26.前日会議ですっ♪
世界樹の探索を終えた二日後の昼過ぎ、蒼汰達四人はマスタールーム、いや、『司令室』に集合していた。
「第2回セルスト国をぶっ潰そう会議〜っ!!!!
はいイエーイッ!!!!」
「イエーイ、ですっ♪」
「「…………」」
突然のハイテンションに、二回目とはいえ口をポカンと開けてしまうクラリスとギース。エリンは当然のように彼に合わせて来る。
「さて、と。今日のテーマを話す前にギース、明日は何の日か分かるか?」
「明日か? セルスト国の建国記念日だが……」
「おっ、一発で正解が出る辺りさすがギースだな」
「いやいや、何年あの国で生きてきたと思っているんだ。
それで、明日が何だって言うんだ?」
褒められた事に若干の喜びを示すものの、それを隠す様にツンとした態度を取るギースに蒼太は人差し指、中指、薬指の三本の指を立てて返答した。
「明日の建国記念日に合わせて、俺達は三つの事をする。
一つ目はギースを傷付けた四人組を引っ捕える事。
二つ目は二人の共通の仇であるアリシアを懲らしめる事。
そして三つ目なんだけど……」
「ん? 何か言い辛い事なのか?」
「いや、その、何だ。
もし余裕があったらさ、ギースにはそっちの世界のお金を取ってきて欲しいんだ」
「なぁっ……!?
そ、それは私に盗賊紛いの事をしろというのか!?」
「……あー」
確かに、元衛兵という悪を裁く立場だった者に『金を持ってこい』などと言ってしまえば、窃盗をしろと命じられた、そう捉えてしまう可能性が大きいだろう。
言い方に配慮が足りなかった。そう思った蒼太はすぐに彼女の誤解を解こうと言葉を返した。
「違う違う。そうじゃなくてギースが衛兵として勤務していた頃に稼いでいたお金がまだ残っているんじゃないかって思ったんだよ。もし本当にまだ残っているのなら、今後の為になるから持ち帰って来て欲しいって話」
「な、なるほど……済まなかった、早とちりをしてしまったらしい」
「で、どうなんだ?
実際、貯金とか残ってたりするのか?」
「一応それなりに貯えは残っている筈だ。
……誰かに漁られていなければ」
「あー、そっか。一応死んだ事になってる筈だもんな……」
「というか、そもそもの問題としてセルスト国にどうやって行くつもりだ? 私達はここから出れないのだぞ?」
「ん? ギースには言ってなかったっけ?」
「一体、何の話だ?」
「そっか。ならシス頼むわ」
『かしこまりました』
蒼太がそう声をかけると、当然の様に教卓の上に開かれているPCの画面が点滅する。
『ギース様の誤解を訂正させて頂きますと、ダンジョンの出入りに厳重な注意が必要とされるのはあくまで部外者です。ダンジョンマスター、及び供給者はその対象に含まれません』
「という事は、セルスト国へは……?」
『はい、ご想像の通り訪れる事自体は可能です』
嘗ては供給者と認められていなかった為にダンジョン外へ踏み出す事を禁じられたギースも、承認された今なら自由に行動出来る。つまり逆から辿ればダンジョンに不利益をもたらさないと判断された者が供給者になれる、という事である。
重大な話を今になって聞かされ反応に困ってしまうギースに、蒼太は続けて言葉を掛ける。
「だから明日はみんなでセルスト国に行こう。そして暴れるだけ暴れて帰ろう。
……名付けて"荒らし屋作戦"だなっ!!」
「おおーっ!! 何だか今からワクワクしてきましたねっ♪」
「「…………」」
はしゃぐ二人を前にまたしても呆然とする被害者組は、ただただ理解が追いつかなかった。
明日行うのは、ありったけの私怨で固められた復讐。憎悪や醜悪が図らずとも湧き出てしまう、残り続ける心的苦痛と一瞬の麻薬的快楽を味わうための負の時間。そんな誰も得をしないイベントを前に、どうして二人はここまで明るくいれるのか。
それを口にしたのはクラリスだった。
「……どうして二人はそこまで楽しそうにいられるんですか?」
「ん? だって、心配する事なんて何も無いし?
何かあったら、エリンが何とかしてくれるだろうから、な?」
「はいっ、旦那様の為なら何だってしますよっ♪
だって楽しそうにしている旦那様を見ているのは楽しいですからっ♪」
短期間で芽生えた信頼感。聞くだけならどうも薄っぺらく思えてしまうが、クラリスとギースの目に映り込む二人のその様子を見ていると、聞いている側の彼女達の中にもそれが発芽してしまう。それ程までに二人の言葉、意志は強かった。
固まる二人を見て顔を緩ませた蒼汰は、口角を少し上げたまま必勝法を語り始めた。
「さ、じゃあ明日の行動をみんなに伝えよう。
これ通りに動いてくれれば、100%間違いなく大成功を収める事が出来るから」
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