29.身軽さが大事、ですっ♪
※ここで言うのも何ですが……なろうコン、一次落ちました……(^-^;
まぁ、まだまだ頑張れという意味だと思ってます……頑張りますm(__)m
「ド三流……そんな風に罵られるとは、余程早死にしたいようだね」
「まさか。流石の俺もそんなバカじゃねぇよ」
ギースの持つ無限収納ポーチからファンシーなランチャー砲を取り出す蒼汰は、それを担ぎ二人に指示を出す。
「エリンとギースはここら一帯に居る人間を全員倒してくれ……間違っても殺すなよ?」
「分かってるさ」「はいっ♪」
いつの間にか出していた細剣を両手に握りしめるエリンと不壊剣を構えるギース。両者のスペック差は歴然としているものの、元衛兵隊長である彼女がその場に居る者達に後れを取る事は無い。その事を分かっての指示である。
と、蒼汰達のやりとりを聞いていた男が唐突に笑いだした。
「はははっ、何だ。あれだけ威勢のいい事を言っておいて、君はまるで戦おうとしないじゃないか、ええ?
君は闘志が燃えてないのかな?」
明らかに蒼汰の動揺を狙った物言いに、残った魔術師達がそれに合わせ高笑いする。その事にムッとするエリンだったが、当の本人は全く動じる事無く、寧ろ不敵な笑みを浮かべ返していた。
「はっ、これでもこいつらの主人だからな。俺が相手するのは────あのガラクタだよ」
「……へぇ? 面白い事を言う」
巨大な鋼人形を指差してそう宣言する蒼汰に、取り巻きがざわつく中で男だけが興味深そうに目を細める。そんな中、一人の魔術師が男の傍に駆け寄り耳打ちする。
「…………」
「何、もうギルドが……仕方ない、事を急ぐか」
「どうした? 撤退の準備か?」
巨砲の胴部分をいじりながらそう挑発めいた発言をする蒼汰に、男はニヤリと口角を上げた。
「いやいや、まさか。たった今、君達の死期が早まっただけの話さ」
スッ、と右手を上げる男に気を取られている内に、彼の背後では魔術師達が高威力の魔法を放つ準備を完了させていた。その事を、蒼汰達に知られない様に念話魔法まで使って。
自身の手を下ろせば一斉に連鎖爆撃魔法が撃たれる手筈になっている、雇いの武装者達など最悪死のうが構わない。ギルドが魔導要塞を見て動き始めたという情報と共に準備の件を耳打ちされていた男は、自身の圧勝を確信していた。どれだけの強者でも、不意打ちに対応出来る者などそう居ないからだ。
「さぁ、第二幕といこうじゃないか!!」
自身に満ち溢れた表情で、男は自らの手を一気に振り下ろす。それと同時に、彼は歩を進め目を閉じて両手を広げていた。
合図の後に聞こえて来る圧殺の重爆音を全身で感じたいが故に一歩前に出た彼の耳は、その足音を嫌に大きく拾ってしまう。
「……は?」
何故足音が聞こえる、という疑問は簡単に消え去った。目の前で、爆発は起きていなかった。それどころか、彼の中では既に亡骸になっている筈の者達が姿を変えず立っていた。
「……何だ? まさか、俺達が死ぬとでも思っていたのか?」
「な、何故生きているっ!? い、いやそれより──────」
そもそも魔法が発動していない事に疑念を持った男は慌てて振り返る、がそこにいたのは倒れ伏した魔術師達。その様子からに、動く気配はまるでなかった。
「残念だけど、アンタらが何かこそこそしてるのは筒抜けだったんだわ」
焦燥で歯を食いしばる男の背後から、蒼汰の声が聞こえてくる。視線を向けると、勝ち誇った顔で彼が出迎えた。
「な、何故……」
「ま、さっきのアンタの言葉を使うなら、『念話魔法を使うのに、ちゃんと念話傍受魔法の対策をしないのは焦り過ぎじゃないか?』って所だな」
「なっ、ね、念話傍受魔法だと……!?」
念話傍受魔法。古代魔法の一種に数えられるその魔法は、通常複数の魔法を同時展開し、更に専用の魔法道具を使用しなければその内容を探れない念話魔法を容易く盗み聞ける魔法であり、現存する人類ではまず使える者がいないとされていた。
その魔法が、男の目の前に居るエリンがあっさりと使用した、そう蒼汰が述べたのだ。
「あ、有り得ない……っ!? あれはもう、この世で使えない魔法では……!?」
「それが使えるからお前らが動く前にエリンが全部倒したんだろ?
しかもご丁寧に、倒れる音まで出さない様にしてさ」
「くっ、舐めた真似を……だ、だが私にはまだ魔導要塞が残っているッ!!」
手に汗を感じつつも、男は強気な態度で魔導要塞を指差す。
確かに、魔導要塞の重撃があれば一発で状況をひっくり返せるだろう。数発で湖を蒸発させる火力であれば、古代魔法を使う相手であれ大苦戦を強いられる、男はそう考えていた。
「やれ!! ガデ──────」
「させねぇっ!! 超光粒子砲っ!!」
内心でほくそ笑むだけで感情を押しとどめた男はその名を呼び、灼眼を光らせようとする。しかしそれより早く、蒼汰の持つバズーカ砲の砲口が巨躯を捉え、引き金が引かれていた。
「……ん? 何も起きないではないかッ!!
はははっ、どうやら不発に──────え?」
砲口から何も発射されない事を嘲笑う男だったが、すぐさまその異常に気が付いた。何処からともなく表れた黒雲が魔導要塞の上空で渦巻いていたのだ。
「……こ、これはっ!?」
そう、丁度一ヶ月ほど前に全世界を震撼させた、あの光柱の前触れが目の前で起きていた。その事に気が付いた男は頭の中でその事実を何度となく否定するも、本能がそれから目を離せないでいた。
直後、目を覆いたくなる光量を放つ光柱が魔導要塞目掛けて降り注がれ始めた。音も無く、何かを削り取る訳でもなく、ただ包み込むようにして降り注がれるそれは対象の目の光を奪い、灼熱に染まる眼球を何の変哲もない石塊に変えてしまう。
少しして光が止まると、魔導要塞は本体ごと音を立てて崩壊してしまった。
「……そ、そん、な……がはっ……」
目の前の男が天災に近いそれを引き起こした事より、一縷の望みであった戦力を容易く失った事によるショックで膝から崩れ落ちる男の首筋に、ギースの容赦ない手刀が叩き込まれる。そして襟首をつかみ上げ、エリンが纏めていた魔術師達の所へと放り投げる。
「おととい来やがれってんだ!!」
「……ただ引き金引いただけでそこまで威張れるのは、ある意味才能だな……」
意気揚々と勝利の武器を掲げる蒼汰に毒づくギースは、纏められた男と魔術師達に手を翳すエリンに視線を向けた。
「エリン、何をしているんだ?」
「この人達の記憶をちょちょいっと弄ってるんですっ。私達に倒されたって供述でもされたら、旦那様の事がバレてしまうかもしれませんからっ♪
……あっ、さっきの近接戦闘員の方は済ませていますよっ?」
「……暗殺者か何かの気分だ……」
事後処理まで完璧にこなすエリンに頭痛すら感じそうな気分に追いやられるギース。そもそもこの二人にツッコミを入れようとするのが間違いなのだが、それでも相手をする辺りは彼女も随分と手慣れたものである。
と、まだ燃えていない茂みの方から二つの影が飛び出してきた。
「お兄さん、お疲れ様ですっ」「お疲れじゃの」
「おう。二人共怪我はないか?」
身体能力的に戦闘に参加出来ず身を隠していたクラリスとシュラに気を掛ける蒼汰。外見的にも大した怪我は無さそうで、実際大丈夫だと二人からの言質も取れた彼はほっと一息つく。
「旦那様っ、そろそろ撤退しないと国から人が来そうですっ」
「あっ、マジか。なら急がないとな」
事後処理を終えたエリンの言葉に、蒼汰は未だ状況に追いつけずポカンとしている魔女に声を掛ける。
「アンタはどうする?」
「どう、って……?」
「このままだとこの騒ぎにギルドの職員が駆けつけてくるだろうから、ここに居れば面倒事になるのは確実だ。だからと言って、帰る家はもう無いだろ?」
「っ……そ、それは……」
非情な物言いだが、滞在可能時間が差し迫っている彼に優しさを向ける余裕は持てなかった。他の四人もその事は分かっていた為、口を挟むことなく二人のやり取りを見守る。
帰る家は無く、守る物も無くなってしまった魔女は彼の質問に答える事が出来ず、俯いてしまう。だからこそ、彼が手を差し伸べてくれた事に大きく目を見開いてしまう。
「どこにも行く場所がないなら、取り敢えずうちに来いよ。まずはそれからだ、な?」
「えっ……え、いえ、でも……」
「あ~もうまどろっこしいなっ!!」
「えっ────きゃっ!?」
何を、と尋ねるよりも早く杖を持たない方の手を引っ張られた魔女は、その力に逆らう間もなく走り出してしまう。そうしなければ転んでしまうからだ。
前を走る四人を、自身の手を引っ張り追いかける彼が今どんな表情をしているか、魔女には見えなければ分かる筈もない。だが、それでも不思議と引っ張られる事に嫌な感情は沸き上がって来なかった。
さて、そろそろ二章前半パートが終わりになるかと思います。
……長いですねぇ(笑)
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良かったら、慰めとかくれて良いんですよ?笑




