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31.ギルド長と報酬、ですっ♪

最近ダンジョン経営してないって……?

……や、やるって!!(^-^;








「えーっと、どこからこの人数のメイドが湧いてくるのよ……」




 深い溜息を吐く魔女の前には、真剣な眼差しで自身を見つめる十五名のメイド達。皆椅子に座って背筋を張っていた。

 経験上複数人から強い視線を向けられる事には慣れていた為、彼女はチョーク片手に話し始める。




「……えっと、今日からあなた達に魔法を教える事になったオルタナ・オーウェンよ。フードを被ったままなのは許して頂戴ね」




 魔女、もといオルタナの自己紹介にメイド達はざわつく。素顔を見せようとしない講師など、驚かない方が不思議である。




「……そう言えば、魔女の本名ってセルスト国の時は有名だったのか?」




 メイド達を挟み簡易黒板の前に立つオルタナの対面の壁に凭れる蒼汰が、そうギースに問いかける。




「いや、全く知られてなかった。私も今知った所だ」


「それすげぇな……」


「えーっと、見た所まだ魔法の基礎教育の済んでなさそうな子達も居そうだから、まずは魔法そのものについてから説明を──────」




 何十年以上も本名を明かさずに生活していた事実に、純粋な驚嘆を漏らした蒼汰は、昼食の時間になるまで彼女の授業を眺めている事にした。





















────────────────────────






「……じゃあ、ちゃんと給料も払って昼飯も用意したのか」


「あぁ、エリンは世話好きだな」


「嫁嫁言ってるだけあるよな、流石だわ」


「しれっと酷いよな主人よ……」




 昼、オルタナによる授業が終わり昼食を済ませた蒼汰とギースの二人は、ギルド協会を目指して歩いていた。

 本来ならばこの場にエリンも居る予定だったのだが、彼女が「オルタナちゃんのお世話をするのですいませんが行けないですっ……」と言った為不参加である。




「それで……ギルド協会ってどんな感じ?」


「そうだな……私もまだ詳しくは分かっていないのだが、三階建ての巨大な建物だ。

中は一階が冒険者ギルドの受付、クエストの発行、素材の買い取り、二階がその他商業系・農業系ギルドの受付、クエストの発行、素材の買い取り、三階はギルド長の部屋や資料室、応接室等の部屋使用を主とした階、といった所だな。

……あぁ、地下に訓練場が造られてたな」


「マジか……メチャクチャ巨大な施設じゃねーか」


「あぁ……世界的に幅を利かせているだけあって中身は充実していたな」




 ギースの情報を元にギルド協会という世界規模の機関に妄想を膨らませながら、二人は騒がしい街中を歩いていく。




「……やっぱり、昨日のアレ(・・)が原因だよな……」


「あぁ……寧ろ他の理由があるなら教授願いたい……」




 突如として起きた大火災や謎の鋼鉄巨人の出現、そしてセルスト国に落ちたあの天光の再発と、震え上がる様なネタのオンパレードに国中が大騒ぎしていた。

 街中を駆けるのは殆どがギルドの職員、又は各ギルド所属の者で、住民の多くは自宅に待機する、と言った様子が見受けられる。その中を二人は歩いていたのだ。




「……何か浮いてるな、俺ら」


「だな、さっさと急ごうか」




 装備を整えた冒険者や制服を着たギルド職員ばかりが通る街中を歩く、布面積の少ないメイドと物珍しい格好の男が歩いていれば、かなり目立つというもの。

 周囲から視線を浴びる事に恥ずかしくなった二人は、歩く速度を上げて急いでギルド協会へと向かって行くことにした。





 早歩きしたお陰か、ギルドまでは意外と早く辿り着いた。




「……でけぇ」




 目の前に聳え立つ巨大な施設に、蒼汰の口から出た感想がそれだった。

 木と煉瓦のようなモノで構成された建造物の入り口に立っていた二人は、そのまま誘われるように中へと入っていく。

 中は思いの外開放的で、入り口から右側と向かいのL字に木製カウンターが設置され、数多くのギルド職員が冒険者達の相手をしている。左側に上へと続く階段があり、中央のスペースにはギルド側の配慮の表れである、木製テーブルが数多く並べられている。加えて、中央は吹き抜けになっており三階を見上げる事が出来た。




「やっぱ凄い賑わってんな……」


「あぁ、やはり昨日の事が騒ぎになってるんだろうな」




 カウンター側の賑わいに二人が目を向けていると、そのカウンターの方から声が飛んでくる。




「────あっギースさんっ」


「ん、ラフィーが呼んでいるみたいだな」




 カウンター越しに手を振る快活な人間の女性に、ギースがそう呟く。蒼汰を連れ二人が彼女の方に寄ろうとすると、向こうから駆け寄って来る。




「昨日ぶりですね、早速お連れしても問題ありませんか?」


「あぁ、主人もそれで良いか?」


「ん、いいぞ」


「分かりました、では早速お連れしますねっ」




 「三階です」と告げると、ラフィーと呼ばれた職員が階段を上り始める。蒼汰とギースはそれについて行き、二階の様子を眺める事無く三階へと到達する。

 三階は、少し特殊な構造をしていた。吹き抜けの所為で、という事もあるのだろう、コの字に広がるスペースに個室が幾つも設置されているだけ、と言った様子である。




「こちらです」




 階段を上がって真っ直ぐ歩いていき、扉上のプレートに『ギルド長室』と書かれた部屋の前で三人は立ち止まった。




「中でギルド長がお待ちです、詳しい話はギルド長から聞いて下さい」


「分かった、ありがとう」


「では私はここで、終わり次第迎えに上がりますんで」




 ペコリと軽い一礼の後、ラフィーは元来た道を帰っていってしまう。




「じゃ、早速ギルド長に会ってみますか」


「うむ、そうしよう」




 残った二人は息を整え、扉を二回ノックする。と、中から太い声が返って来る。




「おう、入って来ていいぞ」


「「失礼します」」




 入室許可が下りた所で二人が部屋に入ると、書類が積まれている机の所に腰掛けていたのは、人間にしては毛深く体格の良い、顔の大きな男だった。




「良く来たな。さ、そこに座ってくれ」




 男は机の前に向かい合わせに置かれていた、来客用のソファを指差す。二人はそれに従いそこまで行くと、机の方から移動して来た男の合図で腰掛ける。




「取り敢えずは自己紹介といった所だな。見たところ、会うのは初めてだろう。

……俺の名前はガーランド・グレウス。見ての通り土精人(ドワーフ)でここのギルド長をしている」


「ソータです」「ギースだ」




 男、ガーランドの差し出された手を取り順に自己紹介を済ませる。蒼汰が「ソータ」と名乗ったのは、現実世界の一般人とダンジョンマスターの時でしっかりキャラ分けする為である。

 二人と握手を終えたガーランドは早速本題に入り始めた。




「それで、今日お前達に来て貰ったのは昨日の件だ。うちで犯罪行為の確認を行った所、確かに不法侵入及び荒らしを実行しようとしていた事が分かった。

……それで、だ。問題なのが、そいつらがユーフラスト家直轄だった事なんだ」


「問題、と言いますと?」


「おう、昨日あったあの大事件、知ってるよな」




 大事件、という言葉に二人は顔を見合わせ、そして頷く。




「あの時すぐに職員と冒険者の何人かを派遣したんだが、その時に焼け爛れた森の中でノビた団体を発見してな。すぐさま連行し記憶を見た所、この団体が今回の騒動の首謀者だと分かったんだ」


「はぁ、でもそれが」


「まぁ待て。その首謀者の記憶をもう少し辿るとな、何とユーフラスト家と深い関わりがある事が分かったんだ。

それで、アンタ達の方の件もあって、正式にあの貴族を犯罪者として捕らえる事になった」




 ガーランド曰く、貴族をギルドが犯罪者指名する事は滅多に無いらしく、ツーベル国においては初だという。

 貴族を逮捕する方法として主なのが、行った犯罪行為、不正行為を二つ以上暴く事、若しくは現行犯で犯罪現場を取り押さえる事の二つ。今回は前者に当たっていた。




「……話が大きくなりましたね」


「あぁ、厄介だがこれも治安維持のためには仕方のない事だ。

で、ここからがお前達の話になるんだが、ユーフラスト家を逮捕する為の片側をお前達が用意してくれた訳だ、報酬を別で用意させて貰う事になった」


「なる、ほど……」




 思いがけない幸運に、蒼汰は驚きを表面に出してしまう。ギースも同じだったらしく、声には出さないものの表情には出ていた。




「そう、今回呼び出したのはその報酬の件なんだ。

……いや、先にこれは言わなければだな」




 そう呟いて立ち上がると、ガーランドは深々と頭を下げた。




「ギルドを代表して言わせて貰う、この度は協力に感謝する」


「い、いえそんな……個人的な事を報告したまでですし」


「感謝は素直に受け取っとけよ。っとまぁ、話を戻そう」




 頭を上げ再び腰を下ろしたガーランドは、話題を報酬の件に変えた。




「で、だ。報酬の受け取りなんだが形式としては主に三種類ある。

一つ目は現金、まぁ内容は言わなくても分かるだろ。

二つ目はその現金と同等の価値を持つ物品、要はモノだ。

三つ目が現金に代わる権利、要はコトだな」


「なるほど」


「さて、どうする? 出来ればこの場で決めて貰いたいんだが」




 ガーランドが急かすのにも理由があり、この話を持ち帰った二人が周囲に言いふらさない様にする為だった。

 こういった報酬の件ではトラブルが付き物らしく、ギルドではその場で即決して貰う決まりになっていた。




「……どうする、ギース」


「素直に現金でどうだ? 現金があれば物を買える、場合によれば取引材料になるしな」


「……お前が賢いのは気に食わねぇ」


「酷くないか!?」


「ははっ、何とも仲の良いこった。じゃあ現金にしておくか?」


「それで頼む」




 蒼汰の頷きに、ガーランドは席を立って机の方に向かって行った。




「……幾らぐらいだろうな」


「私の知る相場では、不法侵入、空き巣の二件だと大体金貨二枚が良い所だな」




 セルスト国で培った彼女の基準で考えれば金貨二枚、それを聞いた蒼汰は少し心が躍った。何せ空き巣を捕まえただけで二百万円が手に入る、日本では有り得ない話である。

 机の方から貨幣数枚を持ち出して来たガーランドは、包みを広げて二人の前のテーブルに置いてみせた。






「ほれ、報酬の白金貨二枚な」


「「……ぉえぇっ!?」」





新キャラが何人か登場してますね、度々再登場するかも……?


面白いと思ったらブクマ、感想等よろしくお願いしますm(__)m





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