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10.全力を賭して、ですっ♪

☆☆☆再掲☆☆☆

明日、1月21日(日)にインテックス大阪で開催される「こみっく★トレジャー31」に、作者のFALSEも参加させて頂きますm(__)m

場所は4号館のオ19b、とある大学のサークルブースにて販売されている短編小説集に一作品を掲載させて頂いています。また、私が売り子もしています。


もし来場されるのでしたら、一度足を運んで頂ければ幸いです(^-^)

そして……「FALSEさん(Fさんでも可)のなろう作品を見て来ました」何て言って頂ければその時は全身全霊でお相手させて頂きますっ!!(笑)



宣伝は以上です(笑) では本編をどうぞ(^-^)








『”────じゃから、外の世界ともある程度繋がりを持っているとダンジョン経営としては上手くいきやすいぞ。ダンジョンマスターとバレない様にするのは必須じゃがな。”

……返信は以上です』


「おっけ。”分かりました、わざわざありがとうございます”って返信しておいて?」


『かしこまりました──送信完了しました』




 人と人ならざる者の会話が終わると、辺りは急激な静けさを取り戻した。事実、蒼汰とシスのこの二名以外にLDKルームには人の姿が一人として見受けられなかった。

 異常事態が発生したのだろうか……それは否である。その答えを示すべく、ソファで寛ぐ蒼汰が口を開いた。




「あぁシス。ギースの訓練は順調か?」


『はい。ギース様の指示に従い、奴隷皆が懸命に取り組んでいます。しかし、やはり本職のメイドに教えを乞う方が効率は良いかと思います』


「そりゃそうだけどさ、キルさんの言葉を借りるならそういう繋がりが無いんだから仕方ないじゃん。今は礼儀とかそう言うのをしっかり覚えて貰えれば十分じゃない?」


『現状では最善だと思われます。ですが、大局的に考えるとやはり本職のメイドに教えを乞う状況が望ましいです』


「ま、それはいずれって事で――――」


「旦那様~っ」




 話が丁度終わりの見えた辺りで部屋の扉が開かれると同時に、エリンの元気な声が彼の耳まで到達する。その隣にはクラリスも随伴していた様だ。




「お、お兄さんっ。洗濯室が凄かったですっ!!

何かこう、ブワ~ッて出て来て、それで、それでっ!!」


「落ち着けってクラリス。アレだろ? 乾燥室の事だろ?」




 昨日のCPの乱獲に合わせ、蒼汰は生活に必要な設備を幾つか増設していた。その一つが少女の口にしていた”洗濯室”である。

 以前までは浴室前の更衣室にある簡易式洗濯・乾燥機を各自が使っていたが、奴隷達が増えた事により洗濯物が多く出るようになった。そこに着目した蒼汰は”洗濯室”を設営する事で奴隷達に選択の仕事を与える事に成功していた。エリンとクラリスは完成したそれを見物に行っていたのだ。




「旦那様っ、私もアレに感動しましたっ!!

何だかこう、異世界に来ている感じがしましたっ!!」


「まぁ、確かに使ってる技術とかはこっちの世界に無さそうなものだもんな」


「それに丁寧な操作マニュアルまで置いてあったので、奴隷達もすぐに使い方に慣れると思いますっ」


「そっか、なら問題無さそうだな」


「それでお兄さんっ今日は何をして遊びますかっ?」




 蒼汰に駆け寄るなり早口でそう尋ねるクラリス。ここ数日は毎日の様に彼と遊んでいる為、最近ではこうして子供らしい一面を見せる機会が増えて来ていた。傍から見て微笑ましい光景である。

 少女の言葉を受け蒼汰は一瞬だけ掛け時計に視線を向ける。そして一つ、この人数でやりたかった事を口にした。




「そうだな、今日は皆の親睦を深める為にゲームでもしようか」




















────────────────────────





「という事で第一回ワクワクッ?親睦会を開催しま~すっ!!!!

はいイエ~イっ!!!!」


「イエ~イっ、ですっ♪」

「……もう少し落ち着いて出来ないんですか」

「全くだ……」


「「「「「…………」」」」」




 昼食を済ませた後、蒼汰の声掛けによって全員がトレーニングルームに掻き集められていた。昨日こそ巨大テーブルや二段ベッドが多く見受けられたその場所だが、今となってはがらんどうとしていた。昨夜遅くに蒼汰が奴隷達の私室、そして食事処を一気に増設した結果である。

 唐突に始まった蒼汰の開催宣言に、奴隷達は例外なく全員が唖然としてしまっていた。喜ばしい事ではないがそれに慣れてしまっていたギースとクラリスでさえも、まるで頭痛の種だと言わんばかりに頭に手を当てていた。寧ろこの状況下で一人ノリを合わせられるエリンの精神力に賞賛の言葉を送りたい程である。




「あ、あのギース様……これは一体……?」




 背後から自らを呼ぶ声にギースが振り返ると、そこには奴隷メイド達の中で最年長のソリスが困惑の表情を浮かべ立っていた。その様子に、ギースは思わず吹き出してしまう。




「え、えっと……何か変でしたでしょうか?」


「ふふっ……あぁいや、悪い。ソリスのその顔が以前の自分と重なってつい、な」


「は、はぁ……と言いますと、以前もこういった事を?」


「ああ。と言っても前回のは中々酷い内容だったがな。

……いや、別に悪い事が起きる訳では無い筈だからそこまで心配する事は無いと思うぞ?」


「そ、そうですか……」




 二回に渡り行われた以前の会議を思い出し顔を引き攣らせた自分を見て皿に怯えそうになっていたソリスを宥めると、ギースは諭す様に言葉を掛けた。




「ま、あのテンションには慣れないだろうがこれだけは覚えておくと良い。

お前、いや、お前達の主人のアオタ殿は変わった奴だが優しい、という事を」


「……はい」




 まだ完全に信じ切れてはいないのか、ギースの言葉に短く返事をするソリスに微笑するギース。身も心も彼に救われている彼女からすれば、ソリスにも、他の奴隷達にも、彼の優しさを知って貰いたいというのが本心なのである。

 だがしかし。彼女の意識は完全にその事を忘れていた──今がまだ彼の独壇場(お話し中)だという事を。




「……おいギース」


「ぅひゃいっ!? ど、どうしたのだアオタ殿っ?」


「お前、俺が今から説明始めようって時に喋り倒すとはいい度胸じゃねーか。

何だ? まだそのメイドコスから布面積狭くしたいのか?」


「ち、違うっ!? わ、私はただアオタ殿が如何に優しいかをだな」


「言い訳無用ッ!! シス、あいつのメイドコスのスカート丈を半分にしてやれっ!!」


『……はぁ。かしこまりました』


「は、はぁっ!? 幾らアオタ殿でもそんな事は────えっ……きゃぁっ!?」




 蒼汰の言葉などただの戯言だと思っていたギースのスカート丈は、シスの返事と共に膝上丈から腿上丈にまで縮んでしまっていた。

 急激な足元の温度差に視線を落としたギースは、露わになった自分の太腿を見て少女のような悲鳴を上げてしまう。そして目にも留まらぬ速度で、腰巻程度しかないスカートの前後を両手で押さえつけると蒼汰を涙目で睨みつけた。




「ぜ、前言撤回だこの鬼畜外道がっ!?」


「はっはっは、幾ら喚いてもスカートは伸びないぞ?」


「……良いから早く始めましょうよ」




 この場においては騒ぐこの二人よりも精神的に大人であるクラリスが、溜息と冷ややかな目線をプレゼントしていた。

 「エッチなお兄さんは嫌いですっ!!」とでも言うかと思われたが、どうやら蒼汰が下心なくギースをからかっているだけだと分かっている様だ。

 少女の言葉が耳に届いたらしく、未だに睨まれるギースから視線を外した蒼汰は続きを話し始めた。




「えっと、どこかの駄メイドが聞いてなかったっぽいから、また一から話すぞ?」


「くっ…………」


「今からここにいる十九人でくじ引きをして、四チームに分かれて貰う。そしてチーム対抗の早抜けクイズ大会をやろうと思う。

ルールは簡単、もう皆も何度か見てるとは思うがシス……魔法道具(マジックアイテム)のようなこれが質問を出すから、チームで解答者一人を決め、四人が早押しで解答する。見事正解できたら正解者席に座って、一番早く全員が正解者席に座れたチームの優勝。

ここまでで質問ある人は?」


「「「「「…………」」」」」


「……居なさそうかな。

よし。じゃあシス早速例のあのセットを用意してくれ」


『かしこまりました』




 直後、トレーニングルームの一角に椅子の並べられたチームカラーの四色が縦縞となっているひな壇が、そこから少し離れた所に教卓の様な物が五つ出現した。しかしこれしきの事では誰も驚きはしない。実際は、皆驚く事を放棄したのだ。

 同時に蒼汰の手元には、割り箸のような木の棒が十九本立てて入れられた缶が出現していた。それを一人一人順番に引いていき、赤、青、黄、緑の四チームへと分かれていく。どうやら蒼汰、エリン、クラリス、ギースは全員別のチームへと散ったらしい。




「さ、皆チームに分かれたみたいだな」




 各チーム毎に教卓に集まったのを確認した蒼汰は、四つの教卓を一目で見れる位置にある教卓にシスを置くと、全員の注目を集めるよう声を出した。




「えー、ここからはシスにゲームの説明を引き継いで貰うから、みんなしっかりと聞くように。

あぁそれと────」




 自分のチームの教卓へと戻っていく道中で、蒼汰は十八人をドーピングした(・・・・・・・)




「優勝したチームのメンバーには、ご褒美として叶えられる範囲で願い事を一つ叶えてやるから頑張れよ?」


「「「「「っ………!!」」」」」




 蒼汰のその一言に、奴隷達の目の色が一斉に変わった。奴隷達だけではない、エリン達までもが猛獣と化していた。

 やる気と狂気の狭間にいるチームメンバー達の元へ苦笑いしつつ戻ると、シスが音を発し始めた。




『それでは続きを説明させて貰います。

まず、私出した問題に答える際、教卓の上にあるボタンを一番最初に押した者から順に解答権が得られます』




 各教卓の上に置かれた四つのボタンは、今朝のガチャで蒼汰が引き当てたレア度Rのアイテムである。




・クイズ用ボタン五個セット,

説明:某クイズ番組にて”応募した視聴者全員にプレゼント!!”というサービスで余りに余ってしまった物の詰め合わせ。押せば軽妙な音が鳴るだけで特に何も起きない、レア度Rのネタアイテム。




『問題に答えた方の解答の正誤はこちらで判断させて貰います。贔屓目無しの判断をしますのでご安心を。

正解と判断されました方はあちらのひな壇の椅子にお掛けになって下さい。座る場所は、自チームの色の席であればどこでも可です。問題中における解答は一人三回まで。また、問題が終わる毎に解答者を交代する事も可です。

最後に、マスターのいる青チームは四人の為、誰か一人が二問答える様にして下さい。

……説明が長くなりました。それでは第一問目に行きたいと思います、解答者以外は教卓から距離をお取り下さい』




 説明が終わると、各チーム輪になって相談を始める。記念すべき第一問は正解出来るかで今後の士気に影響し易いと分かっているからか、どのチームも解答者を選出するのに時間が掛かっていた。

 そうして各チーム一人だけを教卓に残し、他の者は後ろへと下がった。




「……っていきなりギースかよ」


「ああ。こういう勝負事はまず私から先陣を切ってやらねばな」


「…………」


「な、何なんだそのジト目は……?」




 何が言いたい、と聞き返そうとしたギースだったが、運悪くそのタイミングでシスが音を発し始めていた。




『では第一問目にまいります。

問題:押しても引いても開かない頑丈なドアがあります。どうすれば開く事が────』


「貰ったぁ!!」


「「「「「っ!?」」」」」




 誰が予期出来ただろう、知恵を使う"クイズ"においてまさかギースが誰よりも早く解答をしようなど。

 雄々しく叫びながら力一杯にボタンを押すギースにその場の全員が目を丸くしてしまっていた。だが、彼女は期待を裏切らなかった(・・・・・・・・・・)




「ふっふっふっ、まさか問題がここまで単純だとは思ってもいなかったよ。少々私達を甘く見ているのでは無いか?」


『ではギース様、解答をどうぞ』


「あぁ。答えは……"全力でこじ開ける"だ!!」


「「「「「…………」」」」」




 自信満々に、前フリまでしっかりと口にしたギースのその解答に、今度はその場の全員が凍り付いた。掛ける言葉を見失ってしまったのだ。




『…………』


「ははっ、どうした? 余りにも完璧すぎる解答に言葉が出ないか?」


「……シス、もういい。判決(正誤)を言ってやれ」


『ギース様』


「ん?」


『不正解です』


「んなぁっ!?」




 突き放されるように言い放たれた"不正解"に、ギースは崩れる様にして教卓から姿を消した。




「よくもまぁ、自信満々にそんな解答を言えたもんだな」


「うっ……」


「ダメですよ、旦那様っ?

ギースちゃんはほんのちょ〜っと、幼児よりおつむが弱いだけなんですからっ」


「ひ、酷くないか!?」


「そうですよ。分かっている事をわざわざ言うのは可哀想ですよ、お兄さん」


「あ、あんまりだぁぁぁぁっ!?」




 蒼汰達からの散々な貶しやチームメンバーの冷ややかな目線を一身に受け、地に這い蹲っていたギースは悲痛な叫びを上げるしか出来なかった。

 この後、エリン率いる赤チームのトップバッターである、奴隷ボーイ達の中で最年少のラザンが「よ、横に引く」と正解した事で第一問目は無事に終了したのだった。







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