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36.貴族としての、ですっ♪

今回は少し長い目です~

ふむ、ちょっとずつ本編も進み始めている気がするね( ゜д゜)





「……ってな訳で貴族になるんで、代わりに色々と報酬をくれません?

あぁ勿論前払いでお願いします」


「「はい!?」」




 翌日、言っていた通りギルド長室にやってきた蒼汰は、ガーランドの前に座った途端とんでもない横柄っぷりを見せた。これにはガーランドも、隣に座ったギースさえもが驚きの声を上げずにはいられなかった。




「ん? 聞こえませんでした?」


「い、いや聞えたぞ。……まぁ、依頼したのはこっち側な訳だし、よっぽどの内容でない限りは支払いはするが……ド直球過ぎないか?」


「すいませんね、難しい言葉は知らないもので」




 そう言って蒼汰がはにかむと、ガーランドはボリボリと頭を掻いて言葉を吐き出す。




「で、具体的には何が欲しいんだ?」


「そうですね……まぁ、手っとり早い所から言うとお金ですね。後は農家との契約の仲介をお願いしたいのと、子供の教育になりそうな本が欲しいですね」


「お、おう。お金は良いとして、随分と変わった物を要求するじゃねぇか」


「無理ですかね?」


「いいや、それぐらいならお安い御用だろうよ。貴族の中には食にこだわって農家に直談判する奴や、自分の子の為に世界中から書物を掻き集める奴だって居るからな」


「なら問題なさそうですね」


「あぁ。寧ろもっと酷い我が儘を言って来ると思ってたぞ」


「いやいや、流石にそんな非常識な事は言わないですよ……」




 豪快に笑うガーランド相手に、蒼汰は少しだけ苦笑いする。自己主張の控えめな国で生まれ育った彼からすれば寧ろ、これでも十分に強気に出た方なのだが、こちらの世界の感覚は彼の言う所の欧米のノリに近いのかも知れない。


 蒼汰が改めて文化の違いに触れている間、ガーランドは向かい側で書類に何かを記入しながら話題を依頼の件に戻した。




「じゃあ交渉成立って事で話を進めさせて貰うが、まずはお前さんの貴族加入の手続きから始めさせて貰うぞ」




 そう言ってガーランドは、自分の手元の資料から一枚の紙を抜き出し、それを二人の前に置いた。




「これを見て欲しい、ここに書かれているのが爵位の一覧表だ」


「爵位って言うと……伯爵とかそういう?」


「そうだ。

この国は建国されてからまだ大した年月を送っていないせいでな、貴族階級がそう上手く機能していないんだ。だからユーフラスト家の様な、好き勝手に権力を行使しようとする者が後を絶たなくてな。本来はギルドの管轄外なんだが、残念な事にある程度関わる事になっているんだわ」


「……もしかしてこれ、ギルドの職員用の一覧表ですか?」


「察しが良いな、そのとおりだ。

ここに書かれている公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五爵のうち、お前さんには一番下の男爵になってもらう。

ただ、口で言っても何の意味も無いため、爵位の授与式が後日行われる。それを以て初めて男爵として認定される訳だ」


「なるほど。ではそれまではただの市民って事ですね」


「ああ。授与式の日程やその他に関してはまた後日連絡するが、取り敢えず男爵になるという事だけは知っておいてくれ」




 爵位の話を終え、その一覧表の書かれた紙を書類の中に戻したガーランドは、続いて白紙の紙を一枚、蒼汰達の前に差し出す。




「さて、続いてだが。お前さんには授与式までに家紋(・・)を決めて貰いたいんだ」


「家紋?」




 余り耳にしない単語に無条件反射で聞き返した蒼汰に、隣に座っていたギースが軽く説明を入れた。




「あお……主殿。家紋というのは貴族や王族を見分ける為の目印だ。基本的には手紙や書類の判子に使われたり、食器類、衣類、私兵の装備、それに個人で経営する店舗や出資した店の看板など、あらゆる所に使われるものだ。

……まぁ、言ってしまえば上流階級の者達が”これは自分の物だ”と周囲にアピールする為のものだ」


「あー、そう言われると何か理解出来たわ」


「まぁ、それ以外でも用途はあるんだが、それは置いておくとして。

この紙に家紋を書いて、俺かギルドの職員の誰かに渡してくれ」




 ガーランドの言葉に頷いた蒼汰はその白紙を四つ折りにし、ギースに手渡す。彼は鞄類を持っていない為、無限収納ポーチを常に持ち歩いているギースに当然の様に渡していたのだ。


 書類への記入が終わったガーランドは、三度(みたび)一枚の紙を取り出し、蒼汰とギースの前に提示した。




「それじゃあ最後に。貴族としての家名を決めてこの欄に書いてくれ」


「家名……って言うとあれですよね。ミドルネームみたいに、名前の間にもう一つ入れるアレですよね?」


「ミドルネーム、ってのは良く分からんがそれだ。貴族や王族は必ずと言っていい程、家名が存在している。

基本的にはその土地由来の名前を付けたり、富と財を築いた者の名を借りたりするのだが……まぁ、正直な所そんな事を考えるのは難しいだろうから、そこはお前さんたちの自由だ」


「……ギース。お前ってそう言うの詳しい?」


「まぁ、幾ら鎖国していたとは言えセルスト国でもあったものだからな。

だが、アドバイスする様な事でもないと思うが?」




 「逆に何を尋ねるつもりなんだ」と首を傾げるギース。と言っても、自分の名前を決める様なものなので、蒼汰としては一緒に悩み考える人が欲しいというだけなのだが。




「……あぁ。別に今すぐって訳じゃないから、一旦持ち帰ってくれてもいいぞ?」


「あ、ならお言葉に甘えて持ち帰らせて貰います」




 どうやら急を要する内容では無かったらしく、ガーランドからの提案を素直に受け取った蒼汰はまたしても四つ折りにしてギースに手渡した。

 これで全ての話が終わったと思った二人だったが完全に大事な事を忘れていた。




「さて、じゃあいよいよ本題に入るが、お前さんに依頼したい事ってのは、来月オルディシア大陸にある獣人国で開催される王家主催のパーティに参加して来て欲しいんだ」


「「……はいっ!?」」




















────────────────────────






 日が街中に沈んでいく頃、漸くにしてギルド長から解放された二人は、色々な手土産と共に屋敷へと帰って来た。




「「ただいま~」」


「あ、おかえりなさいませご主人様、ギース様」


「ソリス、エリン達は?」


「先程、大広間で夕食を取られていました」


「ん、分かった。ありがと」




 偶々その場に居合わせたソリスと軽いやり取りをした後、二人は皆が居るという大広間へと向かって歩いていく。その間も何人かのメイドとすれ違い、その度に会釈やら挨拶やら、清々しい好意を向けられる。




「……ご主人様って、最高だよな?」


「……はぁ……鼻の下伸びてるぞ、アオタ殿」




 隣からの冷たい視線をまるでものともしない蒼汰は、気が付けば大広間までやって来ていた。

 両開きの扉を押し開くと、長楕円形のテーブルにはエリン、クラリス、シュラ、そしてオルタナの四人が座って会話していた。




「あっ、お帰りなさい旦那様っ♪ それにギースちゃんもっ♪」


「おうただいま。全員ここに居たんだな?」


「皆で夕食を食べた後、ちょっと話が盛り上がってしまって……」


「へぇ、そりゃ珍しいな」


「それで、お主は一体何の話を持ち帰って来たんじゃ?」




 青のチャイナドレスに身を包むシュラが、空いている座席に腰掛けようとした蒼汰にそう尋ねる。

 蒼汰はギースに目配せし、意図を汲んだ彼女がポーチの中から書類を四枚(・・)取り出した。




「これは?」


「まぁ結構色々あってな。まずこれが──────」




 不思議そうに書類を見つめる四人に対し、蒼汰は家紋の件から順に話をしていく。

 そうして家名の話まで終えた所で、軽く息を吐いた蒼汰は、声のトーンを少し落として話を再開した。




「……ここからが大事な話なんだけど、今回の依頼って言うのが

『獣人国で開かれるパーティに参加して来い』

というものなんだわ」




 蒼汰がガーランドから聞かされた依頼というのは、今から一か月後の七月一日に行われる、獣人国主催のパーティにツーベル国代表として参加して来て欲しい、という内容だった。

 何故貴族に加入したての蒼汰にそのような大役が、と蒼汰自身不審に思ったが、その事をガーランドに尋ねると、


「いや、な。現存する貴族達はあの森の復旧作業なり外壁の舗装なりに資金援助をして貰っていてな、その対価としてこのパーティへの参加権の放棄を認めたんだ。それで、代表として向かう貴族が居なくなってだな……」


という、何とも呆れた回答が返って来たのだ。




「ってな訳で、一か月後に獣人国に行かなければならなくなった」


「なるほど……それで、その話とその書類はどんな関係があるんですかっ?」


「あぁ。このパーティなんだが、どうやら書類に参加者の名前を書けば最大四人まで一緒に参加出来るんだわ。

だから……パーティ、行きたい奴は挙手!!」


「「「はいっ!!」」」「うむっ!!」




 溌溂(はつらつ)とした蒼汰のその掛け声に、オルタナ以外全員が素早く手を挙げた。




「……結局全員だな。オルタナは良いのか?」


「私はただの居候だもの。これと言って貴族の宴会にはあまり興味が湧かないわ」


「そっか。ならその間は留守番を頼むかもしれないな」


「あれだけ優秀なメイドがいれば心配ないでしょうに。

でも……そうね、それは約束出来ないわ」


「ん? そりゃどうして?」


「前に約束、というか相談した通り、ある程度の資金が貯まれば森の復興の為に動き回る予定なの。

だから屋敷に常駐していないかもしれないわ」


「あー、そう言えばそんな事言ってたっけ」




 森で起きた一件の後の屋敷に住み込む話になった時にそんな事を言ってたなぁ、と昔を懐かしむような目になる蒼汰。

 彼女自身、無駄に高時給のバイトのお陰で懐がかなり温かくなっている。その為、前々から計画していた事が漸くにして行動に移せるのだ。だからなのか、こうして彼と会話している間も口元が緩んだり不自然に引き締まったりしていた。




「ま、オルタナの言う通りメイド達で十分何とかなるだろ。

それに何かあったら戻ってこればいいだけの話だしな」


「……中々無茶苦茶言うわね。大陸から大陸の移動だって言うのに、そんなに早く帰って来れる訳無いじゃない?」


「それが出来るんだよなぁ」


「?」


「ま、それは置いておくとして。

この残りの二枚にはパーティに参加する人の名前と、オルディシア大陸に向かう船に乗る人の名前を書かなきゃならないんだわ。

取り敢えずオルタナ以外の五人の名前を書いておくぞ」


「あっ私が書きますねっ!!」


「おっとエリンちょっと待った」




 蒼汰が確認を取ると、すかさずエリンが名前を書こうとする。ただ、それを蒼汰が手で制止した。




「旦那様っ?」


「あー、いや、な。先に家名を決めないと、俺とかエリンとかシュラとかは名前書けないだろ?

それに、ギースはいいとして、クラリスは名前そのまま使うと厄介事にならないか?」


「あー、確かにそうですねっ」


「ってな訳で、まずは家名と家紋を決めようと思うんだけど、実は俺なりに一つだけ考えてたんだ」




 周囲の反応を窺いつつ、蒼汰は自分のアイデアを書き連ねていく──────。




貴族やそういった上流階級の知識が薄いので、「いや、家名とか家紋とか戦国時代かよ」とかいうツッコミは全く以て受け付けませんのであしからず( ̄▽ ̄)

……蒼汰はネーミングセンスあるのかな?(ブーメラン)



面白いと思ったらブクマ、感想等待ってます(^-^)

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