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26.ご対面?、ですっ♪

この前素敵なレビューを頂けました(^-^)

さらに総合PV10万も超え、もう何と言っていいのやら……

これからも今作品を宜しくお願いしますっm(__)m








 ツーベル国北部に広がる森林地帯、通称”深緑の森”。野生のモンスターや動物に繁茂する植物、手に入る天然資源等のそのどれもが他の森林地帯と比べて圧倒的に多いその場所に、蒼汰達五人は足を踏み入れていた。




「す、凄いです……!!」


「ははっ、あんまりはしゃぐと危ないぞクラリス様」




 小鳥達の(さえず)る中を悠々と歩き、どの方向にも広がる大自然を堪能する五人。クラリスとギースの二人が先頭を行き、蒼汰と彼を挟むように並ぶエリンとシュラがその後に続いていた。




「そう言えばギース、あの侵入者たちってどうなった?」


「ああ、何でも全員から真実を吐かせるのには今日一日掛かるらしいから、明日職員が報告に行くのを待っていて欲しいらしい」


「そっか、それなら安心か。流石に毎日侵入者の相手するのは面倒だからな」


「旦那様っ、言って下されば私がすぐに片付けて来ますよっ?」


「いやぁ、エリンが行ったらドジって殺戮現場になってしまいそうだからなぁ」


「だ、大丈夫ですっ……多分」


「……怪しいのぅ」




 などと他愛も無い話をしながら森の中を進んで行く五人。道中何度か野生モンスターに襲撃されたが、誰かが声を上げるのとほぼ同時にエリンが悉く瞬殺していた為、途中から誰も声を上げなくなってしまっていた。ここまで来ると寧ろ、彼女に遭遇するモンスターが可哀想に思えてしまう程である。

 数十分程草木を掻き分け進むと、今までの森の光景とはガラリと表情を変えた、翳りに包まれた森が姿を現す。




「……多分、ここら辺が境界なんだろうな。襲われるかどうかの」


「そろそろ心していきましょうか……」


「ですね……」


「取り敢えずエリンと俺を先頭に、殿(しんがり)をギースに変えよう」




 どんよりとした地に足を踏み入れる前に、五人は手早く隊列を組み直す。確実に来る急襲からクラリスやシュラを守る為にギースが考えた布陣である。

 自身のスキルで両手に細剣を構えるエリンに続き、無限収納ポーチから不壊剣を取り出すギース。彼女自身武器の生成は出来るのだが、『壊れない』剣という破格の能力に魅了されたらしく、ここの所それを用いて鍛錬している光景がよくトレーニングルームで目撃されていた。




「おし、じゃあ気合い入れて魔女様に会いに行くかっ」




 今日一番の笑顔で蒼汰がそう声に出す。世間一般で畏怖を抱かれる魔女に会いに行く者の態度には全く思えないが、それを後ろから見ていたギース達三人は気付いていた。彼の右腕が太腿辺りでキュッと固く握り締められているのを。

 幾ら特殊な状況下に居る者だからと言って、根本はただのか弱い人間だという事を再確認した三人が頬を緩ませる。まさか自分の背後で和やかな雰囲気が生まれているなどとは露も思っていない蒼汰は、隣で優しく微笑んでいるエリンを連れ、暗がりへと一歩、強い足取りで踏み込んだ。




「……もう少し進まないと来ないか?」


「みたいですね──────待って下さいっ!!」


「えっ!?」




 二歩、三歩と安全を確認しながら進む蒼汰の隣で、滅多に聞く事の無い大声が響き上がる。と同時に、彼の行く手を阻むように細剣を持った右手が差し出される。

 振り向く彼の視線の先では、進路の先を鋭い目つきで睨み付けるエリンがいた。




「旦那様、この先から何かが来ますっ!!」


「分かった。三人共、十分に注意してくれっ!!」


「はいっ」「はっ」「うむっ」




 エリンの様子から異常(イレギュラー)な事が起きているのを感じ取った蒼汰は、背後の三人に的確な指示を送る。

 彼女の事を一番近くで見て来た蒼汰ですら、この様な姿を見た事が無かった。その為、今から起こる事に拭いきれない不安が生まれる。




「……来ますっ!!」


「────、タチサレェ」


「「「「……なっ!?」」」」




 気を張り詰めたエリンの声に一層力の入る四人。だが、森の奥から姿を現した異形(・・)を前にはその些末な努力など風前の灯火に等しかった。

 見る者を圧倒する強靭な白骨を覗かせる、畏怖を形質化した様な黒衣を纏い、それとは対照的に様々な色合いの宝石の指輪を付けた手で、こちらもまた純金で出来た豪華絢爛な杖を握る。剥き出しの頭頂には、橙赤色の宝飾品を付けた黄金に輝く冠を乗せている。




「わ、ワイトキング……」




 誰かが、そんな事を呟いた。

 ワイトキング。この世界のアンデット系モンスターにおいて最上位に君臨するSランクモンスターであり、大魔法使いの成れの果ての姿と言われるその力は、同じく最上位の冒険者複数人の力と互角とも言われている。

 凶悪な番人の登場に、嘗て”真血”として恐れられたシュラですら喉を鳴らし、冷や汗をかく。だが、そんな中で唯一彼女だけは違っていた。




「……姿を現して下さい。強力な偽装魔法を使っているみたいですけど、私には効きませんっ」


「「「「えっ!?」」」」




 エリンがそう強く断言した事に、四人の驚声が重なった。まるで凡人である蒼汰は仕方が無いとしても、魔法に才のあるクラリス達三人でさえも、そこで揺らめく不死の王(ワイトキング)が偽装された者などと思わなかった。考えもしなかったのだ。

 余りの急展開続きに何が正しいのか見失いそうになる蒼汰に、更に不可解(・・・)が襲い掛かる。




”……凄いわね。今まで一度も看破された事なんて無いのに”


「「「「!?」」」」




 女性の声だった。それも、五人の脳に直接語り掛けて来た。




”……よく見ると、面白い組み合わせね。人間に純血エルフ、妖精に魔族までいるじゃない”


「……そろそろ姿を現しても良いんじゃないですか?」


”そうね、貴女にはどんな魔法も効かなさそうだし、何より私に用があるみたいだものね”




 不気味な脳内音声には驚きもせず淡々と降伏宣言を下すエリン。それを声の主が拍子抜けする程あっさりと受け入れると、今の今まで行動を起こさなかったワイトキングの身体が崩れ始める。

 少しして、身に纏っていた物も含め全てが黒塵と化したワイトキングの居た場所に、黒ローブとフードで身体の全てを覆い隠した何者かが立っていた。不気味そのものである。




「……貴女が、北の魔女さんですかっ?」


「ええ、そう呼ばれているわ。可愛らしい妖精さん?」


「かっ、かわ……」


「素直過ぎるだろエリン……」


「まぁ何でもいいわ。取り敢えず害意は無いと見て良いのかしら?」


「あぁ。アンタの素顔を見に来ただけだしな」


「……変なの。それじゃあ場所を変えましょう、いつまでもこんな所に居るのもアレだからね」


「えっ……あっちょっ待てって!!」




 自分ペースで話を打ち切る魔女がくるりと身を翻し森の奥へと駆けて行く。それに慌ててついて行く五人は彼女を見失わない様に注意を払いつつ、距離を詰めたり離したりのいたちごっこが繰り返される。

 暫く森の中を駆け続け、真っ先に蒼汰の体力が底を尽きそうになる丁度その頃、魔女の動きが緩まり始め、そして駆けるのを止め歩き始めた。




「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


「だ、大丈夫ですか旦那様っ?」


「はぁっ……あ、あぁ……はぁっ……」


「……ちょっと走った程度で疲れるって、貴方それでも人間?」


「す、好きに言ってろ……はぁっ……はぁっ……」


「ったく……ほら、シャキッとしなさい。もう少し歩いたら私の家があるから、そこまで我慢なさい?」


「くっ、ま、まだあるのか……はぁっ……」


「旦那様っ、良かったら私がおんぶしますよっ?」


「それは断じてダメだゴホガハッ!?」


「旦那様ぁ!?」


「騒がしいわね……貴女の所いつもこうなの?」


「いや、これでも大人しい方だぞ?」


「そ、そう……苦労するわね」


「そうでもないぞ? ああ見えてアオ……主人は案外優しいからな。限界ギリギリまで攻めたエッチな悪戯をする程度だし」


「……ほらもうすぐよ。今のは聞かなかった事にするわ」




 その後も五人の何て事の無い日常的な会話を聞かされどんどん幻滅していく魔女。しかしそれもすぐに解放される事になる。




「「「「「おぉ……」」」」」


「コホン、あれが私の家よ」




 木々の間を抜けたその先では、見切れる程広がる翡翠色の湖面とその対岸に構える小洒落たログハウス、それを取り囲むようにして鮮やかに咲くカラフルな花の絨毯。

 正しく幻想的(ファンタジー)な光景を前に、五人は言葉を失うしかなかった。



この魔女、魔女なのに常識人なのでは……?

※魔女=非常識ではありません



面白いと思ったらブクマ、感想等よろしくお願いします(^-^)

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