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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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来たれ、トラツグの宴②

「こ、これは冗談きついで……」


「いえ、ミナリ様。これは紛れもなく現実です」


 ウチら二人の視線の先、そこには想像を絶するかつてないほどの光景が広がっていよった。


 扉が開かれた先には大きなドーム状の空間があり、観客席に多くの者達が溢れている。無論それは『人』やない。


 人間の形を保っているが、その者達は獣の力が宿っている生物。すなわち『トラツグ』の集団が観客席を埋め尽くしていた。


「ミナリ様、計測できましたが、ここには5万1208のトラツグがいます」


「…………っ」


 フィオネちゃんの正確な分析を聞いて思わず、肝が冷えてしまう。そして顔からは嫌な汗が垂れて来よった。


 ただ驚くのは数だけやなくて、そこにある設備にも度肝が抜かれてしまった。


 天井や壁の付近には、目が眩むほどの大量のライトが設置され、撮影機器として辺りをドローンのようなものが飛び交っている。さらには中央には円盤状の大きなバトルフィールドが設けられており、上空にはそれを映す巨大なスクリーンが設置されていた。


「しかも、これは、なんなんやこの技術は……」


 どういう感情でここを見ていいのやら、よくわからんくなってくる。


 このトラツグの圧倒的な数、明らかに場違いな高度な技術は一体何なんや。謎が謎を呼び、頭がさらに混乱しそうや。


 光景に圧巻されるウチらに対して、アカギリは再び汚らしい笑みを浮かべて、また言葉を投げかけて来る。


「驚かれてますね、お二人とも。ここは我がトラツグ達の拠点にある一種の娯楽施設で、己が身体能力を示すコロシアムです。我々はこの強大な力を毎回、持て余しておりましてね。こうして互いに覇権を競う戦いの場を定期的に行っているんです」


「余興? いや、それよりも何なんや、この技術は。人が住んでいる街とは明らかに差がありすぎるやないか!!」


「ミナリ様の言う通り。なぜここまでの技術を……?」


「我ら、トラツグ達を野蛮なだけのけだもの集団とでも思っていたのですか? 一定数、そんな輩が『作られてしまう』事もありますが、より高度な知能を持つ者はその分野でも大きな進化を遂げる……。まぁ知識はあの方の請負ですが、先の文明の理解など我々なら容易だ。ふふふ、見てくださいよ、この歓喜を! 美しさを! 皆、喜びに浮足立っている!!」


「作られる……?」


 アカギリは目の前に広がる光景を嬉しそうに、そして声を高らかに説明しよった。ただテンションのあまりの上がり具合に、ウチは完全に引いてしまう。


 だがその時、ウチはアカギリが発した『作られる』という言葉に引っかかりを覚えていた。クオンはんも言っていたけど、本当に色々ときな臭すぎへんか。


 そんな感じで辺りの光景に困惑し、考えるウチらに対して、アカギリは気づかんうちに後ろにそっと回り込んでいた。そしてそれに気が付くのに後れを取ってしまった。


「今に分かりますよ。その疑問、そして我々の存在意義とは何かぁぁ!!」


 その瞬間、アカギリの姿は赤の翼をもつ恐竜『プテラノドン』のような姿へと変貌した。


「なっ!?」


「えっ!?」


 この男の突然の変貌に思わず、虚を突かれてしまう。そしてアカギリはさらに大きく広げた翼を一振りしよった。


「くっぅぅ!?」


「うわぁ!?」


 その瞬間、その場にすさまじい突風が吹き荒れて、ウチらの身体が宙を舞う。そしてそのままドームの中央にある円盤状のフィールドに吹き飛ばされてしもうた。


 ただ何とか空中で姿勢を取り戻し、ウチとフィオネちゃんはなんとかその場に着地することが出来た。


「ふぅ……、大丈夫か、フィオネちゃん?」


「はい、なんとか。そちらこそ大丈夫ですか、ミナリ様?」


 そして状況を整理し、お互いの安全を確認する。しかしその姿を目撃した観客たちは声を上げて、盛り上がりを見せていた。


 だがまだ終わらん。更には円盤状のフィールドの周りから、突如として鉄格子が出現する。


「な、なんや!!?」


「ミナリ様!?」


 そのままそれが天井まで伸びると、巨大で大きな円柱状の空間を作り上げてしまい、追い打ちをかけるように鉄格子に電流が音を立てて流れ始めた。


 そして完全にウチらがバトルフィールドへと閉じ込めれたのを確認したアサギリは、こっちへと声をかけて来きよった。


「あなた方にはゲストとしてその舞台に立ってもらいます。過度な心配いりませんよ。ここに集まったお客様すべてと戦ってもらおうとは思っていませんし、ほんの余興として何人かと戦ってくだされば結構です!!」


 アカギリはそう言い切ると翼をまた羽ばたかせて上空へと飛ぶ。そしてドームの上を飛行しているマイク付きのドローンのような機械のそばまでで寄ると、翼以外を人間体に戻してそれを掴む。そしてそのまま口を当てた。


『さぁ、今日の催しにご集まりの皆さま、お待たせいたしました。今宵も繰り広げられるバトルロイヤル、なんと今回は異世界からの刺客がゲスト!!! このお祭りの場をさらに盛り上げてくれることでしょう!!!!』




「「「「「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」」





 更に盛り上がるギャラリー達。ドーム上空にある巨大スクリーンには困惑しとるウチとフィオネちゃんが映し出されている。


「アサギリ、あんたは何がしたいんや!! 何が催しや!! ウチらに『トラツグ』について教えてくれるんやなかったのか!!?」


 この意味の分からへん状況。激高にも近い叫びで、ウチはアカギリに問いかけていた。

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