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ディメンション・レコード  作者: ギルガメ
トラツグの世界
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悪鬼襲来②

「くそ! ここまでやられたのか!?」


「既に地獄絵図やな!」


 音のある方を目指し、村の住宅地に入ると既に、何人もの住民がその場で倒れていた。体は切りつけられ、四肢が分断されている者も見受けられる。


「くそが!!」


 それを歯ぎしりをしてしまう。そして場所が近づくにつれ、凄惨な声と、その行為を悦に浸る憎たらしい声が聞こえてきた。


「うわぁあああ!!! やめてくれぇ!!!」


「い、いやあああ!!! あがぁああ!?」




「ぎゃはははあ!!!! いいねぇ!! 蹂躙するこの感触!!」


「ふふ、ほんと。大の男がすぱすぱと切れちゃう、あははぁ」


「くふふ、いやぁ面白いねぇ。ボクを虐めてた連中があっさりとあははは!!」


 そして軍の基地が広場が見える視線の先。ようやくその声の主の姿を捕らえることが出来た。


「クオンはん、あれ」


「また人外か。あれがトラツグなんだよな?」


 そこにいたのは三人組。一人は長い黒髪の女性で、もう一人は金髪の男、そしてもう一人は銀髪の少年であった。


 服装も現代風の衣装を身に纏い、女は髑髏のシャツに短いジーパン、男はサングラスとアロハシャツと短パン、少年は黒のフードにアクセサリーを着けている。そしてその体には返り血がおびただしいほど付いており、その顔は狂気に歪んでいた。


 その周りには、さっき見かけた住民たち同様に、無残にも切り刻まれた死体が積み上がっており、周りの建屋は崩壊している。


 ただそれでも抵抗するように、三人の周りを軍の者が銃を持って囲んでいる。しかし、これは非常にまずい。


「お、お前たち!! おとなしくしろ!! 抵抗するなら撃つぞぉ!!」


「既に我々が囲んでいる。ちょっとでも動けば、発砲する!!」


 遠くから見てもガタガタと足が震えているのがよく分かる。しかも敵は余裕の態度を示している。


「よせ!! お前ら逃げろ!!」


 ただ俺の声は届かず、軍の者達はすぐにはその場から動けなかった。そして最悪の光景を目にすることになる。


「あははは!! 威勢がいいことで。けどトラツグの力を舐めちゃいけないわよ」


「うん、そうだね」


「あぁ、最高の注目具合だ」


 言葉を発した途端、そいつらは腕を高速で動かして払っていた。


「がぁ!?」


「あぁ!?」


するとどうだろうか、目の前にいた軍人はその瞬間、バラバラの肉片になっていた。


「ぐっ!!」


 それを見て俺は、思わず目を見開いてしまった。まるで手をナイフのように動かして、すぱすぱときれいに人体を切り刻んだのだ。


 全員ではなかったが数人が一瞬で殺された。そして残った軍人や周りの住民は恐怖で固まっていた。


 そしてそれを行った直後に三人は、顔を歪めて大笑いしていた。


「あははははは!!! 見てよ、大の大人がこんな一瞬で細切れに、流石トラツグの力よねぇ」


「うははは、確かに確かに。日陰者だった俺達には考えられねぇ」


「やっぱりこの力は最高だね、ふふふ、周りの人たちも面白いぐらいに固まってる」


 一歩遅かった。それを見た瞬間、俺はその場に立ち止まり、怒りをぶつけるように大剣を地面へと突き刺した。


 奴らにもわざと聞こえるように轟音を発して、ぎろりと奴らを睨みつける。


「あら、なんか変な格好の男がいるわね?」


「ほんとだ、しかも後ろには狐っぽい女の人もいるねぇ」


「あぁ、なんだてめぇら? おかしな格好してんな?」


 てめぇらも同じだろ。そう言いたい気持ちもあったが、むかつきすぎて会話するのも腹が立つ。俺は黙ったまま地面に突き刺した大剣を構える。


「ほほぉ、なかなか強そうだな。こいつは連れ帰ってもいいんじゃねぇか? 後ろにいるのもなかなかに別嬪だしなぁ」


「はぁ、ある程度減らしたら持ち帰りもありって言われたけど、アタシはパスパス。アタシはあそこにいる男の子が好みだしねぇ、じゅる」


「ひぃ!! ひぐ……、あがう」


 しかしながら俺の気迫も狂ったこいつらには特に意味をなさないらしく、しかも女の方の視線の先には逃げ遅れたと思われる男の子がいた。


「あぁ、やだやだ。ショタコンきも。おじさんも女をエロイ目で見て、ださいなぁ」


 そんな中、トラツグの少年は二人にダメだし。なんとも緩い空気だ。しかも女は完全にこちらを無視し始めた。ゆっくりと男の子の元へ寄り添っていく。


「さぁ、坊や。いい子だからお姉さんと一緒に面白い所へ行かない?」


「うえぇ、あの子、めっちゃ引いてるじゃん。本当にショタコンはきもいよ。」


 トラツグの少年はかなり嫌悪感を抱き、ドン引きしている。しかし女は変わらずに男の子に近づいていき、手を構える。するとその腕はまるで刃物のような形状に変化した。


「あ、ああぁあ……」


 男の子はさらに声を震え上がらせて、怯え切っている。


「大丈夫。ちょっと気絶するくらい刺すだけだから、だからワタシに恐怖の顔を見せてぇ」


 そしてそのまま奴は変形した腕を男の子に向けた。






「はぁ……」


 俺はその光景を見て、大きなため息を付いた。そして


「ゲスが……」


 言葉を発したその瞬間、俺は力を発動させた。


「ぐ!?」


 そして響く、刃物がぶつかる音。


 俺は女の元に瞬時に移動して、攻撃を受け止めていた。

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