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15.ちょっとしたダンジョン改革、ですっ♪

※お陰様で総合評価500ptを突破しましたっ!!

これからも今作品を宜しくお願いしますm(__)m








「旦那様っ♪ 資料を貰って来ましたよっ♪」


「おう、ありがとな」




 物凄く上機嫌な口振りで駆け寄って来るエリンから資料の束を受け取ると、蒼汰はそれに目を通す前に短く嘆いた。




「ったく、エリンもえげつない事するよな……」

「だな……」「ですね……」


「?」




 彼の言葉に同意を見せるギースとクラリスに首を傾げるエリンだったが、彼女は、いや自分の事だからこそ気付かないのだろう。尊敬を超えた畏怖に身を震わせるサリーシャ相手に一方的な恐喝まがいの問答を繰り返し、全ての話し合いを終わらせ、「漸く帰れる」と歓喜したサリーシャに向けて「ふふっ、今度はもっとじっくりとお話したいですねっ」などという追い打ちを食らわせた事が、どれだけ彼女の心を蝕んだのかを。


 絶対体験したくない光景をモニター越しに見せられ、げっそりとしてしまった蒼汰達だが、エリンが持ち帰って来た資料を基に話を進める事にした。




「で、結局やる事ってダンジョンの改造だよな?」


「はいっ。どうやらセルスト国にギルド協会を設立すると同時に、その内部で四大ギルド機関を設立するらしいんですっ」




 四大ギルド機関とは商業ギルド、農業ギルド、鍛冶ギルド、そして冒険者ギルドである。実際これら以外にもギルド機関は数多く存在するのだが、その殆ど全てが四大ギルド機関の傘下に収まっている。

 それらが蒼汰の持つダンジョンの傍のセルスト国に新たに建設される為、それに合わせダンジョンの方も強化、増設して貰いたい、というのがサリーシャが今回訪れた主な目的だった。


 彼女の持ちかけて来た相談は、蒼汰にとっても悪い話では無かった。冒険者ギルドが出来る、というのはつまり自身のダンジョンに訪れる冒険者の数が増えるという事。これはダンジョンのモンスターが狩られる数が増えるという事に繋がり、最終的に蒼汰が翌月頭に獲得するCPが増えるという事である。




「ま、俺ダンジョンマスターだしな。やらない訳にはいかないだろ」


「はいっ♪ ところで……」




 蒼汰の横の、元々自分が座っていた席に腰を下ろしたエリンは目の前にある三台のモニター(・・・・・・・)に視線を向ける。




「コレ、凄い便利ですねっ!!」


「だろっ? いや~、苦労して作った甲斐があったよ~」




 そう、今回何より大活躍しているのはエリンではなく、この三台のモニターなのである。中央のモニターにはダンジョン内の様子が四分割でモニタリングされており、左では訪れた者の簡略なプロフィールを各階毎に一覧として表示され、右ではダンジョンの3D図が表示されていた。


 三台全てがタッチパネル搭載の最新鋭のモニターであり、更に副次的能力として特定の人物をダンジョン内に転移させる機能まで備わっていた。これが、蒼汰とシスが二人にしか通じない話の全容であり、有り余るCPを大量投下した対象である。




「しかもだぞ? こんな使い方まで出来るんだ」




 そう言って蒼汰はデスクの端に付けられた赤、黄、緑の三色のスイッチの中の緑をオンにした。するとデスク中央、三台のモニターに囲まれていた部分が開き、中からスタンド型マイクが姿を見せる。

 それが何なのか他の三人には当然理解出来なかったので、彼が実演する事になった。




「三人共ルームの外に一度出てみてくれ」




 彼の言葉に従い、エリン達は素直に司令室を後にする。外の通路には誰の姿も無く、ある物と言えば天井の照明のみだった。




「……一体、何をするつもりなんでしょう?」


「さぁな……危険な事では無いとは思うんだが……」


「私も、あれは初めて見ました……」




 蒼汰に対しての信頼はあるものの、やはり未知の物に対する不安は拭いきれないらしく、三人の表情はどこかぎこちないものになっていた。そんな時、不意を突くように声が響いて来た。




”あ~、マイクテスッ。マイクテスッ。これが聞こえたらエリン達は戻って来てくれ。他の皆は別に何もしなくていいから”


「「「えぇっ!?」」」




 それは、間違いなく彼の声だった。しかし周囲に彼の姿は無く、司令室の扉はしっかり閉ざされている。

 慌てて司令室に駆け込む三人は、そこで先程と変わらずに座っている蒼汰を目撃し更に驚愕してしまう。




「だ、旦那様っ!!」


「おっ、その様子だとちゃんと使えたみたいだな。

やっぱりこの世界に無い物だとエリンもそんな感じになるんだな」


「お兄さん、それは一体……?」


「これはマイクって言ってな、そうだな……これに向けて話し掛けると、別の場所で話した内容が聞けるようになるんだ」


「なるほど……限定的な念話魔法のような物なのか。しかも魔力無しで行えるとは……アオタ殿はよくこの様な画期的な物を知ってたな?」


「知ってるも何も、俺のいた世界だとけっこう色んな所にあるぞ?」


「なっ……」




 彼にしては当然の事であっても、ここは別世界。マイクなどという超先進的技術を前にギースは言葉を失ってしまう。

 三人の反応に満足した蒼汰は資料を片手に、モニターと同化しつつあったシスに話しかける。




「シス、取り敢えずダンジョンの増設から進めていこう。

今六階層まで作ってたから、一気に十一階層まで増設してくれ。幾らかかる?」


『はい。増設だけですと19,850,000CPです』


「……マジで?」


『マジです。因みに十階層を増設するだけで10,250,000CP必要になります』


「oh……」




 画面に提示された莫大な数字の羅列に思わず外国人バリのリアクションを見せてしまう蒼汰。ダンジョン階層を増やすのは”10,000と、元ある階層分累乗した2に10,000を掛けた値の合計”だけCPが必要になる為、階層が増えれば増える程必要なCPが倍々になっていくのは自明の理。

 まだCPには余裕があるものの、思わぬ痛手に泣く泣く支払いを終えた蒼汰は内装をまとめて行っていく。と言ってもやる事は方形ドーナツ型に整えていくだけなので、大した手間にならない。費用は五階層分全てまとめて1,250,000CPとなった。

 そして最後はモンスターの配置である。




「よし、次はモンスターだな。種類を増やしてほしいって言うのも相談にあったけど、五階層毎に変えていけばいいだろ。

シス、おススメのモンスターとかない?」


『そうですね。スライムやスケルトンがよろしいかと』


「スライムかぁ、懐かしいな。確か魔法じゃないと有効打にならないんだっけ?」


『その通りです。五階層を超えるぐらいの実力になれば魔法の一つ二つ使える筈ですので、丁度よろしいかと』


「なるほど、その案でいこう。それでスライムを六階層から十階層まで各階に十匹ずつ配置したとして、毎月幾ら必要だ?」


『はい、毎月1,000,000CPの支払いとなります』


「……高いなぁ。ってか、各フロア200匹のスライム倒されないと赤字になるのか。けっこう厳しい?」


『それは分かりかねますが、セルスト国に新設されるギルド協会の働きによりますね。結局の所、冒険者が来なければ赤字どころの話ではありませんから』


「そうだよなぁ……やっぱダンジョン経営って難しい……」




 ただ気ままに経営しているだけではいつかCPも底を尽き、維持費すら払えなくなる。

 経営の厳しさを目の当たりにしガックリ肩を落とす蒼汰だったが、そこに吉報が告げられる。




『マスター、たった今一件のメールが届きました。どうやら達成報酬のメールの様です』


「マジ? 早速開けてくれっ!!」


『かしこまりました。読み上げます。

————”ダンジョン十階層到達記念特典として、10,000,000CPとSR以上確定ガチャ券三枚、そしてアップグレードカードをプレゼント!! 受け取りますか————はい/いいえ”』


「……アップグレードカード?」




 初めて聞く言葉に、蒼汰は聞き返した。




『はい。消耗品以外の物の能力を向上させるアイテムです。かなり貴重なアイテムで、ガチャからも排出されません』


「限定アイテムって事か。使い道はゆっくり考えるとして、SR以上確定ガチャ券は……」




 そこまで言い終え、ガチャの亡者になりつつある三人の方に振り返る蒼汰。すると案の定、三人の目は先程と比べ異様なまでに鋭く光っていた。




「銀以上確定ですか……ふふっ……」

「こ、これなら私でもレアを引き当てられる……」

「ピーちゃんとクーちゃんのお友達を……」


「……はぁ、こうなるか」


『では、受け取りますね』


「ああ、頼むわ……よしっ」




 薄々こうなる事は予測出来ていた蒼汰は盲目的な三人から顔をシスに向け、受領の指示を出す。その直後何を思い付いたのか、未だ出しっぱなしだったスタンドマイクのスイッチを入れ、それに向け話し始めた。




”あー、全員、大至急トレーニングルームに集まるようにー”




もし百階層まで作る事を検討すると2の100乗を計算しなければならない……天文学的過ぎませんかねぇ?(^-^;



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