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31.制裁っ、ですっ♪

 お陰様で総合ユニーク数が5000を突破しました。

これからも、今作品をよろしくお願いしますm(_ _)m





「い、いきなり何を……」




 明らかに動揺の色を見せるロイは、あくまでも蒼汰の言う言葉に身に覚えが無いといった態度を取る。しかし、その偽装を暴くのはまたしても蒼汰だった。




「証拠、と言うよりは動機ならちゃんとあるんだぞ?」


「……言ってみて下さいよ」


「アンネ・ラーリュサス」


「っ!! ど、どうしてその名前をっ!?」


「あ、貴方それは一体誰なの?」




 蒼汰が誰かしらの名前を口にした途端、ロイの様子が激変した。額には大粒の脂汗が滲み出始め、よく見れば何かに怯える様に身体も少し震えていた。

 取り乱す彼に息を呑むアリシアは、そんな状況を造り出した蒼汰に問い詰める様に疑問をぶつける。




「アンネ・ラーリュサス。ロイの姉だよ」


「……姉。た、確かに性が一致しているものね。でも、どうしてその名前が今出て来るの?」


「……そっか、やっぱりアンタも国王様も知らないみたいだな」


「っ……!!」


「どういう意味、かしら?」




 目の前の青年が一体何を言いたいのか汲み取れないアリシアは、そのままを言葉にする。何やらまた別の反応をロイが見せていたが、それに触れる事無く蒼汰は、ただただ壮絶な悲劇を語り始めた。





「アンネ・ラーリュサスには婚約者がいたんだ。それも、人間(・・)の」


「な……」


「や、やめろ……」


「彼女にはお腹に子供も宿っていた、まず間違いなくハーフエルフが生まれてくるのは分かっていた。そんな矢先、新国王が就任し、あの悲劇の国外追放が一斉に行われ始めた」


「や、やめてくれ……」


「当然婚約者は追い出され、アンネ・ラーリュサスは国内に残る事になる。でも、婚約者は抵抗したんだ。俺もここに残るか彼女を連れて出て行く、って具合でな。

そして────反発した婚約者の人間は斬首刑に処され、晒し首にされた」


「そ、それは……」


「お願いだ……やめてくれ……」


「自分の生きる世界から愛する者を奪われたアンネ・ラーリュサスは、全てに絶望した。国民を守るべき立場の国に婚約者を殺された、しかもその国に監禁の如く縛り付けられてしまう」


「やめろ……やめるんだ……」



「そしてアンネ・ラーリュサスは───身籠ってた子供と一緒に自殺した」



「やめろよぉぉぉっ!!!?!?」




 悲痛な叫びが、王宮内まで響き渡った。それによって青年の言う動機が見えたアリシアは震える声を抑え込み、頭を抱える彼に向けて言葉を突き立てた。




「ロイ。貴方まさかバシクスに復讐する事が目的で───」


「ああそうだよ!!

姉さんの婚約者を、姉さんの幸せを、姉さんの子供を、姉さんの命さえも奪った国王が憎くて憎くて仕方が無かった!! それを分かった上で止めなかった王妃が憎かった!!

だけど、復讐するには何もかもが足りなかった……っ!!」


「それでクラリスを誘拐した様に見せかけ、障害となるギースを誘き出して排除し、国王に近付ける二重スパイ、アリシアの私兵隊長になった訳か」


「そうだよ、そうして漸くここまで来たって言うのにっ!!

お前が、お前が余計な事をするからっ!!」


「っ!!」




 ありったけの怒りを吐き出したロイは感情の趣くままに腰に差さった鞘から剣を引き抜き、蒼汰目掛けて一直線に駆けだした。




「死ねぇぇぇぇぇっ!!!!!!」


「お、お兄さんっ!!」


(や、やばっ……!!)




 たとえギースを恐れる程の戦闘力の低さだとは言え、私兵として生活をしていた者の動きにただの一般人がついて行ける訳も無い。反応の遅れた蒼汰は、荒れ狂う彼に斬り伏せられるのをカンマ秒単位で待つしかなかった。

 だが────吹き飛んだのはロイだった。




「ガハァッ!?」


「……っ、えっ?」


「ぴ、ピーちゃんっ!?」




 来るはずの激痛が一向に来ない事に異変を感じた蒼汰は、斬られるという恐怖から目を背ける様に閉じていた瞼をゆっくりと隙間程度に開けた。すると、彼の視界には一匹の水色の鳥が悠々と地面に降り立つ瞬間が映り込んだ。




「も、もしかして……ピーちゃんがカウンタースキルで……?」


「ピィィィィィッ!!」




 普段は丸まって動こうとしない為にその全貌を見る事の無かったエトワルフィロントバード、通称ピーちゃんは甲高く鳴き声をあげると、元居たヤタガラスの羽の中に潜り込んでいく。そうして呆気なく危機を乗り越えてしまった蒼汰は、素っ気無いピーちゃんに本音を漏らしてしまう。




「……仕事するだけして帰っていくとか、どこの仕事人スタイルだよ……」


「ピーちゃん……」




 つい先程まで自分の命が脅かされていた事など忘れてしまいそうになる程の衝撃を見せられた蒼汰達は、考えても仕方がない事からは目を逸らし、カウンタースキルによって吹き飛んで行ったロイの方へと目を向けた。




「……………」


「あー、完全に伸びてるな」


「で、ですね」




 アリシアの脇で目を回して地面に倒れていたロイに率直な感想を口にした蒼汰は、クラリスとヤタガラスを連れ彼の元へと近寄っていく。




「全く……恐ろしい目に逢ったもんだ。こりゃ何か身を守る手段を用意するべきだったな」


「い、今何が起きたの……?

ロイが斬りかかったと思ったら急に吹き飛んで、そしたら貴方の前にエトワルフィロントバードが現れて……訳が分からない」


「アリシア、そいつの処分は任せるわ」


「えっ、あ、ええ分かったわ……」




 キョトンとするアリシアに事の始末を任せると、蒼汰は隣に立つ少女に声を掛ける。




「クラリス。取り敢えず事件の真相は暴いたし、そろそろ例のアレ、やっちゃおうか?」


「あっはい! 私結構楽しみだったんですっ!」


「だよな! じゃあ早速、っと」


「な、何を言ってるの貴方達───って何なのそれ!?」




 自身の娘と会話をしていた青年のコートの内側に隠れていた腰ポーチから取り出された、白い胴を持つハンドサイズの大砲の様な物に、アリシアは仰天して声が裏返ってしまった。

 見た目だけでは一体それが何なのか想像もつかない様な物に彼女が目を奪われていると、鬼のような形相を浮かべ歩いて来るバシクスが唸り声で疑念を口から漏らす。




「……人間、その様な物を持ち出して一体何をするつもりだ。

場合によっては即座にお前を殺す事になるぞ」


「あっ国王様喋れるようになったんですね?」


「ぬかせ。あの程度、本気を出せば解除など造作も無いわ」


「その割には手こずってたみたいですけど、まぁ触れないであげましょう。

……何、これはちょっとした置き土産ですよ」


「置き土産、だと?」


「はい、事件の答え合わせも済みましたし、ここらで俺達はお暇しようかと思うので」


「……逃がすと思っているのか、この私が」


「逃げれますよ? その為に────」


「旦那様ぁ~~~っ!!!!」




 と、彼が途中まで言いかけた言葉を遮る声が彼らの耳に届けられると、王宮とは反対の方向、バシクスの背方向から手を大きく振りながら一つの影が駆け寄って来た。




「エリンお疲れ様。大丈夫だったか?」


「はいっ♪ ですよね、ギースちゃんっ?」


「はぁ、はぁ……ああ、そうだな……」




 遅れて蒼汰の元へと駆けこんで来たギースは、息を切らしつつも彼女の言葉に何とか返答する。そんな彼女を見て、一人過剰な反応を示した。




「ぎ、ギースなの!? 貴女本当に生きていたの!?」


「アリシア様……その姿、という事は全て暴かれたと言う訳か……」


「さぁさぁ感動の再会なんてそんな下らない事は置いといてっ。

もっと感動するフィナーレといこうじゃないか!!」


「イエーイッ、ですっ♪」


「「…………」」




 アリシアの言葉など聞こえていなかったのか全く空気を読まない発言をする主人に、最早溜息すら勿体ないと感じてしまうクラリスとギース。二人の冷静無情な態度すら視界に捉えない蒼汰は、バズーカ砲のトリガーに指を掛けると、アリシアとバシクスに諭し始めた。




「さて、と。今回の件とは別に俺、アンタ達には個人的にメチャクチャ怒ってるんだわ」


「ふんっ。人間如きが私に怒りを向けるなど烏滸(おこ)がましいにも程があるぞ」


「……とかいうアホ国王様の発言は無視して、どうして怒っていると思う?」


「なっ、貴様私を愚弄するのか……!!」


「そういう王様っぽい態度嫌いじゃないけど今はどうでもいいんで。

……アンタ達さ、どうしてもっとクラリスの事を考えてやらなかったんだ?」


「……何が言いたい」


「国王様、アンタ一体何がしたかったんだよ?


エルフが最上位の種族? ……はっ、笑わせるなよ。

 自分の奥さんが人間だった事すら見抜けない、守るべき対象である国民を殺すような指示を平気で出す、挙句の果てには自分の娘すら見て見ぬフリをする。


そんな奴がさ、最上位の種族とか名乗ってんじゃねーよ!!」


「き、貴様に何が分か」


「分かんねーよ!! 分かりたくねーよ!!

何で自分のエゴで簡単に人を、身内までを平気で不幸にする奴の気持ちなんて考えなきゃいけないんだよっ!!」


「お兄さん……」




 ギースから聞いていたクラリスの惨状、その原因を生み出した国王バシクスに向け内々に溜め込み続けていた感情を爆発させる蒼汰。そんな彼の姿に目を潤ませるクラリスは、無意識に自分の服の裾をギュッと強く握り締めていた。




「だからな……そんなクソッ垂れ野郎には俺から最っ高で最っ低な置き土産をくれてやるよっ!!

皆!! クーちゃんに乗るぞ!!」


「「「はいっ!!」」」




 蒼汰の言葉を受け、三人が一斉にヤタガラスの背中に飛び乗っていく。そして最後に飛び乗った蒼汰は、バズーカ砲を天に向け腹の底から出来る限りの大声で、爆弾を発動した(・・・・・・・)




「目標物、セルスト国王宮ことパレストアンガレス王宮!!

食らえ──────超光粒子砲(フォトン・バスター)っ!!」


「な、何をするつもり────何だあれはっ!?」


「何ッ、何なの一体ッ!?」




 蒼汰がトリガーを引いたその瞬間、特に砲口から何かが発射される事は無かったが、突如王宮のある上空辺りを中心として暗雲が発生、王宮を覆うように広がる。そしてそれらが渦巻き始めると、徐々に中心部が光り輝き始めた。




「あ、あれもしかしたら結構ヤバいんじゃ……

クラリス!! ダッシュでここから離れる様にクーちゃんに言ってくれ!!」


「は、はいっ。クーちゃん、王国の外に急いで向かって下さいっ!!」


「クゥア~」


「────なっ、き、貴様ら逃げるなど許さぬぞっ!!」




 シスの説明曰く生物には無害だと言う情報は蒼汰の中にはあった。しかし、天変地異の前触れの様な光景を前に理性ではなく本能が「あれはヤバい!!」と危険信号を送ってきたため、慌ててそう指示を出したのだ。

 そして、こういう時程嫌な予感と言うのは悉く的中してしまうものである。




 蒼汰達がヤタガラスでその場を一気に離れ、国王がそれに気が付く頃には彼の目に野球ボールサイズ程に映るまで距離を取っていた蒼汰達は、超常現象を目にしてしまう。




「うっわ……」「こ、これは……」「「えぇ……」」






─────王宮を覆い尽くす程の大きさの光の柱が、それを押し潰さんと天から白雲を掻き分け降り注いだ。







 面白いと思ったらブクマ、感想をお願いしますm(_ _)m

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