33.解決の一手、ですっ♪
本当にすいません、忙しいのと病気が重なって更新が随分と遅くなってしまいました(^-^;
この先も更新頻度は下がるかもしれませんが、ご理解の程宜しくお願いしますm(__)m
あっ、総合評価800pt突破していました、ありがとうございます(^-^)
……頑張らないとなぁ(笑)
五月末日。朝食終わりに蒼汰、エリン、クラリス、ギース、そしてシュラの五人はLDKルームに集まっていた。
「……今日はあの日、か」
「はい、あっという間でしたね」
「少し、怖い気もしますが……仕方ないんですよね」
「あぁ……立ち向かうしかない」
「……のぅ、どうしてお主らは今にも死にそうな顔をしてるんじゃ……?」
自身を除く四名がどんよりとした空気を漂わせる事に不安を感じ始めるシュラ。そんな彼女の隣、蒼汰の目にはシスの画面が映っていた。
『残りCP:3,800,259、本日末に支払う維持CP:1,400,000』
「だからどうして数千万単位のCPが消えるんだよ……」
「旦那様っ、恐らく洗濯室とか色々な部屋を作ったからでは……」
『マスター、それと食費が大きいです。一日当たりの平均消費量が約142,500CP、一月当たり約4,275,000CPとなっています』
「それは……ヤバいな」
『CPで食材を購入すると通常より高い費用がかかるようです。やはり自給する手段を考える方が宜しいかと……』
画面に大量の数字を表示し諭すシスに、蒼汰は少し思考を巡らせる。そして、食材を確保する手段として、思い付いた事をそのまま口にする。
「あ、例えばツーベル国で買い込むってのは?」
『悪くない手だと思われます。しかし毎日二十人分もの食材を購入するのは難しいのではないですか』
「それは金銭的な問題で、って事か?」
『はい』
「そこが問題かぁ……」
事実、外の世界で一財を築くだけなら幾らでも方法はある。魔力草を大量に売ったり、ガチャやCPで手に入れた貴重なアイテムを高額で転売したり、エリンの力をフルに活用して報酬金を稼いだり、等々。
しかし、そのどれもが現実的ではない。大騒ぎになるからだ。
「ダンジョンマスターという立場上、目立つわけにもいかないしなぁ」
腕組みをしてそう唸る蒼汰。因みにだが、報酬で貰った白金貨二枚は余程の事が無い限り使わない事で意見が一致している。
「……あっ、だったら旦那様っ、メイド達に冒険者をさせるのはどうですかっ?」
「冒険者?」
エリンの言い分は以下の通りだった。
そもそもの話として、ダンジョンの管理には人手が大して必要にならない為に供給者がどうしても手持ち無沙汰な状態になってしまう。それが悪い事では無いにしろ、娯楽の少ない環境下で仕事が無いのは精神的な面で変に負担がかかってしまう。
そこで彼女が提案したのは”供給者であるメイド達を外の世界で働かせる”という事。要するに「自分達の食い扶持は自分達で用意しろ」という事である。
「幸いなことに魔法の勉強をしていますし、後は実践指導があれば十分に冒険者としてやっていけると思うんですっ。そうして稼いで貰えれば、金銭的な問題は解決じゃないですかっ?」
「エリンの提案はいつも説得力あり過ぎるなぁ……で、その実践指導は?」
「いるじゃないですか、適任者がっ♪」
「……あー」「いましたね」『最もです』「まぁ、そうなんじゃな」
「……え、え?」
エリンの言葉に、殆ど全員の視線が一点に集中する。当の本人、ギースは唐突に話題が自分に向いた事に驚きを隠せないでいた。
だからと言って、蒼汰が彼女に歩幅を合わせるような事はしない。
「と言う訳でギース、メイド達に実践指導をしてやってくれ」
「あ、あぁそれは構わないが……そんな時間あるのか?」
魔法の勉強を終えたメイド達は皆、声言葉にはせずとも表情から読み取れる程に疲労していた。それをひた隠しにし、普段通りに振る舞おうとするのだ。加えて実践指導などすれば、どうなるかは子供でも想像がつく。
「それは後で皆と相談しよう。半分を魔法の勉強、もう半分を実践指導に分ければ、上手く時間を使えるだろ?」
「なるほど、毎日交互にさせるのか。それならメイド達の負担も大きくはならないし、皆も納得してくれるだろう。
……まぁ、主であるアオタ殿が一言『命令だ、毎日両方やれ』と言えば済む話なんだがな」
「いやいや、そんな鬼畜の所業はしねぇよ。俺だってあんまり役に立たない側のただの人間だし、そこン所は良く分かってるつもりだよ」
「はっ、どの口がそんな大嘘を言っているのやら」
「……お前、あいつ等の前で公開処刑するぞ?」
「なぁっ!? こ、この悪魔めっ!!」
「まだやるって言って無いだろ……」
大勢の前で醜態を晒す自分を想像し赤面するギースに呆れる蒼汰は、メイド達の勉強が終わるまでの間、ダンジョンルームの模様替えをしながら時間を潰すのだった。
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「…………って訳で、明日からは半分が魔法の授業を、もう半分が実践指導を、交互に受けて貰う事にしたから」
オルタナの授業が終わり、昼食を済ませたメイド達を屋敷の大広間に集合させた蒼汰は、今朝話していた内容を伝えた。内容が内容なだけに、オルタナには少しの間外出して貰っている。
「ご主人様、質問良いですか?」
「どうしたソリス?」
「目的は分かりましたけど、わざわざ全員が実践指導を受ける必要は無いのではないですか?」
「いや、実践指導は全員に受けて貰いたい。この先何かあった時の事を考えて、自分の身を守る手段は持っていた方が良いと思ってな」
「なるほど、分かりました」
自身の説明に納得したソリスが一歩下がったのを目にした蒼汰は、続けてメンバーの割り振りを始める。
「一応こっちで半分になる様に割り振ってみた。今から名前を呼んだ奴は、明日は魔法の授業を受けてくれ。呼ばれなかった奴は実践指導だから」
そう言って蒼汰は一人ずつ順番に名前をあげていく。
「ソリス、メリーヌ、ニッケ、ガイウス、ヨナ、シィエル、そしてツィーレ。この七人は魔法の授業を受けてくれ。残りの八人はギースが実践指導をしてくれるから、しっかり言う事を聞いて頑張ってくれ」
「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」
きっちり揃えられた返事に満足げな表情を浮かべる蒼汰は最後に、最も大事な決め事をする事にした。
「で、最後にだけど。この中で冒険者になりたい奴はいるか?」
手は、上がらなかった。皆、冒険者に対する知識の無さや戦闘経験の無さから、未知に飛び込んでいく事に不安を感じている様だった。
そんな中、不安げな様子を見せるメイド達の中から、ソリスの声が上がった。
「ご主人様、命令して頂ければここにいる全員が冒険者になります」
「いやいや、戦いたくない奴に無理して冒険者をさせる程、俺は鬼じゃないから」
「……そうですか。でしたら私が冒険者になりましょう」
蒼汰の言い分に何を感じたのかは分からないが、ソリスが一歩前に出た事に周囲のメイド達は騒めきだした。自分達のお姉さん的ポジションの彼女が冒険者になる事が、余程衝撃的だったらしい。
と、皆の視線がソリスに向いている中で手を挙げた者が一人いた。
「ソリスがなるなら私も──────」
「ローラ、貴女は皆の面倒を見てあげて頂戴。年長組が二人も一気に抜けるのは良くないもの」
「ソリス……分かった、貴方の言う通りにするわ」
ソリスに言い包められているローラは、メイド達の中では二番目に年上だった。その為歳の近いソリスとは仲が良く、面倒見がいい点を良くソリスに買われていた。
友人の言い分を理解し引き下がったローラに代わり、手を挙げたのは一人の青年だった。
「でしたら、僕が冒険者になります」
「エストか。確かに冒険者に向いてるな」
奴隷ボーイ達の中で最年長であるエストは、良くも悪くも誠実過ぎる性格をしている。人と関わる事の多い冒険者稼業では、その性格が活かされる場面もそう少なくは無い、そう感じた蒼汰は彼が冒険者になる事をすぐ了承した。
「エストがなるのであれば、我も随行しようではないか」
「わ、私も冒険者になってみたいです……」
「私も、ご主人様の為に尽力したいと思います」
エストに続いて手を挙げたのは、エストと意外と仲の良いガイウスに、密かにエストを兄扱いしているノルイア、そして蒼汰に忠誠を捧げているツィーレの三人。皆理由はそれぞれだが、やる気はしっかりと伝わって来ていた。
「これで五人か。パーティ的には丁度いいから、この五人には冒険者になって貰う事にするか。
といってもまずは実践指導をしっかり終わらせてからだから、まだ先の話にはなると思うけど。五人共、それで良いか?」
「「「「「はいっ」」」」」
「よし、じゃあ今日はこれで解散だな。明日からはまた頑張ってくれ」
その一言に、それぞれが頷く。後に、この五名が著名な冒険者集団になる事は、この時は未だ誰も予想だにしていなかった。
CP大量に使っているように見えるけど、最悪の手段として魔力草を集めれば問題なし!!
……チート過ぎる気がするけど(笑)
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