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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
16/64

悪鬼襲来④

「その減らず口、切り刻んであげるわ」


「かかるぞ!!!」


「はぁああ!!!」


 かまいたちへと姿を変えた三人組のトラツグは、鎌に変化したを腕を振りかざしてそのまま俺とミナリの元に攻撃を仕掛けてきた。


 動作は一緒、それぞれ三人が三方向から襲い掛かり、奴らの鎌が重なる。


 だがその攻撃は俺達に当たることはなかった。俺は大剣を地面に突き刺してそれを軸にして身体を上げて躱し、ミナリは体をしゃがませて避けている。


「「「!!??」」」


 お互いに攻撃を寸前で避けると、三人の鎌は、俺の大剣の刃にぶつかり、鈍い金属音が響いた。そして俺達は口を大きく歪める。


「足元ガラ空きや!!」


「頭もな!!」


 俺は刺した大剣を軸にそのまま身体を振り子のように円回転させると、足で三人の頭を薙ぎ払う。


「がぁ!?」


「ぐうぅ」


「ぎゃ!?」


 大きく頭からのけ反った瞬間、ミナリも素早い動きで、三人をほぼ同時に下半身から蹴り飛ばす。


 そしてそれを確認した俺は、一番吹っ飛んでいた男のかまいたちを初めの標的にした。


「まずは一匹だぁぁああ!!」


 俺は体を地面に降ろして、そのまま体勢を整えると、鎧の発光を青の二本線に切り替える。そして大剣を地面から引き抜き、それを槍のように突き出しながら、地面を蹴った。


 超高速の突進である。そして男のかまいたちは全く反応出来ず、そのまま攻撃は直撃した。


「ぎゃふあぁあああ!!!!????」


 大剣の刃は腹に突き刺さり、そして思い切り貫いた。男はうめき声をあげて口から大量に吐血する。


「あの山賊どもよりかは、柔らけぇなぁ」


 俺は前に戦った山賊もどきとの感触を比べながら、そう呟く。


 そして腹に突き刺さったまま、そのまま大剣を大きく振るい、男のかまいたちを地面へと叩きつける。


「がぁあ……」


「終いだ」


 こいつらに慈悲の感情はいらない。俺は無感情のままそのまま頭を大剣で突き刺し、絶命させた。


「う、うそ!? やられた!?」


「あ、あぁ……」


 その場から吹っ飛ばされて、地面に伏せていた女と少年のかまいたちは、男が殺された様子に口を開けて絶句する。


「何を驚いてんだ? お前らもさっきやってただろ?」


 俺は辺りの死体を一度確認しながらそう語り掛けると、二人に向かって睨みつける。


「ひぃ!?」


「あぁ……」


 二人は先ほどの態度が一転、俺の睨みに恐怖の表情を浮かべてガタガタと震えだしていた。


「な、なによこいつ……。こんなあっさり……」


「ば、化け物……」


「あんたら、鏡持ってへんのか? そのセリフ、自分を見てから言ったらどうや?」


 少年の言葉にミナリは呆れ顔になりながら言葉を返す。だが二人の戦闘力におののいた少年は、すぐさま立ち上がり、そのまま逃走を始めた。


「ボ、ボクはまだ生きたいんだ!! う、うわぁああ!!!」


「結構走れるんやなぁ。まぁ意味ないんやけどなぁ」


 ミナリは少年のかまいたちの方向を見ながら、服の中からひょうたんを取り出す。そしてそのまま口に含む。


「必殺……」


「狐の灯ぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~!!!!!!!」


 次の瞬間、ミナリの口から灼熱の炎が噴射される。それはすぐさま逃げた少年のかまいたちに追いつき、そのまま体を包み込んだ。


「ああああぁぁああああ!!!!??」


 断末魔が響き渡り、そいつはあっけなく焼き尽くされた。そうして黒焦げになった体だけがその場に倒れた。


「う、うぁああ……。なんなのよ、あの狐は」


 少年のかまいたちが倒され、最後に残った女のかまいたちはさらに震えて縮こまり、終いには体の変身も解除してしまった。


 そして俺とミナリは、そのまま地面に座り込んでしまっている女のかまいたちの方向を向いた。


「ま、待ってよ!! アタシはもう人は殺さないわ!! アタシは命令されただけのよ」


 女のかまいたちはずるずると後ろに下がりながら、惨めに言い訳を始める。そんな彼女に対して俺とミナリはゆっくりと足を詰め寄る。


「命令ねぇ。だがすごくうれしそうに人を殺していたが? それはどう説明をつける?」


「そ、そうじゃないの。ア、アタシは昔虐げられていた連中を見返したかっただけよ。だ、だからあいつらを」


 そう言いながら女のかまいたちは切り殺した村人の方に視線を向ける。


「その言い方だと、まるで……」


 女の妙な言い回しに違和感を覚える。まるで元々人だったような、そんな感じだ。だが俺はそれ以上の詮索は止めた。


「あんたたちは見た所、ここの人間じゃないでしょ!! 関係ないじゃない!! アタシたちの邪魔をする意味はないわ!!!」


「確かに俺達はよそ者だよ。だがここの村には一夜だけでも世話になったし、それにな……」


 そう言葉をかけながら俺は大剣を再び構える。そして瞬時に女のかまいたちに接近した。


「胸糞悪りぃんだよ!!」


 俺は彼女の後ろへと、移動し終わると首が宙に飛んだ。




★★★★★★★★★★




 基地の前の広場。そこでは火が燃えて、煙が空に上がっていた。


 燃やされているのは殺された町民の遺体であり、周りにはその遺族が涙を流して弔っていた。


「本当はちゃんとした火葬場の方がいいんですがね」


 俺とミナリの横には遺族と焚火を見つめている佐竹の姿があった。顔が沈み、その表情は暗い。


「すいません、また助けていただき……」


「お前のせいじゃない。それに俺達が出発前でよかった」


 俺は肩に手を当てて、佐竹をなだめていた。


「謝るのは俺の方だ。もう何人も殺されちまった」


「いいえ、そんなことはありません。本当に感謝しかないです」


 佐竹はグッとこぼれていく涙をこらえる。しかし、感情を抑え込むのが難しいようで全身が震えてしまっている。


「こんな状況の中悪いが、俺達はこのまま『東京』に行かせてもらう。一度撃退はしたんだ、しばらくは来ないといいが……」


「すまへんな、薄情で……」


 俺とミナリは申し訳ない気持ちで語り掛けながら足を動かし始めた。しかしその様子を見ていた他の軍の隊員が俺達に気が付き、行く手を阻んできた。


「クオンさんとミナリさんですよね」


「どうか、まだここにいてくれませんか」


「私たちでは、ここを守り切れない……」


 そしてその兵士たちは頭を下げて懇願していた。


「お兄さん、い、いかないで下さい!!」


 更には、先程助けた男の子までその場に駆け付けていた。


「坊主……」


 俺達を止めるその姿を見て少し足が止まってしまう。だが俺にもやるべきことがある。俺はその男の子も含めて兵士たちに説得をしようとした。


 だが佐竹は俺が言う前にそれを止める。


「みんな、もうやめてくれ。こ、恐いのは分かるよ。だけどクオンさんたちにも事情があるんだ。これは本来は俺達の問題なんだよ!! だからもう頼り切るのはやめよう……」


 そう発すると、腰をおろして男の子の肩に手をかける。


「ごめん。僕たちは本当に弱い。君たちを守ることもままならない。でもそれでも足掻くよ、命に代えてでも足掻く……、だからどうか信じてほしい」


 佐竹は言葉を吐きながら、俯いて涙をこぼす。それを見ていた兵士達は、佐竹の事を汲んだのか、俺達の道を開けていた。


「戸谷少尉殿にも約束したんだ。絶対に戻る!!」


俺は佐竹に向かって力強く言葉をかけた。そしてそのまま足を進めるのであった。

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