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37.貴族の一歩と周囲の反応、ですっ♪

前回の続きですな。

……そろそろダンジョンの方に戻りたい作者であった^^;





 翌日。再びガーランドの元を訪れていた蒼汰は、ソファに腰掛けるとすぐさま四枚の書類を提出した。




「これでいいですかね?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。確認する」




 恐らく書類を渡した次の日に提出されるとは思っても居なかったのだろう。その表情には少し汗が浮かび上がっていた。




「……なるほど。家名は”フェアリル”にしたんだな。

ソータ・フェアリル=アンフィニ、か。良い名じゃないか」


「改めて言われると、少し恥ずかしいですけどね」


「ははっ、これから何度もその名で呼ばれるようになるんだ。直に慣れるさ」




 豪快に笑い飛ばすガーランドだったが、それもすぐに終わり今度は家紋に目を通し、そしてピタリと動きが止まってしまった。




「……すごいな、これ。こんな家紋は初めて見た」




 蒼汰達が提出した家紋は、ベースとなる絵に自分達のイニシャルを重ねるという、こちらの世界では一度も使われた事のないデザインをしていたのだ。

 自分の記憶にないデザインを前にただただ驚愕するしかなかったガーランドは、「す、少し待っていてくれ」と言うと、その家紋が描かれた紙を持ち慌てた様子でギルド長室を出て行ってしまった。




「……そんな慌てるような事なのか?」


「さぁ……?」


「……というか、一度もエリン(お前)の事に触れなかったな」


「それ所じゃない、って感じでしたねっ」




 蒼汰と、彼の横に居たエリンは勢い良く閉められた扉に視線を向けたまま、そんなやり取りを口にする。

 その後、額に玉のような汗を浮かべるガーランドが帰って来るまで、二人は我が家であるダンジョンの話を延々と繰り広げるのだった。


















────────────────────────







「へぇ、あんたが次の男爵様かい!!」




 そう言って大げさな反応をするのは、以前蒼汰とエリンを道案内してくれた八百屋の女性店主。あれ以来、ツーベル国での食材の買い物はここで行っていたため、ガーランドの所を出た後真っ直ぐここに来ていたのだ。




「何だい、何時の間にそんな話になってたんだい?」


「いや、それが昨日聞かされたばっかりで。俺自身まだ全く実感が湧いていないんですよね」


「あらあら、そんなんで貴族サマが務まるのかねぇ?」


「うっ……痛い所を突いて来る」


「大丈夫ですよ旦那様っ!! 旦那様なら出来ますっ!!」


「……って奥さんのお墨付きだけど?」


「は、はは……」




 ニヤリとした笑顔でからかってくる店主に苦笑するしかない蒼汰は、話題を逸らすために店頭に並ぶ食材を適当に買っていく。

 ツーベル国、もといこの世界でよく売られている食材としては小麦粉や大豆、そしてジャガイモに似た”大陸イモ”というものがある。他には地域によって売られている物が異なり、ここツーベル国ではトマトやキュウリといった、水分の多い野菜が売られている。




「あ、そう言えば」




 小麦粉やトマト類など、今晩の食材を買い込んだ後の会計の時、店主がふとそんな言葉を漏らす。




「貴族になったっていうお二人さんにちょっと頼みたい事があるんだけど」


「頼みたい事?」


「いや、ね。こないだの森での騒動があったせいで、農家の方がビビっちゃってさ。こっちに野菜を中々卸してくれないのよ。

だから、男爵サマのあんたから一声かけて欲しいんだけど」


「あ、あぁ……確かにそれは困りますね。

でもまだ男爵になって無いので」


「あー、そう言えば授与式はまだなのかい?」


「五日後らしいです。それまではまだ男爵”候補”、といった所ですね」


「ははっ、控えめな男爵サマだこと」




 カラカラと笑う店主のペースに完全に呑まれてしまう蒼汰は、口では絶対この人に勝てないと痛感させられる。



 買い物用の布製鞄に購入した食材を詰めて貰い、店主に挨拶してその場を立ち去ろうとした二人だったが、その背後から店主が大声で声を掛けた。




「ちょっとお待ち。二人共、授与式に着ていく為の正装は発注しているのかい?」




 その言葉に、二人の足が嘘みたいにピタリと止まる。その様子に周囲の通行人は何事かと眉を顰めて見つめてしまう。

 自由に衣服をチェンジ可能なエリンはともかくとして、日本で暮らしていた頃に一度も社交の経験がない蒼汰は、「適当にスーツで良いだろ」という投げやりな発想しか持ち合わせていなかった。


 またしても痛い所を突かれた蒼汰は、エリンを連れて早足で店主の元に駆け寄る。




「……その様子だとまるで考えてなかったようだねぇ。

それならあたしの知ってるおススメの洋服屋を紹介しようかい?」


「えっ良いんですか?」


「いいとも。何、いつも食材を買ってくれるお得意様だからね。これぐらいはサービスの内さ」




 「ちょいと待ちな」と、二人を残して店の中に入っていった店主は、次に戻って来た際には小さい便箋を一つ手に持っていた。




「それは?」


「ギルド協会を挟んで向こう側の街の一角に、無駄に装飾に凝った店があって、そこで貴族の正装とか特殊な衣装を扱ってくれるから、取り敢えずそこに行ってみな。

知り合いが経営しているから、その便箋を見せればある程度は融通してくれると思うよ」


「あ、ありがとうございますっ!!

いやほんと、何から何まで……」


「いいのいいの、これもただのオバちゃんのお節介だと思っておいてよ。

礼なら男爵になってから待ってるから、さ」


「は、ははは……」




 とびっきりの明るい笑顔を見せられ、顔を引き攣らせるしかなかった蒼汰は、便箋を受け取り一礼すると、エリンを連れて外観の目立つ店を探しに向かうのだった。




あ、家紋のイメージをtwitterにてアップしてます〜(^^)

#妖精嫁 と検索すれば出てくると思うので、良ければ見て見てくださいなd('∀'*)

……センスは無いよ? ホントだよ?




面白いと思ったらブクマ、レビュー、感想等待ってます\(°Д° )/

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