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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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新たな力『フィオネボディ』③

「じゃあどうすれば承諾してくれんだよ」


『承諾も何もない!!』


 俺はDrメロンとの会話を続けながら、必死に説得を繰り返していた。


 だがやはりリスクが大きすぎて意見を全く曲げようとしない。あの村の状況を話して説得材料にするしかないのかと何度も頭にちらつくが、やはり話す気にはなれない。


 そもそもそんな時間も惜しいし、一体どうすればいいんだ。そう思いながら頭を悩ませる。


「クオンはん、物で釣ったらどうやろ? 美味しいお菓子とかで」


 そんな中、会話を聞いていたミナリが思わぬ意見を出してきたのだ。それを聞いて俺は思わず、サムズアップしてしまった。


『なんだ? 今、物で釣るって聞こえたぞ。この声はミナリ君だな。ふん、大天才である吾輩も舐められたものだ。子供じゃあるまいし、お菓子で釣れらるなどありえな……』


「よし。帰ったらメロンさん大好物の牛乳プリンを特大サイズで10個作ってやる」


『今から『次元トンネル』展開する。クオン君、異次元フォンの端末にフィオネ君を接続してくれ。そして詳しい座標を吾輩に教えるのだ』


 相手は即堕ちした。


 俺は彼女に言われたとおりに耳元からフィオネが媒介にしている端末を耳から外して『異次元フォン』にセットする。


『全く、この人は賢いのになんかバカなんですよね』


 そのあまりのチョロさにフィオネ本人も呆れているご様子。


『Drメロン、今座標を送りました。『次元トンネル』展開をお願いします』


『了解だ!! 座標補足した。今から起動してバイクとフィオネ君のボディを転送する』


「頼む」


 その一言の後、転送の準備が始まる。


 その証拠に通話越しで、電気がバチバチと流れる音がする。同時に俺達の目線の上にいつもの渦が浮かび上がった。ただ、渦は周りの空間に雷鳴を轟かせて、少し不安定な形だ。


『何度も言っているが、『次元トンネル』生成で吾輩の研究所は三日は機能しなくなる。つまりこの間に大天才である吾輩の助言が出来なくなる。それを肝に銘じておくのだ。そして牛乳プリンを忘れるなよ!!』


 彼女が『異次元フォン』越しに放ったその言葉を最後に、通話はぶつりと切られて、その瞬間に生成された渦からでかいバイクが落下した。そして渦は瞬く間に消え去った。



「おぉ、本当に来たやんか!! 流石、クオンはん。説得上手や」


「お前のアイディアのおかげだよ。はぁ、疲れたぜ」


『ミッションコンプリートですね。やれやれです』


 三人とも期待の品の到着に歓喜の声を上げる。ただ誰もDrメロンへの感謝の言葉がない。あの大先生はそういう扱いなのだ。そして取り敢えず転送されてきたバイクへと近づき、物品を確認する。


「へぇ、サイドカーが二つもあるんやなぁ」


「なんか変な感じだな」


 そのバイクは赤と青を基調としたメタリックな外観であり、左右には珍しい事にサイドカーがそれぞれ設置されていた。そして一方のサイドカーには『機械の体の女の子』が目を閉じたまま座り込んでいた。


『おぉ!! これはワタシの体では!? ミナリ様、クオン、早く早く端末をこの体に接続して下さい!!』


 それを見つけたフィオネは興奮のあまり声が高ぶっていた。そして言われた通りに俺とミナリは、自分達の耳などに引っかけていたフィオネとの通信端末をその体に取り付けた。



『認証完了。意志情報『Phione』を確認。母体ナンバー「Fione001jk」起動開始……』



 すると女の子の口から言葉が発せられて目が見開く。そして体全体に青い光が走り抜ける。おそらく起動のプロセスが完了したのだろう。


「ふぅ、ようやく動かせる体を手に入れましたか……」


 そうしてフィオネは機械の体を動かして、そしてバイクから降りてその場に立ち上がった。


「きゃあん。フィオネちゃん。かわいい体を手に入れたやないかぁ。うぅん、めちゃええわぁ。めっちゃ可愛いわぁ!!」


「ひゃあ!?」


 立ち上がり、きりっと目の前を見つめるその姿。ミナリはそんな姿に心奪われたようだ。尻尾をぶんぶんしながらフィオネに思い切り抱き着く。それに驚きながら、まんざらではない表情でフィオネも頬を赤らめていた。



 フィオネが手に入れたその姿は女子高生くらいの見た目の女の子であった。


 髪は全体的に薄い銀色をベースにしており、横の髪先は染めたように暗い灰色であり、さらに黒いメッシュを飛び出していた。瞳は金色、そして耳は人の物ではなく機械的なデバイスになっている。


 服装はなかなか異色であり、まず首元に白いマフラーのようなものを着けている。そしてトップスは紺色の肩だしスタイルで、腰には包帯のようなものが巻かれており、丈が長い服だ。スカートは薄い紫で、靴とタイツが一体化したものを身に着けている。


 かなり大胆な服装であり、体つきも理想的な女性的なフォルムをしている。



「はぁ、これで何とかなりそうだな。お、フィオネの武器があるじゃんか」


 フィオネが実体を持って動いていることに俺は安堵し、そして他に何か送られていないかと一人でバイクの中を漁った。


 するとフィオネの得物になるであろう小刀を二本見つけることが出来た。そしてさらに物色を続けていると何やらメモが書かれた紙が見つかったのである。


「これはバイクの説明書か? 動力は水と光か、すごい技術だな。これならこの世界でも簡単にエネルギー補給が出来る。なんだかんだ言ってDrメロンさんは流石だねぇ。他には、バイクの機能と、フィオネの能力なんかも書いてあるな。どれどれ……」


 ミナリとフィオネが戯れる間、俺は諸々の準備を進めながら、そのメモを読んでいくのであった。

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