言って服の中からひょうたんを取り出した。だがそれを見た瞬間、俺は一気に顔が青ざめる。


「おいまさか。お、おいやめろ!!」


「そのまさかどす。ええやないか、ここからはもう帰ってこないやし。燃やしても大丈夫や」


 そしてひょうたんの中身を軽く飲むと、ミナリはそのまま口を膨らます。俺はすぐさま狐の女の後ろへと退避する。





「必殺、『狐の灯火きつねのともしび』ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」





 掛け声と共にミナリの口から轟音と共にすさまじい炎が発射される。


「あっちぃ!!」


 すぐに後ろに退避したにもかかわらず、この熱さだ。目の前の警備ロボットたちは炎上し、焼け焦げた臭いが辺りに充満する。さらには周りのドアや床ももドロドロに溶けてしまっていた。


 しかも後ろの通路まで燃え広がり、まだ部屋に入ってこれていなかった無傷な警護ロボットも炎の壁に遮られて入ってこれなくなっていた。


 これがミナリの十八番の必殺技で、口から灼熱の強力な炎を発射することが出来るのだ。ド派手にドアをぶっ壊した俺が言うのも何だが、いつもながらやりすぎだ。


「ふう、これで安心やな♪」


「ったくここまで焼くなよ! 向こうまで燃え広がってるじゃねぇか。下手すりゃこの施設潰れるぞ」


「心配は無用や。こんな大層な研究施設なんや、消火設備がすぐに発動するやろ。いやぁ最近全然この『狐の灯火』を発動できてなかったから、やりたてやりたくてしかたなかったんや」


「お前なぁ……」


 ミナリの行動に俺は呆れて頭を抱える。だが敵の侵入は防ぐことが出来たし、まぁ大目に見よう。


「とりあえず感謝しとく。ありがとよ、ミナリとフィオネ」


「どういたしまして」


『この程度当然です。感謝されても何もでませんよ、クオン』


 二人のいつもどおりの返事を聞くと軽く苦笑してしまう。そして俺は目の前に浮かぶ渦を再度見つめた。


 それを眺めながら、俺は大剣を握る拳に力を込めた。そんな様子を見ながらミナリは軽く微笑む。


「行方不明になったクオンはんの妹、『トワ』ちゃん。次の世界で見つかるとええな」


「俺の唯一の妹だ。これでようやく迎えに行ける」


 少し言葉を震わしながらそう言うと、構えていた大剣を静かに肩に担ぎ直した。


 俺がここにいる理由。それはあの時、いなくなった、手放してしまった、妹を見つけるためだ。


 それをしっかりと頭に再度刻み付けると、渦を強く睨みつける。




「いくぞ!!」




 そして俺達はその渦へと飛び込んだ。

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