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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ラスボスは主人公に恋をするだろう

ここは、魔王城。


私は、その中の大広間で、椅子に座って居眠りをしていた。


すると突然、廊下から、だれかがやってくる音がする。


一体誰なのだろう。



そこまで考えた瞬間、


爆発音と共に、大広間のドアが弾け飛んだ。


そこに立っているのは一人の人間。


わざわざこんな辺境の国まで来るなんて。


そこに現れた人間の姿を見て、驚いた。


栗色の少しカーブが入った髪に、サファイアのような透き通った深い青色の瞳。


あぁ、君なんだね。


「人間、ここに何をしに来た」



私は、彼を知っている。


多分彼は覚えていないだろうけど。



私は、前世の記憶を持っている。


それは、今から2000年前。


私は魔物で、彼は冒険者。


彼が、私の所にきたとき、


私は、彼を未熟なやつだと、仲間がいないと何もできない奴だと思った。


だから、彼に負けた。


私は死ぬ覚悟は出来ているつもりだった。


でも彼は、私を見逃した。


とても優しかった。


彼は、いつか、勇者になって世界を平和にしたい言っていて、


私はそれがとても素敵だと思って。


必死に魔術を勉強して、人間の身体を手に入れて


人間の世界のことも学んだ。


彼の力になれるように。


でも彼は、ある王国の貴族だった。


だから私は、遠くからただ、見ているだけだった。


私は、それがとても悔しくて


でも、彼の側で、侍女として働けるようになって


すごく嬉しかった。


少しでも、彼の力になれると思った。


そして彼は、人間の婚約者を選んだ。


愛する人を見つけた彼は、とても幸せそうだった。


それからしばらくして、私が魔物だってことがみんなにばれた。


私は、見せしめだって言われて、大勢の人の前で殺された。


棒に身体を張り付けられて、下からどんどん近づいてくる火に焼かれて死んだ。


大勢の人の話には、彼とその恋人もいた。


私は彼に助けてと目で訴えた。


目はあったはずなのに、彼はそのまま帰ってしまった。


悲しかったけど、仕方ないとも思った。


だって、私は魔物で、彼は人だもの。


こうして、私の第一の人生は、幕を閉じた。



目覚めると、2000年経っていて、


私は、魔物から、魔王になった。


この時代の魔物達は、弱かったから、


魔王になるのはとても容易かった。


でも、きっと、心のどこかで、彼を探していて


心に穴が空いたようだった。


毎日がつまらなかった。


そんなとき、また 貴方が現れた。


でも、彼はきっと、私のことなんて覚えてないんだろう


私は、彼に裏切られたけれど、


私はまた、貴方を好きになった。


彼の顔を見ると、恥ずかしくなって声が出なくなる。


何とか声を絞り出して話しかける。


「私は魔王メルリア、人間よ、一体お前は何を求める」


こんな風に言うはずじゃなかった。


でも、私は、貴方が望むならば、


何だって出来る。してあげる。


だって貴方は、私の…



***********************************




魔王城の、大広間のドアの前に立つ。


いつの日からか不思議と夢見ていた勇者として、


僕はここにいる。


剣を握る。


大きなドアを切り捨てて、中へ入る。


そして、そこに『彼女』はいた。


真っ黒な長い髪をなびかせ、吸い込まれるような紅い瞳を持つ彼女が。


どこかで、見たことがあるような。


彼女は、僕に向かって


「人間、ここに何をしに来た」


と、問いかけてきた。


そうか、彼女が魔王なのか。


僕は勇者だ。


勇者は、魔王を倒すための存在。


さっさと、剣をとって斬りつければどんなにいいだろう。


でも、僕は、彼女を斬れないだろう。


魔王を倒すために、ここまで来た。


自国からの期待を裏切ってしまったら、


もう僕はあそこに戻ることは出来ない。


でも、それでも僕は、彼女を斬れない。


何故だろう。


彼女を見るのは初めてなはずなのに。


こんなにも胸が締め付けられてしまうのは。


「お前は何を求める」


そんなとき、彼女に声をかけられた。


何を求める?


僕は…


「平和な世界を求めたい」


誰もが笑って暮らせる世界。


でも、それには、『魔王』という存在を、無くさないといけない。


あぁ、神よ、僕は一体、どちらを選べば良いのですか。




**********************************




平和な世界が欲しいと、彼は言った。


でも、それには、『私』という存在を消さなければいけない。


貴方がそれを望むのならば、


私は貴方に従おう。


でも、最期にちょっとだけ、


本当のことを伝えたい。




「ずっと…貴方のことが好きでした」



最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

ご感想や、誤字の注意など、教えてくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短い中に、内容が濃く詰まっている感があります。それでいて読みやすい。読んでいて楽しかったです。
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