常に公爵は振り回される
公爵は振り回されるの続編になります。
どうしてこうなったのだ。人生二度目の婚姻衣装。
隣には息子と変わらない年齢の王女殿下。
「似合うぞスティアート」
その美貌で惜しみもなく披露される笑顔に思わず見惚れそうになる。
どうして私なのだ。あれだけ王宮にいてこの式自体を知らなかった。それがどれだけ用意周到に計画されていたのか。こんなところで殿下の力を発揮する必要性はこれっぽっちもないというのに。
「殿下の方がお似合いです。」
国をあげての式だというのに気付かないものなのか。これだけの参列者を見れば確実に根回しをしていたのだろう。国王夫妻もそんなところでニコニコしていないで殿下の暴走を止めてほしかった。
「そなたなら安心して任せられる」
安心しないでいただきたい。殿下より国王の方が年が近いのだ。どう考えてもおかしいだろう。私の気持ちなどおかまいなしにつつがなく式は進んでいく。
「誓いのキスを」
バカな事を。こんな事許されていいはずがない。
しかし、ここで拒めば殿下に醜態をさらしてしまう。息子に引き続き私までとなればこの先どう頑張ってもとりつくえないだろう。
覚悟を決め殿下と向き合う。
ゆっくりと顔を近づけて行く。殿下の綺麗すぎるその顔は年甲斐もなく緊張してしまう。
後数センチ
「この続きは二人きりの楽しみだ」
届ききる直前に殿下の言葉によって止められた。ニヤリと悪戯が成功したみたいな殿下の顔に頭を抱えそうになった。なんだこの色気はまだ17の娘とは思えぬ色気だ。どこかもんもんとする気持ちを押さえつけていたら式は終わっていた後日披露パーティーを改めて行うみたいだ。
それもそうだ今日の政務もあるのだから。突然すぎてその準備は私にはされていないのだから。王宮に与えられた私の部屋で着替えをすませ執務室に向かった。
「やぁ、スティアートおめでとう。こんな日まで仕事をしなくてもいいんじゃないかな?」
部屋に入った瞬間宰相の満面の笑みに迎えられた。宰相だけじゃない、騎士団長と司祭長までこの場にいる。そして執務席に座るのは殿下だ。
おかしいここは私の執務室のはず。
「仕事がある」
「それなら殿下が終わらせて下さった。」
「なにを」
綺麗さっぱり片付いてる机の上は2.3日仕事をしなくてもいいレベルにまでなっていてあれ程の量を殿下でもそう簡単に片付けられないだろう。ここ暫くの忙しさは執務室から出ることも出来ずに缶詰状態で過労死するかと思った位だったのに。
「元からろくでもない仕事までおしつけてたからな」
「そうそーう殿下は今日の為に仕事を君におしつけてたからねーなんといじらしい殿下だろうか」
仮にも私と同じ年の奴がこんなゆるい喋り方でいいのだろうか。大体そんなんで司祭長なんて神殿の将来が不安になるレベルだ。
「我は欲しいものは必ず手に入れなければ気がすまないからな」
その性質はもちろん知っているが
「殿下、何故わたしなのですか」
「「「え?」」」
私の質問に宰相達が驚き目を見開いた。え?私が何かしたか?
「スティアートは相変わらずのようだね」
「年をとってもその鈍感さはかわらんというのか」
「そこがー彼のいいとこなのかもねー」
好き勝手言いやがる3人を睨んでやれば何故か吹き出されてしまった。
「まぁ、それでこそ我の求めるスティアートではないか」
なぁ、とまた色気ある顔で私を見る殿下に顔が熱くなった。
知ってるのか殿下は。私の気持ちを。
「スティアートは変態だね」
「なにを」
「むっつりというのではないか」
「まー殿下はきれーだからねー仕方ないねー」
もしや、こいつらまで気付いているのか
「今日の夜が楽しみだのう旦那様」
あ、ダメだ知られてる。私がこの女神を愛していることを。誰にも言ってない胸のうちに完璧に秘めていた筈の心。
誰が予想できる自分の息子と同じ年の女に惚れるなどあってはならぬことだ間違いだと自分に言い聞かせてきたのに
「少し席を外します」
恥ずかしすぎるだろう。このまま殿下の顔を見続けるなんて無理だ。
大体いつから気付いてたのだ。そんなそぶり見せたこともないのに
部屋に戻り一息つく。今日の夜は初夜になるのか、私は女神を抱かなければならないのか?どう考えても無理だろう。私の様なものが女神に触れていいはずがない。
「スティアート」
何故今こられるのですか。ソファに座る後ろから抱きしめるように殿下が手を回してくる。おかしいだろうなんだこの体制は
「スティアート、顔を上げるが良い」
殿下のいい匂いが鼻孔をくすぐる。殿下の息遣いが耳元で感じられる。殿下の柔らかい体が私を甘く痺れさせる。
「我の言うことが聞けぬのか」
いや、どう考えても無理だろう。今の状況で顔をあげれるはずがない。なぜ年下の殿下にこうも振り回されなければならないのか
「まぁ、よい、それでこそスティアートであったな。」
いや、本当に勘弁してほしい。
「スティアート。欲しいものはないか」
「ほしい、もの、ですか」
絞り絞り出した声はあまりにもだらしなく殿下の政治顧問として失格であろう。
「なにかないか」
「いえ」
欲しいものなんて特に考えつかない。曲がりなりにも公爵だ。欲しいものは欲しいときに手に入るからあえてこれなんてものはない。だがそんな私の返事が気に入らなかったのかほぅという呟きとともに殿下の腕が私から離れていった。
恥ずかしかったのでいいが、寂しいとも思う。手に入れることのできない人だったのになんでか手に入ってしまった人だもう少しふれていたかった。
「なにを、殿下」
離れた殿下は今度は私の前に移動してきて私の膝の上にまたがってきた。
「なぁスティアート、本当に欲しいものはないのか」
膝立ちをして私を見下ろしてくる殿下。王族の証である深い青の瞳が私をとらえて離さない
「言ってみろ」
「なにを」
「我がほしいと」
あー、くそなんで、なんで、なんで。
理性など残っていなかった。殿下の頭に手をまわし近づけその桜色のかわいい唇に食らいつくさんばかりにくいついた。
時折聞こえる殿下の艶めかしい声が私を侵食する。どれくらいそうしていただろうか少しずつ理性が戻ってきて慌てて口を離した
「スティアート、なかなかよかったぞ」
挑発するように私を見る殿下に再び理性が飛んでいった。
夜まで待てないとかだめだろう。勢いで襲ってしまった。陛下に顔向けできない。
「スティアート」
先程のせいでかすれている声にまた理性をもっていかれそうになる
「これで我はお前のものだな」
もう覚悟を決めた。この命でつきるまで殿下の横にいよう。
殿下が私の事を何ともおもってなくても側にい続けよう。
「殿下。愛しております」
ふわりと笑った殿下にもう逃げられない事を悟った




