1.いきなりピンチ?ですっ♪
新章一話目からサブタイトルが不吉?
そんな事はありません、ではどうぞ(^-^)
「これで……おしまいですっ!!」
「なっ!? ま、待ってくれクラリス様っ!!」
「ふふっ、抵抗しないでくだ、さいっ!!」
「うあぁっ!?」
「……楽しそうだなお前ら……」
キッチンに隣接するテーブルを挟み和気藹々とした様子を見せるクラリスとギースに、ソファでPCとにらめっこをしていた蒼汰は軽くため息を吐く。二人が今しがた行っていたのは少女がガチャから手に入れたアイテムのトランプ、言う所の”ババ抜き”である。
「お兄さんっ!! 私また勝ちました!! これで五連勝です!!」
「……ギース、お前弱すぎじゃね?」
「なっ、ち、違うぞアオタ殿っ!?
これは、その……そう! 偶々運が悪かっただけなのだ!!」
「いい加減諦めろって……」
「だ、だったらアオタ殿も一勝負しようではないか!!」
「あー……悪い、今はパス」
「そ、そうかそれは残念だ……何かあったのか?」
歯切れの悪い返答に引っかかりを覚えたギースがそう口にすると、蒼汰は苦虫を嚙み潰したような表情で彼女のその問いに返した。
「ああ……ピンチなんだよ」
「ピンチ?」
「CP……使い過ぎたかなぁ……」
肩を落とす彼の前、PCの画面には
『残りCP:834,750、本日末に支払う維持CP:175,000』
という、ダンジョンマスターになった者にしか分からない表記が並んでいた。
『マスター、やはりあの司令室に拘り過ぎたのでは』
「……うん、分かってる。今になって痛い程分かってるよ……」
「だ、旦那様っ!? また魂が抜けそうになってますよ!?」
シスにぐうの音も出ない程の正論をぶつけられ更に凹む蒼汰。そこへ昼食を作り終えたエリンがエプロンを外しながら駆け付けてくる。
「どうかしたんですか?」
「ああ……ちょっとCPを無駄に使い過ぎたみたいでな……」
「これは……確かに、マズいですね」
「なぁシス、まずこの月末のCPの事について教えてくれないか?」
『かしこまりました。
まず、ダンジョン経営を始めた日に関わらず、毎月末になるとダンジョン、マスタールームその他の一斉清算が行われます。この日の日付が変わる直前に、維持費を全額支払う事となります』
最も現実的な事を考えれば、水道代、光熱費、ガス代等々考えていく必要がありそうなのだが、意外な事にそれらは全て維持費に含まれていない。つまり水道水は好きなだけ使え、電気もどれだけつけっぱなしでも問題ない、という事である。
「って事は、もし足りなくてもその日の内に何とかしてCPを集めればいい訳か」
『その通りです、マスター』
「……でも、さ。CPって毎日の供給以外だと何で稼げばいいの?」
『はい。一番稼ぎが出るのは、月初めに支払われるダンジョン討伐数ボーナスです』
「討伐数ボーナス?」
『はい。例えば今マスターがダンジョンに配置しているゴブリンですが、エリアPOP数一体につき維持費が5,000CP必要です。このゴブリンが一体倒される度にボーナスとして維持費の0.5%、今の例ですと25CPが月初めに支払われます』
「おぉ……って事は、毎月最低でも200体以上倒されないと赤字になるのか」
『そう言う事です。しかしこれは月初めに支払われる為、月末の維持費の支払いには間に合わない可能性があります。他の手段としてはダンジョンマスター専用のガチャアイテム、”CP変換機”が手軽で手っ取り早いかと』
「でもそれガチャ産だろ? 絶対出ねぇよ……」
『それ以外となりますと、稀に送られてくる達成ボーナスに期待するしかありません』
「あー、あの運営から送られて来てそうなメールの事か。
……待てよ? って事はその日稼ぎする手段って殆ど無いじゃん!?」
『はい。ですので無駄遣いは禁物です。
それと、維持費が払えなかった物は強制停止させられますのでご注意を』
「マジかよ……」
「旦那様、食費もCPで補っているのですから、やはり節約した事に越した事はないのでは?」
「うっ……そうだよなぁ」
エリンからの追撃を受けとうとう陥落してしまった蒼汰は、逃げるように全てをシスに丸投げしてしまう。
「何とかしてよ~!! シスえも~ん!!」
『嫌です』
「って酷くね!? そこはノリに乗ってくれない!?」
『冗談です、多分。
節約、という意味でしたら自給自足をしてみてはいかがでしょう』
「多分って……まぁいいや。それより自給自足って言うと?」
『簡単な話です。マスター自ら畑で野菜を作ればいいのです。そうすれば食費は少なからず浮きます』
「あ~なるほど」
『そして何より、ルーム内で暇を持て余すが故にCPを浪費してしまう訳ですから、その時間を屋外の活動へと充てる事で浪費を防ぐ事が可能かと』
「おぉ……何だかここまで自分の事を見透かされてると怖いな……」
『ただ、種はCPで購入出来ますが鍬や如雨露は購入出来ません。その為現時点でマスターが農作をするのは厳しいと思われます』
「……結局ダメじゃん。ま、近いうちに農作出来たらいいなってぐらいの気持ちで居ればいいか」
「その時は私もお手伝いしますっ♪」
「ああ。私も何か手伝える事があるだろう、遠慮なく頼ってくれ」
「わ、私も何か手伝えることがあるなら手伝いたいです」
「ああ。その時は皆でやろう」
彼の言葉を聞き、女性陣がそれぞれ協力する旨を口にする。それに表情を緩ませた蒼汰はまた一つ目標を掲げながら、四月最後の一日を悠然と過ごすのだった。
どうやったら数千万ものCPを湯水のように使えるのか、寧ろ気になる……(^-^;
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