序曲
「ミサ、ギル!お前たちはここを頼む!俺は、魔王を討つ!」
仲間に広間の敵を任せ、俺は一人で王の間へと続く階段を走る。上から迫りくる敵を、この手に握る聖剣で薙ぎ払いながら駆けあがる。
そしてついに、旅の目的である王の間に辿り着いた。
その扉を、これ以上ないほど強く開ける。
「魔王アーミラ!お前の悪事もここまでだ!」
「来たか、勇者カムラよ」
玉座にふんぞり返った魔王アーミラ。腰に届くほど伸びた黒髪。悪魔のような赤い瞳。間違いない、聞いていた通りだ。
「お前ひとりでここまで来たのか?大したものだな」
「生まれた時から、お前を倒すために生きてきた。あの程度の敵、どうということはない」
「・・・・・それは真か?」
「当たり前だ。神からの天啓を受け、聖なる力を授かった俺が勇者となりお前を倒すのは当然のこと。人々のために、お前にはここで死んでもらう」
「天啓・・・・・。当然のこと・・・・・。人々のため・・・・・」
「可哀想な子ね・・・・・」
「何?」
「生まれながらに使命を背負わされたあなたが可哀想だと言ったのよ。私を殺したいのは、あなたの意志ではないのでしょう?」
「俺の意志さ。お前が死ねば、魔族による人々への被害もなくなる。世界の平和を望むのは、間違いなく俺の意志だ!」
「そう。なら、自分で確かめてみなさい。本当にそれがあなたの望みなら、この先の未来にあなたの幸せがある。それを確かめてみるといいわ!」
魔王は武器を捨て、両手を広げ立つ。
「何のつもりだ」
「ほら、私を殺したいのでしょう?殺して、世界の平和を手に入れたいのでしょう?」
「・・・・・後悔するなよ」
持てるすべての魔力を聖剣に込めて魔王を貫く。
魔王の口元から一筋の血が垂れ、力が抜けたように倒れこんでくる。
「この先の世で、お前がどう生きるのか。楽しみにしているわ」
こうして、俺の勇者としての魔王を倒す旅は終わった。