11.結末は……ですっ♪
少し投稿間隔開いてしまってすいません(^-^;
課題提出に追われているので少し投稿ペースが緩くなるかもしれませんがお許しを……
そ、その間に感想とか励ましの言葉とかくれてもいいんだよっ?|д゜)
※おかげさまで累計ユニーク数が一万人を突破しましたっ!!
これからも今作品を宜しくお願い致しますm(__)m
『……これが最終問題です』
「「「「っ……」」」」
乾いた空気の中に響き渡る無機質な音声。それに合わせ何十人もの喉が鳴ってしまう。
「いよいよ、か……」
「ですねっ……」
「ですね……」
「だな……」
ボタンに手を添え、真剣な眼差しで司会者を見つめる四人。そこから見えるひな壇には同じ様に真剣な眼差しを向ける者、手を組み天へと祈る者、更には緊張の余り隣の者と手を握り合っている者までいた。
開始から凡そ二時間程経過したクイズ大会は、蒼汰の予想を遥かに上回る大盛況だった。初めこそ命令と報酬を建て前にしていた奴隷達も少なくは無かったが、今では全員が一体となり最後のその一瞬を見守るまでになっていた。
十九問が終わり、現在教卓に立っているのは蒼汰、エリン、クラリス、ギースの四人である。因みにギースは第一問目の失態以来、今の今まで出番が回って来なかった。彼女のいたチームは鬼の形相で、膝を折ってまで頼み込んだ結果である。
『この一問で全てが終わります。皆様、準備はよろしいですか?』
「「ああ」」「「はい」っ」
手に汗を滲ませる四人の首が縦に振られたのを確認した司会は、全員にはっきり聞こえる音量で、最後の問題を読み上げ始めた。
『最終問題は少し趣向を変えてみたいと思います。今から皆様には私が思い浮かべている単語を当てて頂きます。質問は一人三回まで、”はい”か”いいえ”で答えられるものなら何でも構いません。解答権は一人一度までとさせて頂きます。質問の際は「質問する」と発言する様にお願い致します。
では……質問をどうぞ』
シスが提案したのは、心理的戦略の問われる”言葉当てゲーム”だった。決められた質問回数で無数にある単語の一つを導かなければならず、だが質問するという事は敵に情報を与える事と同義であり、更に解答はたった一度のみという、中々に難易度の高いクイズゲームである。
流石に迂闊な行動を取れないと分かっているのか、開始の合図がなってもすぐに質問の嵐、とはならなかった。こんな中で先陣を切れるのは、余程の自信家か脳筋だけだろう。
「……では、私から質問させて貰おう」
『ギース様ですね、どうぞ』
「それは生き物か?」
『そうですね、殆どは”はい”です』
「「「殆ど……」」」
ギースの質問から返って来た答えの曖昧さに、他の三人は思わず顔を顰めてしまう。それが意味するのは一体何なのか、その例外を無視しても良いのか。
何にせよまだ一つしか情報を得ていない以上、どれだけ思考を重ねても無駄だろう。三人は有限な質問の内容をどうするか思索する中、一度質問をした彼女だけは違った。
「では二つ目の質問をしようか」
「……早くね?」
「いやいやアオタ殿、質問しなければ何も分からないではないか」
「……あー」
妙に納得した面持ちの蒼汰の目には、眩しい程に純粋な、それでいて自分の六倍近い人生を全うしている女性が映っていた。”他人がどれだけ的を得た質問をしてくれるか”が重要だという事に気付けない彼女は、三人のカモになっている事にすら気付けないだろう。本当にご愁傷様である。
『ギース様。二回目の質問をどうぞ』
「ああ。それは見えるか?」
『基本的には”いいえ”です』
「「「基本的……」」」
またまた意味深な返答は、他の三人の口から同時に反復された。しかし先程より幾程かは考える余地がある。
雲の様な情報を元に必死に候補を練り上げていく三人。そしてやはり、彼女に”思考”の二文字は存在しなかった。
「シス殿、三つ目の質問だ。それは触れるか?」
『基本的には”はい”です』
「「「基本的……」」」
何度も濁らされる返答に、三人の頭は必死に回転していた。
殆どが生き物であり、基本的には見えず、基本的には触れる。文字を並べてみると明らかに架空の生物が出来上がってしまいそうだが、流石にそれではゲームが成り立たない。それこそ「俺の知ってる○○って言う生き物はそうなんだよ」などと言って、幾らでも捏造出来るだろう。
与えられた三つの情報に苦しめられる蒼汰達だったが、ボタンの押された音が鳴り響いた。
「なっ……!?」「「えっ……!?」」
『……本当によろしいのですか?』
もうお気付きだろう。そう、彼女が、ギースが得意げな表情でボタンを押していたのだ。
「ふっふっふ、寧ろどうしてこんな簡単な問題を皆解けないでいるんだ?」
「……お前マジで言ってんの?」
「そうですよっ? ギースちゃんが思考力で私や旦那様に勝てる訳無いじゃないですかっ」
「な、何で答えが分かっただけでここまで貶されなければならないのだ……」
『ギース様、そろそろ答えを良いですか?』
「わ、分かった……」
散々な罵倒を食らい怪訝な表情を浮かべるギースは、シスに催促されそちらに首を向ける。因みにこの時既に彼女のチームのメンバーは敗北を悟り天を仰いでいたのだが、彼女は気付けない。
「ふっ、聞いて驚くが良い。
答えはな……"幽霊"だっ!!」
『不正解です』
「…………ふっ」
「あ、ギースが立ったまま気絶した……」
「何だか、ここまで行くと可哀想ですねっ……」
「見てて痛々しいです……」
本当の本当に自身の解答が正解だと疑わなかったのだろう。確かにそれでは不正解の時の反動は昇天する勢いに違いない。
「不正解」の言葉を耳にした瞬間、目を閉じ天井に顔を向けたギースは、文字通りただの棒へと成り変わってしまった。その光景に三人は嘲笑を通り越して同情すら感じてしまう。
『これでギース様は解答権を失いましたので、黄チームは失格となります。
……では、再開します。質問がある方は声を出して下さい』
前で淡々と状況を整理される中、三人は何を質問するか、答えになりうるヒントは何なのかを思索していく。そんな中、やはり彼女の思考力は群を抜いていた。
「……あっ、答えわかりましたっ!!」
「「「「なっ!?」」」」
ピンポーンと高らかに音が鳴ると同時に、エリンがそう口走ったのだ。これには全員(昇天中の一名除く)が驚愕の声を上げざるを得なかった。
「え、エリン……マジで?」
「はいっ♪ 恐らくこれが正解だと思いますっ♪」
「そ、そんな……」
『エリン様、それでは解答をどうぞ』
ひな壇の方の雑音が大きくなる中、エリンは更にそれを大きくするような返答をした。
「えっと、その前に一つ質問いいですかっ?」
『……いいでしょう。認めます。但し、質問の直後ですぐに解答して頂きます』
「はいっ♪ ……それは似た意味の単語が沢山ありますかっ?」
『はい』
「……ああっ!? そういう事か!!」
エリンの質問は、一番的を得たものだった。故に知力的な面では彼女に劣る蒼汰でさえも、こうしてその問の答えに気が付く事が出来たのだ……もう遅いが。
『ではエリン様、答えをどうぞ』
「はいっ。答えは……"自分"ですっ♪」
『……』
「……えっと、どうなんでしょうか……?」
『……おめでとうございます。正解です』
「え、や、やったっ!!?」
少し間を空けられてから告げられた"正解"。それは、エリンを幼子の様に飛び跳ねさせるには十分過ぎた。
「やりましたよっ、皆さんっ!!」
「「「「はいっ!!」」」」
嬉々とした雰囲気の彼女がその勢いでひな壇へと手を振ると、同じ赤チームのメンバー達がそれに合わせて手を振り返してくる。
その光景を傍から眺めていた蒼汰は、気付けば笑みを零していた。
(良かった。思いの外ちゃんと馴染めてるみたいだな)
「旦那様っ、私のチームの優勝ですっ♪」
「おう、おめでとう。でも最後の問題良く分かったな?」
「ギースちゃんの質問に対する解答が曖昧だったのと、やっぱり決定打は私の質問ですねっ」
「はぁ……もし、もしだけどあの質問の回答が『いいえ』だったらどうするつもりだったんだ?」
「えっ、そ、それは……そ、その時次第ですっ」
(あー、これ考えてなかったな……)
笑顔を引き攣らせるエリンを見て、彼女の無鉄砲さに蒼汰もまた苦笑いを浮かべた。しかし、おっちょこちょいな所が彼女の短所であり長所であると薄々感じ始めている彼からすれば、それもまた彼女の可愛らしさの一部に映る。
「ま、とにかくおめでとうさん。
……シス、最後の締めよろしく」
『かしこまりました。
……では、エリン様の正解により、今回のクイズ大会は赤チームの優勝となります。優勝したチーム、そして健闘した他のチームを称しまして、皆様で拍手を送り合いたいと思います』
放送が終わると蒼汰を中心とした四人がまず拍手をし、それはひな壇にいた十五名へと伝播し、そしてトレーニングルームには鳴り止まない大喝采が響き渡っていった。
こうして、唐突に開催されたクイズ大会は盛り上がりを見せ、赤チームの優勝にて無事に終幕したのだった。
面白いと思ったらブクマ、感想等お待ちしております(>_<)




