新たな力『フィオネボディ』①
「さて、クオンはん。これからどうしましょか?」
「そうだなぁ……」
佐竹との別れから40分ほど。先ほどまでいた村はもう見えなくなっており、俺達は淡々と平原を歩いていた。
俺は事前に佐竹からもらっていた地図を広げて、目的の東京の位置に目をやっている。だが地図から見て取れる現在地と東京間との距離は、なんとおよそ600km。途方もない距離であったのだ。
こんな距離、はっきり言って徒歩ではいつ着くか分からない。なのでこの問題に対して俺は初めにやるべきことをミナリに返答した。
「とりあえず足が必要だよな」
「それはそうやな」
『言わずもがなですね。このまま徒歩の場合ですと22日12時間31分はかかります。今は時間をかけている暇はないですからね』
全員がそれをわかっており、フィオネもデバイス越しに徒歩での正確な到達時間の予想を語っていた。戸谷が語っていた通り、歩きだと20日以上はかかるのは本当のようだ。
「んで俺達は既に二回も『トラツグ』って奴らと戦ったんだ。またぶつかる様な気がするんだよ。あのかまいたちどもは俺達の名前を知ってたからな。しかも直接戦闘要員が二人だけだと、マジで心許ないからな……」
俺はそう言いながら、ミナリの方向に目をチラッと向ける。すると俺の思惑に察したのか、ミナリは自分の服をまさぐり始めた。
「Drメロンはんに連絡します?」
『Drメロン』。ミナリはそう告げると、服の中から一つの携帯電話を取り出していた。ただしその携帯は少し妙な形をしていた。
まずそもそもその携帯には画面もなく、代わりに数字や受話器のマークが刻印された押しボタンが配置されている。端には細長いアンテナが取り付けられており、とにかくすごく古めかしい外見の携帯なのだ。
「ったく。相変わらず古いよなそのデザイン」
「ウチは気に入ってんで。しかもこんな見た目でも、性能は実証済みやろ?」
見た目だけは普通の古い携帯電話のように見える。しかしこいつにはかなり特殊な機能がついているのである。
ミナリはさっそく、アンテナをするすると伸ばし、その携帯の数字ボタンを押して、最後に受話器をマークをプッシュしていた。
すると携帯は一瞬、バチリというショートしたような強い音と光をその場に放つ。そして『プルルルル、プルルルル』という電話独特の呼び出し音が発せられた。
1コール、2コール、3コール。呼び出し音が鳴った後、何者かがその通話に応えた。
『はい、こちらDrメロン研究所!!』
ノイズ交じりの女性の声が携帯越しから聞こえた。それが分かるとすぐにミナリは応答していた。
「あぁメロンはん、メロンはん? ウチや、ウチやけど。この世界に次元トンネルで来れた……」
『なんだ? オレオレ詐欺か。勧誘なら結構だ!!』
その一言を相手が言った瞬間、ガチャリという音と共に通話が切れた。
「あ……。き、切れてもうた……」
「ちっ、あいつぅ! ちょっと貸せ!!」
突然通話が切れたことに戸惑うミナリ。俺はミナリから携帯を取り上げると高速でボタンを連打し、通話を開始した。二回連続とあってなのか1コールだけですぐに相手へと繋がった。
『はい、こちらDrメロン研究所。勧誘はいいって言ってるだろうが!』
「おい、勧誘じゃねぇよ!!!! 俺は『クオン』だ、『クオン』!!! いきなり切るんじゃねぇぇぇぇぇ!!!!!」
『いぎぃいぃいい!!??』
そのあまりむかつく態度にしびれを切らして、俺は電話越しに大声で怒鳴り散らしていた。そうして通話相手は大パニックを起こしていた。
『ク、クオン? クオン君か。耳元で大声はやめたまえ。鼓膜が破れたらどうするんだ!?』
「そんなん知るか。勝手に勧誘と間違えたお前のせいだろ!!」
『な、なんだと。この世紀の大天才のDrメロンの聴力が失われていたら、どれだけの悪影響が出るか。この貴重な大天才の能力はまさに人類の宝。決して損なうわけにはいかんのだ!!』
その会話の主は、電話を手にしてないミナリまで聞こえる程に声を張り上げ、自分の実力を熱弁していた。しかしながら内容があまりに自信過剰な発言すぎるので、俺は呆れてしまい、怒りは消え失せてしまった。
『大体、何の用だね? 吾輩は忙しいのだよ!』
「あんたがあの研究所の『次元トンネル』をくぐって、この世界に着いたら連絡しろって言っただろうが」
『あ、あぁ。そうだったな、忘れていたよ。そうか成功したのか。妹のトワ君がいる世界に転移できたのだな』
「そうだ。んでちょうと困ったことも増えたからお前に連絡したわけだ。この名前がダサい、『何とかフォン』でさ」
『『異次元フォン』だ! 私が開発した時空間をも超える通信システム『異次元フォン』だ。二度と間違えるんじゃない』
「めんごめんご」
俺はこいつとの会話が疲れてきて、会話も適当になってきてしまう。
『くっ、本当に反省してるのか君は!! 全く!! まぁしかしうまく『異次元フォン』は機能しているようだな。発明してから一切の誤作動もなし、声もクリアに拾えている。にゃはは、やはり私の発明は天才だ。世界の壁をも超える世紀の大天才、ここに極めりだな。にゃはははは!!!』
「うっぜぇ……」
長々と喋り、独特な笑い声と自慢を混ぜ込んでくる電話の相手。本当にうざすぎて俺の眉間にしわが寄ってしまっていた。




