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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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フィオネボディと狂気の鴉②

「フハハハハハぁあぁぁ!!!! なかなかきいたぜぇ!!! いいじゃねぇかああ!!!! 聞いてた実力は本物のようだなぁぁあああ!!!!!」


 俺が一撃食らわしたトラツグの鴉は、嬉々として歓喜の雄たけびをあげて、また俺達を追って来ていた。かなりの深手を負わせたと思ったが、このタフさは不気味だ。


「ちっ、あい……つ、はぁ。全然……こたえ…てねぇな……。ドМかよ」


「ただの猪突猛進の変態さんやったらましやけどなぁ。でもなんかあの鳥さん変やで?」


 ミナリの言う通り、奴は妙な行動を取り出していた。確かにこちらに向かって来ている鴉であったのだが、今度はなぜか上空へと高度を上げ始めたのだ。


「確かにおかしいですね。何をする気でしょう?」


「さぁ……な? ロクな……もんじゃないことは確か……だが、」


 嫌な予感がするのは三人とも同じだ。ただいくら不安がっても、追ってくる鴉に対してはとりあえず身構えておくしかないのだ。その一方で上空にいる鴉は、俺達のこわばる表情を見てなのか、さらに興奮を増していく。


「お次はこれだぁあああああ!!!! フハハハハハぁあぁぁ!!!! 遠距離攻撃はどうかなぁああ!!??? さぁああああ、耐えれるかあああぁぁあぁ!!」


 鴉はそう叫ぶと同時に両翼を前へと振るった。


 振るうといってもただ翼を羽ばたかせたわけではない。その大きく広げた翼を目で追うのも難しいほどのとてつもない速さで全力で振るったのだ。


 それにより引き起こされた風圧は一方向に無理やり圧縮され、轟音が木霊しながら風圧のカッターに姿を変えた。


 これはまずいぞ。そう思った矢先、それは瞬く間に地面へと到達した。


「うおあ!!?」


「ひゃあ!!?」


「くぅ!?」


 途端、バイクの右側に爆風が起こり、砂埃と共に地面が共にえぐれた。その衝撃でバイクは左へと少し吹き飛ばされる。


 思わず声を上げてしまったが、俺はハンドルをなんとか操作してバランスを立て直した。ただ今の現象があまりにも衝撃的過ぎて、終始放心気味になってしまった。


「おいおい、はぁ……。なんだ……今のは?」


「なんやあの鳥はん、こんな芸当もできんのかいな!?」


「そんな馬鹿な。翼の風圧だけでこんなことは起きません。ただの生物がこんなことを行えるなど、物理的にありえない……」


「俺達が、物理的って言葉を言うなって感じだがな……」


 フィオネの言葉に妙に冷静に突っ込んでしまう俺。だがそんな三者三様の反応を見せていると、その動揺する姿に鴉はさらにテンションがヒートアップしていった。


「フハハハハハぁあぁぁ!!!! いいだろぉ!! 最高だろぉおお!!! まだまだいくぜぇええええぇぇぇ!!!!!!!!」


 鴉は大声をあげてまた翼を大きく広げて振るう。そして響く音とともに風圧カッターが繰り出される。


「また来ます!! クオン、体調はそろそろ戻りましたか? 右です、右方向に避けてください!!」


 先ほどの攻撃と今の鴉の予備動作を見て、フィオネは即座に攻撃位置を分析したようだ。そして瞬時に被弾位置を把握し、へばっていた俺に指示を飛ばしていた。


「ったく……人使いが、はぁ、荒れぇぜ……」


 本当にそうだ。だがフィオネがいなかったらやばいのは変えようのない事実。俺は指示通りにハンドルを右に傾けた。そしてすぐさま今度は風圧カッターが左の地面に激突する。


「くっ!!?」


「ひゃ!!?」


 爆風と音がまた響き渡る。位置を予測していたフィオネ以外の俺とミナリが揃えて声を上げる。


「あ、あの風圧カッター、速いし、近づかんと見づらいわ。どないすれば」


「こりゃ……やべぇ……な」


 鴉が巻き起こすその風圧のカッター、ミナリが言った通りにはかなり素早くて非常に見えにくのである。よく確認すれば少し空間が歪んで見えるのだが、それを遠くから識別するのは難しい。かと言って至近距離まで風圧のカッターを近づけると避けるのは至難の業だ。


 俺達の反応速度があれば難なく回避ができるかもしれないが、三人はこのバイクに乗ってる。ここ飛び降りでもしなければ不可能である。


「ご安心を、ミナリ様、そしてクオン。この体を得たことによってより正確に攻撃位置を分析できますので、まだまだ避けれます」


 不安視する俺の表情を見てか、フィオネは俺達にそう告げた。そしてフィオネは金色の瞳をさらに光り輝かせ、鴉の方向を見据えた。


 その顔はより自信に満ちており、鴉は癪に障ったのか気に食わなさそうな表情を浮かべていた。


「ふん。堂々と身構えてやがるなぁあああ。気に入らねぇなぁあ!!! 何か策があるってか? だったら見せてもらおうかあぁああああああ!!!!!!」


 その雄たけびと共に鴉は同じように翼を大きく振るう。ただし、今度は連続攻撃であり、間髪入れずに風圧のカッターを連続で放っていた。


 流石にやばすぎるとあきらめかけたが、そこでフィオネの声が飛ぶ。


「クオン!! 左へ。そのあとは速度を落として右に大きく避けて。そして加速してください」


「りょ、りょ…うかい!!」


 フィオネの指示通り、俺はめちゃくちゃしんどいながらもハンドルとアクセルブレーキをなんとかタイミングよく操作する。すると風圧カッターは俺達には全く当たらずに次々と地面へと着弾していき、爆発音と衝撃と土煙が舞う。


「あぁん!!!?? なぜ避けれる!?? だがぁああぁ、まだいくぜぇえええええ!!!!!」


 自身があったのか、連続攻撃をかわされたことに鴉はぶちぎれていた。そしてさらに対抗意識を燃やしてきたのか、また馬鹿でかい声をだして、無茶苦茶に風圧カッターを繰り出すのであった。


「ミナリ様!! 『狐の灯』を『トラツグ』の方向に向かって放ってください。風圧カッターとぶつかった瞬間、クオンは左にハンドルを大きく切ってください」


「ウチの出番やね。ほないっちょかましたるわ!!!」


 鴉のトラツグは激情しながら再び攻撃態勢に入る。そしてそれを鑑みながら、後ろにいるフィオネはミナリに次の指示を出したのであった。

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