30.その後の六人、ですっ♪
す、すいません投稿が遅れてしまって……(^-^;
中々思う様に書けないんですよね、特にこの時期は時間が取れないっ……
※エイプリルフールですが、作者は真面目なので嘘を付けません(´ー`*)
「す、凄い豪邸ね……」
日も完全に落ち切り、宵の世界へと切り替わった頃。出来る限り人の目を避けて屋敷まで帰って来た蒼汰達の後ろで、魔女がそう呟いた。
「だろ? シュラがいなければ今頃こんな屋敷買ってなかったからなぁ、シュラにはある意味感謝だな」
「そんな嬉しくもない感謝をされたのは初めてじゃ……」
「旦那様っ、取り敢えず中に入りましょうっ?」
長距離を走ったにも関わらず疲れを見せないエリンを先頭に、六人は屋敷に入る。すると、二階から奴隷メイド達が駆け下りてくるのが視界に捉えられた。
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」
「お、おぉ……」
少し遅れながらも自信を出迎えるメイド達に、蒼汰は何とも言えない感動を表に出す。実際、こうしてメイド達に出迎えられたのは今回が初だった。
「貴方、メイドなんて雇っていたのね」
「いや、雇ってる訳じゃないぞ。皆奴隷だからな」
「奴隷……?」
蒼汰の発した二文字に、魔女は眉を顰めた。大方、蒼汰が無理やりメイドとして働かせているとでも考えたのだろう。そして、その事は蒼汰本人にも伝わった。
「あぁ、言いたい事は分かるけど、そんな乱暴はしてないって。メイドとして働くようには言ったけど、ちゃんと衣食住揃ってるし、不快な事は何一つとしてしてないからな?」
「……本当に?」
「左様です、お客様」
魔女の疑問に、メイドの中からソリスが即座に答えた。
「ご主人様には大変良くして頂いています。本来まともな食事も取れない奴隷達に一日三食、それも貴族並みのご馳走を提供して頂いていますし、この様なしっかりとした服も頂いています。自室もありますし、風呂も毎日入れています」
「そ、そう……奴隷にしては意外と好待遇を受けているのね」
「はい。時々ご主人様の脳が心配になるぐらいです」
「……ってまてソリス、お前今さりげなく俺の事バカにしただろ?」
「さて、何のことでしょう」
「そう言ってさり気無く目を背けるなよ!?」
二人のやり取りを傍から見ていたギースが、フッと微笑む。普段から堅い性格の彼女が珍しく冗談を口にしているのが、彼女には微笑ましく思えた。それだけ彼に気を許しているという事が見て取れた。
メイド達に食事の準備をさせている間に、六人は二階の大広間で待つ事にした。
「……うん。少しいいかしら?」
部屋に幾つも並べられた丸テーブルには全て上質な白のテーブルクロスが皺無く敷かれ、上流階級によるパーティーを想起させる。
その中の一つに座る六人の一人、真剣な顔つきで魔女がそう切り出す。
「暫くの間、私が代わりの家を見つけるまででいいから、この屋敷に泊めさせてほしいのだけど……」
「ああ、別にいいぜ?」
「そうよねやっぱり────っていいの!?」
どうやら一度断られる事を想定していたらしく、蒼汰が余りにもあっさりと許諾してしまった事に魔女は思わず立ち上がってしまっていた。
自身の咄嗟の行動に赤面しつつ座り直すと、彼をしっかりと見据えて再び話し始める。
「……コホン。私が言うのも変な話だけど、もう少し疑っても良いんじゃない?」
「いや、まぁそうだけどさ。美女に『家に泊めて』なんて言われて断る理由がねーじゃん?」
「正しくジゴロですねお兄さん……」
口説き文句に近いそれを恥ずかしげも無く言い切る蒼汰に呆れ声を出すクラリス。まだ片思いすら未経験の少女に女癖の悪さを指摘されるとは、大人として恥ずかしくは無いのだろうか。
「そ、そう……でも、私もタダで泊めさせて貰おうとは思って無いわ。
代わりと言っては何だけど、貴方の手伝いをさせて頂戴」
「俺の手伝い?」
「そう、手伝い。あぁ、でもメイドの真似事は流石にプライドが許さないわ……どうしましょう、何かないかしら?」
「い、いや……客人に仕事をさせるのもどうかと思うんだけど?」
「ふふっ、どうしてそこで真面目になるのかしら……本当、変な人ね」
「それでも何かしらの仕事はさせて貰うけど」と、意外と頑固な態度を取る魔女に苦笑いを浮かべる蒼汰は、客人である彼女の願いを叶えるべく思案する。彼としても、何かしらの手伝いを買って出てくれている彼女の意思を尊重したいのだ。
「あんな事があった後なのに、強いんだな」
「これでも女だもの。流すべき涙は全部あの場で流してきたから……大丈夫よ」
「そっか…………あっ、一つだけあ──────」
「失礼します。夕食が出来ましたので運ばせて貰います」
魔女の言葉に微笑みつつも何かないかと考えている中、微かに浮かんで来たそれを伝えようとする彼だったが、間が悪いことに大広間の扉が開け放たれる音とソリスの声に掻き消されてしまう。
「……タイミング悪いわー」
「はい?」
「いや、別に何でもない。それより話は後にして先にご飯にしようぜ?」
蒼汰がそう言って視線を向けると、魔女はこくりと頷きフードを外した。食事の時はフードは外すらしい。
チラリとソリスの方を見る魔女は、彼女が特に何の反応も示していない事に一安心したらしく、視線を料理の方へと逸らしていた。
「ご主人様、二つほど報告がございます」
他のメイド達が両手に皿を持ち運ぶ中、同じ様に持っていた皿をテーブルに置いたソリスが蒼汰の傍へと寄り、進言する。
「一つ目ですが、ご主人様が屋敷を出た後で二度程侵入者が現れました。撃退してギルド協会の方へと引き渡しに行きましたが、それで宜しかったでしょうか?」
「ああ、ありがとう。ってか二回も来たのかよ……」
「二つ目ですが、ギルドに立ち寄った際、ギース様を探している様でしたので私が代わりに伝言を預かっています。ギース様個人に向けての話では無いので、ここで言っても構いませんでしょうか?」
「ああ。いいぞ」
「かしこまりました。伝言は『明日の昼、主人を連れてギルド協会を訪れてほしい』との事です」
「主人って……まぁ、この格好では仕方ないな」
目の前にいるソリスより露出の高いメイド服に視線を落とし、溜息を吐くギース。
「分かった、なら明日俺とギースで行くか」
「ああ。恐らく今日引き渡した侵入者の件なのだろう。そんなに手間のかかる話ではないと思うぞ」
「なら心配ないか。よし、ご飯にしよう!!」
先程から視界を遮る湯気に目を奪われつつあった蒼汰は、そう言って乱雑に話を打ち切ると食事の音頭を取る。
「じゃ、頂きますっ」「「「頂きますっ」」」「頂くのじゃっ」
「え、え? い、いた……何?」
料理を前にして自分以外の全員が手を合わせ、素知らぬ単語を発する。その事に目を見開く魔女は蒼汰に説明を求めた。
「俺の、というか俺達のルールなんだ。食事の前の礼儀みたいなもんかな」
「そうなの、初めて聞く文化ね……なら私も、えーっと……頂きます、だったかしら?」
ぎこちない動きで両手を胸の辺りで合わせ、見よう見まねでそう口にする魔女。少し照れ臭そうな彼女に見惚れそうになる蒼汰だったが、何処からともなく感じる冷たい視線を受け正気に戻る。いや、元より正気なのだが。
新たな居候を迎え入れる事になった蒼汰達の楽しげな声が大広間に響きながら、夜は更けていくのだった。
魔女を居候として迎える事になった所で、二章前半が終了です。
……どうです、長いでしょう?
次辺りからはまた、新しい展開に変わっていきます
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