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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
3/64

次元トンネル①

挿絵(By みてみん)




 ある研究施設。


 そこでは至る所からサイレンが鳴り響いていた。


 俺、クオンは武器と装備を身に纏い、その研究施設を仲間と共に駆けていた。武装した警備兵や撃劇用のAIロボを片っ端から叩き潰し、先に進む。


「クオンはん、どうやらここみたいやで」


 不意に横から声がかかり、視線を向ける。


 彼女の名前は『ミナリ』。京都弁を話す妖艶な女性で、きれいで長い白髪をしている。そして服は巫女装束を纏い、長い黒刀を装備していた。だが何よりも特徴的なのが、体に狐の耳と尻尾が生えていることだ。


「ここか……」


 俺は彼女から視線を戻し、立ち止まった所から上に見上げる。


 その先には、かなり分厚そうな巨大な金属製のドアがそびえたっていた。ドアの端には電子式のロックキーがあり、開くには何かの認証コードが必要みたいだ。


 だが俺達は侵入者であり、ここの施設の部外者。そんなコード知る由もない。だからここは強行突破しか手段がないわけだ。


「はぁ、つかれるなぁ」


 俺が装備として身に着けているのは、身の丈ほどある巨大な大剣と灰色の鎧だ。だがただの剣と鎧というわけではない。


 大剣と鎧には紋様のようなラインが『3本』通っており、身に着けるとこの部分が常時発光する。一種のパワードスーツの役割を持っており、装着者の意思によって身体能力を変えることが出来る。


 俺は、巨大な大剣を頭の上に振り上げる。そして少し呼吸を整えた。すると全身の鎧と大剣に通る光のラインの『1本』が赤色に変化し、同時に俺がいる地面が少しめり込む。


 このラインが赤になると、自身の重さとパワー爆発的に上がるのである。


「ふ!!」


 そしてそのままドアに向かって大剣を振り下ろした。





「な、なにが起こったんだ!?」


「ドアが破壊された!?」


「バカな!!? 守備部隊はどうしたのだ!?」



 その瞬間、ドアは叩き切られて、とてつもない破壊音が辺りに木霊した。そして中にいた者達は驚きと困惑の声が出ていた。


「おおきにクオンはん。随分と強引やけどドアが開いたわ」


「そりゃ、どうもミナリさんよ」


 そのまま中に入るとそこには白衣を着た研究員がおり、顔を見上げるほどの大きな画面とパソコンがいくつも並んでいた。


『クオン、まだ終わってはいませんよ。ここからが本番です』


「分かってるよ、全く」


 俺がミナリと会話しているとそれに割って入るように、電子音が入り交じった女の子の声が耳元へ響いた。その声は横にいるミナリにも届いている。


『分かってるなら、そんなだるそうな顔をしないでくださいね。あなたのためにここにいるんですから』


「疲れんだからしょうがないだろ」


 この謎の電子音の声。彼女が喋るたびに、俺とミナリが耳に身に着けている小型のデバイスがチカチカと光る。その声の主は、自律式のAI知能であり、俺達のサポートをしている存在だ。名前は 『フィオネ』という。


「フィオネちゃん、クオンはんの鎧は体に負荷かかるかるんやから、大目に見てあげんと」


『す、すいませんミナリ様』


 だが性格に難ありだ。俺には刺々しいのに、ミナリには従順そのものである。フィオネも頼れる仲間ではあるが、これが色々ときついのだ。俺はそうしてため息をこぼすと、鎧の光は赤から普通の発光色へと戻った。


「ま、ともかくや。いったん邪魔者には退場してもらわんとなぁ」


 そう言うとミナリはすっと俺の前に出る。そして服からクナイをいくつか取り出した。


「必殺!! 狐の毒クナイ!!」


 そしてカッコ悪い変な言葉を叫びながらそのクナイを高速で彼らに投げつける。かなり素早い攻撃のため、そこにいた研究員達は一切避けられず、体に突き刺さってしまう。さらにそのクナイには即効性の毒が塗られているみたいで、突き刺さった者たちはすぐにのたうち回り、泡を吹いて気絶した。


「お前、まだ必殺技をいう癖が抜けねぇのか。毒塗ったクナイ投げただけだろ」


「必殺技を言ったほうがかっこいいやないか。ヒーローもんでは当たり前なんや」


「俺たちはヒーローじゃないからな」


 下らない会話を繰り広げながら、部屋にいる全員が気絶したことをを確認すると、さらに部屋の中へと入る。


「馬鹿でかいなぁ……」


「そうやねぇ」


 部屋に入って間も無く、俺達は部屋の中央にあったあるモノを見てそうつぶやいた。


 顔を見上げたその先にはとてつもなく巨大な渦上のものが浮かび上がっていた。そしてその周りを囲むように、機械が並べられていた。


「異なる次元、異なる世界を繋ぐ橋。ちっ、本当に胸糞わりぃ」


 それを見ていると、過去の記憶が呼び起こされて、鳥肌が立って思わず舌打ちが出る。


 この渦は『次元トンネル』と呼ばれる代物であり、異なる世界への転移を実現するものだ。ある特殊な技術と機械で、空間に影響を与えて時空間を超えることが出来る渦を作り出すことが出来る。


 ただ俺はこいつにいい思い出がない。


「とは言っても、今のウチらには必要なもんやろ? さぁ、『内側』の邪魔者はいなくなったし、準備を始めるわ」


「あぁ、頼む」


「これからウチはフィオネちゃんと目的地の『次元トンネル』に繋ぐから、今度は『外側』の邪魔者の足止めよろしゅうに」


「あいよ」


 俺は若干気だるくミナリの言葉に返事をした。そしてその大きな渦を背にし、ぶっ壊した扉の方に体を向けるのであった。


 外からはガチャガチャと金属擦り減る音がしており、俺は俯きながら大きくため息が漏らした。そして次に目の前を見据えると、そこには武装をした人型の警備ロボがずらりと並んでいた。


 どうやら道中でぶっ壊した警備ロボのほかに別の個体もいたようだ。見る限り、小型の奴もいれば、大型の巨大な奴もいる。これはなかなか楽しめそうだ。

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