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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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新たな力『フィオネボディ』②

 俺が心底からうざがるこの電話相手。


 こいつは俺達の馴染みの人物であり、名前は『メロン』という女の研究者だ。皆からはDrメロンと呼ばれており、俺達の協力者である。


 自信満々の発言がかなり鼻につく。いやかなり鼻につくが、それはこいつ自身が持っている実力から来るものなのだ。


 今、俺が使っているこの古臭い携帯電話は彼女が発明した『異次元フォン』という代物である。受信場所自体は、Drメロンがいる研究室に限られるのだが、こいつの恐ろしい所は全くの別の次元でも会話が可能という事なのだ。


 俺達が住んでいる世界には、世界の壁を超える技術『次元トンネル』が既に存在する。そのためこの通話のみしかできないこれは劣化と思うかもしれない。


 だがこの『異次元フォン』を一から作り上げたのはDrメロン自身なのである。もちろんある程度の技術は応用したのだろうが、これを個人で作成したのだから、驚きだ。


 とはいえやっぱりこいつはうざいのは変わらない。


「Drメロン大先生の凄さは分かった。だがな俺達はあんたの自慢話だけを聞きに来たわけじゃないの。さっき言っただろ、困ったことがあるから連絡したと」


『なんだ、人がせっかくいい気分だというのに。で、なんだ困った事と言うのは?』


 Drメロンにそう聞かれて俺はさっきまでの村の境遇を思い出してしまう。そして思わず電話越しに大きなため息を吐いてしまった。そして俺は深呼吸をして心を落ち着かせると、Drメロンに語り掛けた。


「とりあえず『移動用のバイク』と『フィオネのボディ』を転送してくれ!!」


『はあぁぁ!?』


 しかし村の現状についてあまり喋る気持ちにもなれなかった。なので、俺は思い切り問われた理由をカットして欲しい物だけを要求した。当然、話が飛びすぎたため、Drメロンは驚愕の声を上げていた。


「『はぁぁ!?』じゃないんだよ。今、どうしてもバイクがいる。それにやはりフィオネの体が必要な事態になった。緊急事態でな」


『なんでそれが必要なのだ!! いきなり言われても意味が分からんぞ』


「次の目的地が、めちゃんこ離れた所にあってな、そして少々戦力増強も必要な状況なんだ。ナビだけのフィオネじゃ今はかなりきついんだよ」


『そ、そうか。なるほど……。それでバイクと体を……』


「なぁ、頼む。あんたの研究室にどっちも置いてあるだろ?」


『い、いやそれは、そうだが。うぅん……、なんというか』


 だが俺の要求に対して、どうにもDrメロンの歯切れが悪い。うねりながら何かと葛藤している。だが、移動手段と戦力補強はどうしても必要なのだ。応えてもらわなければ困る。


「うぅん……」


 Drメロンは、俺達と話しながら自室の隅を眺める。


 そして彼女の目線の先、そこにはサイドカーが両端に取り付けられた三人乗り用のバイクがあった。そしてその横に女の子の姿をした機械の身体が並べられている。


『確かにクオン君の言う通り、吾輩の研究室には私が開発したバイクとフィオネ君のボディが置いてある。以前君らが置いていったものだ。』


「だったら、送ってくれ」


『それは分かっている。だがなこれをどうやってそちらの世界に送るというんだ?』


 Drメロンは側にそこにあるバイクとフィオネの身体を見ながらそう言葉を返す。物自体はそこにある、しかし、それをここに送る手段が無いと彼女はごねていた。


 だがそんなことは分かっている。それを承知での願いである。それに俺はその問題を解決する手立てを知っていた。


「そこにもあるだろうが。お前さん専用の『次元トンネル』がな」


『うっ!!』


 そして俺の一言でDrメロンは言葉を大きく詰まらせた。


「この世界への出発前、あんたの所で『次元トンネル』を見た。そして頑なに使用を拒まれて、泣く泣く次元トンネルの施設を襲ったんだ。だから今度はそれを使って転送してくれよ」


『か、簡単に言ってくれるな!!』


 今、俺が言った通り、Drメロンの研究所には彼女自身の独自に『次元トンネル』が存在した。だがこの世界に来る際に、それをどうしても使わせてくれなかったのだ。


『た、確かに吾輩の研究室にはデータを盗んで勝手に作った『次元トンネル』がある』


「ならいいじゃねぇか。なんでそんなに拒むんだよ?」


 盗んだということが引っかかるがそこを気にしている場合ではない。しかし、なぜこうも使用されるのを嫌うのか。俺にはよく分からなかった。


『言う暇はなかったんだよ。これを独占で開発運用している『ユウキコーポレーション』からデータ盗んで分かったんだが。この『次元トンネル』はねぇ、めちゃくちゃ電力を喰うんだ。今、使ったら吾輩が根城にしているこの研究所の電力食い尽くして三日は機能しなくなる。少し展開させただけでな』


「なに!?」


『だから君たちが異世界転移するときに私の研究所で使うのを反対したんだよ』


「なるほどね」


 Drメロンの話を聞いてここまで渋る理由がようやく分かった。確かに三日も機能しなくなるのはかなり厳しいだろうな。


 ちなみに『ユウキコーポレーション』という名前が出たが、この会社は『次元トンネル』を作り上げた会社だ。独占運用しており、俺達が襲った施設も会社の研究機関の一部だったわけだ。


 だからそこに行かせたのか。これで理由ははっきりしたが、今の状況を顧みるに全くと言ってどうでもいいと俺は判断した。


「分かった。転送頼む!」


『おい、何を聞いていたのだね!! 使ったら吾輩の研究所が三日機能しなくなるんだ!!』


 俺はメロンさんの反対意見に対して何も考えずにあっさりと欲望をぶつけたのであった。

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