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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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剣偽(けんぎ)相まみえる①

 軍の総本部、その場所の4階のエリア。広がる部屋の空間には異世界を行き来を可能にする『次元トンネル』が置かれている。


 そして俺達の視線の先には、『次元トンネル』から浮かび上がる渦を、通過して現れた二人組の男が立っていた。


「おやおや、会って早々に睨み合いとは。ふふ、お二人とも仲が良いようで」


 皮肉を聞かせながらその様子をほくそ笑むのは、赤い翼の男。並々ならぬ威圧感を醸し出しながら、どこか飄々としている雰囲気も感じる。どっちにしろ胡散臭い。


「ふん」


 その男の横にいるのは黒フードと鎧を身に着けた人物。こいつは俺の昔の知り合いであり、『カイキ』という名前の男だ。


 俺はそんな二人ににらみを切らしながら、とりあえず思いの丈をぶつける。


「おい、なんで『次元トンネル』がこんな場所に置いてあるんだ? お前らここで何してる? ついでに言うとだ、そこの黒い翼の奴、お前誰だ?」


「ふふ、よく喋る人ですねぇ」


「お前らに話す義理はない」


 俺のその問いかけには各々に難色を示している。一人は不気味に微笑み、一人は眉間にしわを寄せている。どちらにせよ、癇に障る。


「まぁまぁ、カイキさん。そう怒らないで、少しは質問は答えて差し上げましょうよ。ここにたどり着いた報酬とでも言いますか」


「そうかい。まぁ、あんたがいいなら口出しはしないさ」


「ふふ、では」


 ただ赤い翼の男はカイキをたしなめながら、言葉を続ける。そして赤い翼の男は足を一歩前に出して俺達に近づいてきた。それを見て少し身構えてしまう。


「あぁそうだ、初めに自己紹介をするのが礼儀でしょう。ワタクシの名前は『アカギリ』と申します。『トラツグ』の部隊の指揮を担っている者です。以後お見知りおきを……」


「別にお前の名前なんか知りたくて言ったんじゃない。てめえら『トラツグ』の存在が気がかりなだけだ。それと全貌がよく見えない目的もな」


 頭を下げて名前を述べる赤い翼の男。むしろその丁寧さが余計と薄気味悪い。自分の言葉が思い切りがとげとげしいものになってしまっているのが分かる。


「ほぉ、我々の『トラツグ』の存在意義と目的と来ましたか。なかなかに哲学的ですね。まぁいいでしょう。我々の活動目的は人類種の殲滅と『トラツグ』の繁栄ただそれだけです。至極明快でしょ?」


 アサギリが返した答えは非常にシンプルなものであった。ただそんな言葉を平然とにっこりとした表情で語るのは本当にやはり不気味だ。


「とはいえ存在意義という質問に関しましてはただ生物として『強く』生きるためとしか答えようがありませんね」


「強く生きるだぁ? 何を言っていってやがる」


 そして意味が分からない回答をほざく有様である。


「まぁ、言葉だけではなかなかに伝わりにくいものです。真の意図を理解して頂くには我々の拠点にまで足を運んでいただかないといけません」


 アサギリはさらに言葉を重ねるがますます意味が分からない。何かの策略なのだろうか。


「本当に本当かはわからんけど、この街から徒歩で歩いて半年の距離って聞いたで。そない遠くに離れた場所に、ウチらに今から行けって言うんか? おふざけも大概にしいや!」


 その言い回しに、流石のミナリも怒っているのが分かる。ミナリの言葉も俺と同様にきついものになっている。


「おっしゃる通りです。我々の拠点はここから大きく離れています。しかし、それを解決するのがこれです。あなた方が『次元トンネル』と呼んでいる代物ですよ」


「「な?」」


 アサギリは後ろにある次元トンネルを指差しながらそう答えていた。それを聞き、俺とミナリは少し呆気にとられる。


「ふふ。これはですね、今まさに、人間が住まう都市『東京』と我ら『トラツグ』の拠点を空間的に繋いでいます」


「これで拠点を繋いでいるだと!?」


 そしてさらにその内容に俺は声を出して驚く。


「えぇ、これを使って我々は活動をしているのですよ。ただ『あの方』曰く、これは異世界を繋げる程の出力を断続的には出せないようでしてね。いわゆる劣化品なのだそうです。とはいえなかなかに便利なモノに変わりありません」



 次元トンネルとは全く異なる時空間を繋ぐ装置だ。時空間というのが味噌で、当然ながら、同じ世界のただ単に別の場所繋げるだけという事も可能だ。


 アサギリの言葉通りなら、本来行えるべき異なる世界の移動を空間を繋げる機能にだけ制限したものがこの装置のようである。だがこんなものがここにある理由がますます分からない。


 それにだ、人々の拠点である東京とトラツグの本拠地が繋げられているという事が一番の問題であった。俺は咄嗟によぎった最悪の内容を言葉に乗せる。


「おい、こんなものが置かれている時点で、この東京にある軍隊はクロじゃねぇか。さっきお前らは人と完全に敵対しているような口ぶりだったなぁ。ならなんで人と手を組んでる?」


「その答えも私たちの拠点に来れば分かることです。よろしければご案内しますよ?」


 アサギリはまた不敵な笑みを浮かべながら軽く背を向ける。そして今度は次元トンネルの渦へと足を進めていく。ただその行動を横にいたカイキは腕を広げて前を遮っていた。


「待て、アカギリ。帰るんなら、その前に俺の得物を返せ。このままじゃ戦えん」


「あぁ、そうでしたね。すいません」


 アサギリはパチンと指を鳴らす。すると次元トンネルの渦にバチバチと電流が走り、そこから二本の長剣が射出された。そしてその長剣はカイキのいる足元左右に突き刺さっていた。カイキはそれを確認すると二つの剣を手に取り始めた。


「ふん、そのままだな」


 この二つの長剣、俺の大剣のように独特な文様に見えるラインが走っている。そしてしっかりと得物を握りしめると俺の方を見て口元を歪ませてきた。そうして、奴はその武器を構え始める。


 マヌケなことに俺は、そうなってからようやく事を察した。頭を掻き、思わずため息が出る。


「おいおいおい。俺達を拠点に案内するんじゃなかったのかよ? まさかこの二刀流の奴を倒さないと先には行けないって事か?」


「半分正解で半分不正解です。もちろん案内はしますよ。ただし『全員』とは言っていません。そこ女性のお二人方、レディファーストというやつです。あなた方は先に案内します」


 アサギリはそう言いながらミナリとフィオネに指を指していた。

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