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13.出来る事と出来ない事、ですっ♪

投稿遅れてすいません( ̄▽ ̄;)

テスト期間という名の地獄に呑まれているので、また当分の間遅くなるかと思いますがご了承くださいm(_ _)m


何でしたら励ましの言葉なんて頂ければ……嘘です、あなたの記憶からデリート☆彡.。










「……って事は、最低限のマナーは身についたけど知識的な面が足りない、と?」


「ああ。そればかりは私では対応しきれないからな」




 ある日の午前中の事。ソファに軽く腰掛ける蒼汰の向かい側でギースは深くため息をつくと、ちゃぶ台の上に置かれた数枚の資料を手に核心を突く一言を口にする。




「……こんな事を私が言える立場では無いのだが、未来ある子達の為に言わせて貰いたい。何とか勉学の機会を設けることは出来ないだろうか?」




 ギースのその嘆願は、蒼汰も何度か考えていたものだった。

 幾らギースによってメイドとしての立ち回りや礼儀を学んだとしても、その知識はあくまでも彼に仕える為のモノであって、外の世界で暮らしていく為の常識的な知識としては不十分。しかし更に悪い事に、森精人(エルフ)の常識面の教育は基本的には親が子に伝える為、奴隷となってしまった子供達は十分に教育が施されていない状態なのである。

 彼女から渡された資料に目を通す蒼汰。それは奴隷を購入した際に発行される個人名簿であり、奴隷の個人情報が事細かに記されている。その枚数にして五枚、それが十分に教育の届いていない奴隷の数だった。




「ラザンにメリーヌ、シィエル、ノルイア、それとニーナか……」




 目に映る名前を口ずさみながら打開策を思索していると、ふとある事を思い出す。




「そう言えばこの前、ラザンの為に図書室を作ってたよな?」


「ああ、中々快適な空間が出来上がっていたな。それがどうかしたのか?」


「いや、その時に色々本を買い込んだだろ? その中には勉強になりそうなのは無いのか?」


「あるにはあるが、モンスターの図鑑や薬草書、伝記が殆どでな。魔法道具(マジックアイテム)や魔法書、物品の値段の相場等の、生活で必要な書物は全くと言っていい程手に入っていないんだ」




 魔法道具や魔法に関する書物はこの世界では非常に重宝される商品であるため、その単価は最低価格でも貴金属類に相当する。商品の基本価格は主に商業系ギルドの総会で決められ、それを纏めた物品リスト等は商業系ギルドに属していないと手に入らない。故にギースは外の世界から持ち帰る事が出来なかった。




「……そう言えばオルディシア大陸、あぁセルスト国がある大陸と隣接している世界最大の大陸なんだがな、そこにある獣人国には魔法の本や学術書が安価で売られていると聞いた事がある。行った事は無いから詳しくは知らないがな」


「でもここから隣の大陸って……」


「あぁ。凶悪なアルバニアス海峡を越えなければならない。更に越えられたとしても、そこから目的の場所までは恐らく歩いて十数日掛かる。どう考えても買いに行くのは現実的ではない」


「そうだよなぁ……」




 幾らCP供給が安定したとはいえ、ダンジョン内では決して手に入らない物も数多く存在する。意外な事にそう言ったものが生活を豊かにする事を、蒼汰はシスやキルから聞かされていた。その為彼女の憂いには同情を禁じ得なかった。

 と、そんな沈みそうな気分を吹き飛ばすかのように、満面の笑みでエリンが入って来る。




「旦那様っ♪ 準備が出来ましたよっ♪」


「おっ、流石だな。ならさっさと向かおうか」


「ん? 一体何の話をしているんだ?」


「まっ、それは行ってからのお楽しみってことで」


「?」



















────────────────────────






 三人が向かったのはルームの外、世界樹の根本だった。




「……ん? 何だ、皆招集されていたのか?」




 外にはクラリスと奴隷達が全員集合しており、各々が近しい者と雑談を交わしていた。そんな彼ら彼女らは蒼汰の顔を見た途端口を閉じ、一列に並んでいた。




「お兄さん、これをどうぞ」


「ん、ありがと」




 一人駆け寄ってきたクラリスからシスを受け取ると、蒼汰はそれを開き皆に向けて声を発した。




「じゃあ早速”ルンルン畑作り”を開催したいと思います!!

はいイエーイッ!!」


「イエーイッ、ですっ♪」


「「「「「い、いえーい」」」」」


「またか……」

「またですね……」




 事ある毎にハイテンションで進行させる蒼汰に呆れる二人と違い、奴隷達はそのノリに合わせて声を出していた。一体彼は何の宗教を目指しているのだろうか。




「さて、作業にかかる前に一つ皆に質問がある。

この中で作物を育てた事のある人は手を挙げてくれないか?」




 蒼汰のその質問に応じたのは、ギースを含めてもたった三名のみだった。




「……ありがとう、手を下ろしてくれ。

つまりだ。ここにいる殆どの人が畑仕事について詳しくないという事だ」


「「「「「…………」」」」」


「だけど安心して欲しい。言い出しっぺの俺だって農業を全く知らないっ!!

何なら畑というモノを直接見た事が人生で二回しかないっ!!」


「「「「「ええっ!?」」」」」


「だから畑作業に関してはド素人だけど、そこはエリンやシスに力を借りながらやっていこうと思う。

まず手始めに、皆も不思議に思っていただろうその溝に注目してくれ」




 そう言って彼が指差したのは森の奥深くへと伸びる、全方位に広がる大草原を横断する小川程の幅の溝だった。今朝彼の頼みでエリンが魔法を駆使し、浮遊島に近い形状を取るこの外の、世界樹の根元から端まで溝を掘ったのである。因みに所要時間は十数分もかかっておらず、正に人間の成せる業ではなかった。




「ギース、頼んでたものは持ってきたか?」


「ああ。一体何に使うのかさっぱり見当もつかないが、持ってきたぞ」




 訝しげな表情を浮かべながらもギースは自身のミニスカートのポケットから黄金に輝く聖杯を取り出す。外側から見てもそんな物が入っている気配は無かったが、これは彼女自身の付与魔法の一つで、対象の収納容量を一定時間増やしていた効果によるものである。

 彼女からそれを受け取った彼は溝の方まで歩いて行くと、溝の先端部分にそれを埋め込み始めた。




「……これで良し、っと。エリン、この中にちょっとでいいから水入れてくれないか?」


「分かりましたっ────”小さき玉の水(ラ・オーロ)”」




 エリンが短く詠唱すると、聖杯の上にスーパーボール程の大きさの水が出現しフヨフヨ浮かんでいた。それが重力に逆らいつつゆっくりと杯の中へと揺れ落ちていき、その器に触れるか触れないかの境目辺りで突然形を崩し、聖杯の器内部に水面を形成した。




「さて、説明通りなら水が溢れると思うんだけど……おおっ?」




 蒼汰が驚きの声を出したのと同時に、奴隷達の方でもざわめきが湧き立っていた。全員の視線は、水が入った途端に仄かな光を放ち始めた聖杯に向けられていた。

 光自体は数秒足らずで収まったが、その直後水面が波打ち始め、そして────




「うおっ、マジで湧き始めてる!!」

「やりましたね、旦那様っ♪」

「……これは凄いとしか言えないな」

「夢を見ているみたいです……」




 率直な感想が漏れ出てしまっていた四人のその言葉通り、聖杯からはとめどなく水が溢れ出て来ていた。

 湧き出る大量の水は溝に沿って森の方へ流れていく、が流れが速いからか、溝の底の土を少しづつ削り運んでいた。いわゆる浸食・運搬作用である。




「良かった、上手い事川が出来たな」


「ですねっ。溝の深さも丁度良かったみたいですっ♪」


「さ、じゃあ話の続きに戻ろう。

今から皆にはこの周辺の草原を平地に変える作業をして貰う。方法は簡単、ひたすら草刈りだっ!!」




 彼のその勢いある宣言の後、十九名による草刈りが開始した。

 草刈り、と言っても鎌は一つも無いため、全員が根っこから引き抜くという力技で事を進めるしかなかった。成人組はともかく、子供達にそんな力があるとは思えなかった蒼汰だったが、そんな彼の予想はあっさりと裏切られ、皆着実に草を収穫していた。

 本来、エルフの身体能力は常人の倍近くある為、蒼汰の筋力が子供と同等なのは致し方ない事なのだが、誰も気付かない内に彼の心はどんどん痛めつけられていた。

 そうして約一名にとっては辛い現実を見せ付けられる草刈りは二~三十分程で終わり、約半ヘクタール程の広大な平地が姿を露にする。




「さ、じゃあ次は地面を耕す、んだっけな。

ここはちょっとズルいけど……エリン、いけるか?」


「分かりましたっ────”大地の怒り(グラ・デラロッサ)”」




 奴隷達全員をエリンの背後へと誘導し終えたそのタイミングで、平地の方へと翳していた彼女の手から七層の魔法陣が狙いを定めていた。

 彼女が魔法を呟いた刹那、その場に居た全員が目撃したのは地面から這い出る(おびただ)しい数の蔦。地面を強く打ち付けながら這いまわるその姿は、獲物が見つからず怒り狂う蛇のそれを想起させる。

 暫くして全ての蔦が地面に戻っていくと、残された地面は所々穴が開いているものの、掘り返され這いずられた事もあり柔らかな土が表に上がっていた。




「流石エリン、恐ろしい魔法を使うな……」


「ふふっ、これは古代魔法の一つで、今は恐らく私しか使えませんっ♪

因みに、今のは限界まで力を抑えて使いましたよっ?」


「ドチートにも程があるだろ……」




 目の前で見せられた超弩級の魔法が現状自身の固有魔法になりつつある事を楽しそうに話すエリンに、蒼汰は最早溜息をつく以外の行動を取れなかった。

 しかし、一々驚いていては話が進まないと、彼は視線をざわついていた奴隷達の方へと向け最後の仕上げを口にし始める。




「よし、じゃあ最後に今から苗を渡していくから、それをあの地面に植えていってくれ。等間隔になる様にと、苗同士は少し離して植えるように注意してくれ」


「「「「「は、はいっ」」」」」




 戸惑いは残っていたものの、返事をした奴隷達は蒼汰の前へと列を作っていった。

 シスに購入させた苗を一人ずつ手渡していき、それを植えさせに行く。一見すれば楽しい作業に思えるかもしれないが、しかしこの時彼は気付いていなかった。横約五十メートル、縦約百メートルにもなるこの広大な土地に、数十センチ幅で苗を植えれば、一体一人何千本の苗をうえなければならないかを……




 この作業が終わる頃には全員泥まみれ、時間的にも草刈りの何倍もの時間を要し、これをきっかけに蒼汰は「絶対にもっと供給者(労働仲間)を増やしてやる……」と夜な夜な呟くのだった。





総合アクセス数5万突破いたしましたm(_ _)m

これからも今作品をよろしくお願いします(*^^*)


面白いと思ったらブクマ、感想よろしくお願いしますd('∀'*)

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