ここにはないもの
「やはり文明的にそこまで警備は進化してへんねぇ」
「そうだな。侵入も容易だったしな」
あれから数分後。俺達は、謎の二人が入っていった軍の総本部と思われる建物に侵入していた。
ただ深夜帯故に人の警備は少ない。というか文明がまだ未発達のためか、防犯カメラなどの電子機器は設置されていないように感じる。
「でも警備疎か過ぎひんか? 下手したら子供がいたずらで入り込めるレベルやで……」
「確かに鍵もピッキングで開いたからな」
もちろん全く警備がないわけではない。時々見回りの軍人がライトを持って巡回しており、俺達はばれないように移動している。とはいえあまりにもざるすぎるため、俺達は不思議に感じていた。
「侵入されない自信でもあるのか、はたまたばれても困らないのか? フィオネはどう思う?」
なので俺はある程度、施設の構造が解析が出来るフィオネにその話を振ってみる。しかし、フィオネからは思わぬ解答が帰ってきた。
「いえ、我々の動きは既に捕捉されている可能性がありますね」
「はぁ?」
「なんやて?」
なんとフィオネは衝撃的なことを述べたのであった。何を言っているか分からず、俺とミナリは乾いたような声を出して動揺する。
「監視カメラなんかどこにも見当たらねぇぞ。それにだ、仮に見つかってたとしたらすぐにでも警報音でも鳴って誰か来るだろう?」
「いえ私もそんな技術はないと高をくくっていたのですが、施設内部の構造を一応探ってみたんです。すると至る所に超小型の監視カメラや赤外線感知器がありましてね」
「おいおい、マジか!?」
「それにです。クオンの言う通り警報が鳴らないのも確かに不思議でして、一体どういうことなのか」
「妙やね。なんか相手さんの手の内って感じや」
フィオネの解説により明らかになる事実。そもそもなぜそんな高文化のものがここにあるのか。俺達が語っている内容の通り、監視されているのになぜ、捕まえに来ないのか。色々と謎が多すぎる。とは言えここまで来て引き返すわけにも行かないのが現状だ。
「色々と思う所はあるが、気にしてる場合でもねぇしな。探索するしかない。フィオネ、なんかこの建物になんか重要な部屋はないのか? さっき内部を探ったと言っていたが」
そして悩んでもいられない。当初の目的通りに探索を続行する提案を出し、フィオネにまた情報を求めた。
「資料等は他の部屋にありそうですが、最上階である4階に大きな機器の反応がありますね。ただ先ほどの謎の二人の反応は感じられませんが……」
「4階か。まぁ上に登るだけなら時間もかからねぇか」
「とにかくそこまででも行きましょか。とはいえクオンはん、油断しすぎて見回りの軍人さんに見つかったらあかんで」
「それはお互い様だ」
俺達はそうして会話を終えると、そのフロアにある階段を見つけてそのまま駆け上がった。
相変わらずの薄い警備なのでものの十数分で4階のフロアに入るドアの前にたどり着いた。
もちろん入る前にはフィオネの探知能力を使い、中に人がいないことを確認する。ただ当然ながら扉は締まっていたので、軽くピッキングをして中へと侵入した。
「なんだここは……」
扉を開くと、そこにはかなり大きな空間が広がっていた。そして部屋の脇に屋上へと続く階段があるくらいだ。
しかしながらその部屋の奥には、部屋半分の敷地面積を用いて『とんでもないもの』が設置されていた。
「まさかまたご対面するとは思ってなかったなぁ」
「ほんまやねぇ。なんでここにあるんや……」
「大きな機器があるとは分かっていましたが、まさかこれとは。起動していなかったので分かりませんでした」
俺達三人はそれを見て、驚き半分呆れ半分で各々に思いを吐露していた。そして声をそろえてその名を叫んだ。
「「「次元トンネル」」」
そう、俺達の目の前にあったものは、時空を行き来することが出来る『次元トンネル』だったのである。この世界に来る時や、Drメロンに物資を届けてもらったときに使われた装置だ。
そんな近未来の装置が、この『東京』の街、しかも軍の総本部になぜか置かれていた。それはあまりにも予想外すぎたのである。
「おい、なんでこれがここに? いや、そもそもここにいる軍部の奴はこいつの存在を知っていたのか?」
「この部屋のカギはかかってたけど、そこまで厳重ってわけでもないしなぁ。もしかしたらここにいる軍人さんの大半は知ってそうやなぁ」
「ここにあった事実も驚きですが、何のために使われているのかの方が気になりますね。見てください、この世界にそぐわないモニター画面やキーボードなんかも置かれてます。先ほどまで誰かが起動していたようです」
俺達三人はそれぞれの思うことを話し出す。だが会話の最中、突如装置が勝手に音を立てて起動を始めた。バチバチと電流が流れ始めて振動で辺りが揺れる。
そうなった瞬間、俺達は即座に構えた。するとものの数秒後に機械の中央、その空間に巨大な渦状のものが生成された。そしてその渦の中からある人物たちが現れた。
「ここまで来られてるじゃねぇか。あの戦闘狂の奴も負けたし、この建屋の警備が雑すぎるだろ」
「いやはや、帰還途中でボロボロの『ガエン』を運ぶことになるとは。しかも負けると思ってませんでしたよ。でも警備についてはいいんですよ。どういう侵入者なのかの判断材料になる」
「そうかよ」
現れた人物たち。それは先ほどこの施設へと向かっていった二人組。赤い翼で黒いコートを羽織った男と黒フードと鎧を身に着けた男である。
黒フードの男は、呆れ口調に話しかけ、相方の赤い翼の男はそれを淡々と受け流す。
そして短い会話を終えると、黒フードの男は俺を睨みつけ、言葉を吐いた。
「クオン。全く、面倒な男だよ、お前は……」
「カイキ。お前か……」
俺も奴を睨みつけながらそう言葉を吐いていた。




