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第十二章 脱出(2)

 楽しんでいただけたら幸いです。

 どうにかケティに追いついた俺は、薄暗い林道をケティが持つカンテラで足元を照らしながら、慎重かつ注意深く道から足を踏み外さないように歩いていた。


 あまり人が歩いていない林道故かデコボコして歩きにくく、体力の落ちた体にはとても堪える。となるとあまり動き回る余力も時間もない。


 ここは確実に森を抜けなければ・・・・・・・、何か算段があるのかとケティに尋ねてみると。


「勿論だ。ジャンヌの家は黄昏の森の最深部にあるのと同時に、彼女の家からちょうど反対側の位置に森から脱するための出入り口が存在しているんだ。その理由は何故か分からないが・・・・・・、そのおかげで私たちは無事に脱出できるというわけなのだが」


「でもさ、確か森に入ってすぐにケティ言っていたよな? 森の出入り口は不安定でいつ出現するか分からないって」


「あぁ、確かに私はそう言った。だがジャンヌの家の周辺にある出入り口は別だ。その出入口だけは消えることなく開いている」


「なんでそんなことが分かるんだ?」


 ジャンヌ本人でもないのに、と俺はケティの言葉に疑問を抱いた。彼女の言葉には何一つ確証もなければ根拠もない。それこそこの森を創った本人しか知りえない事実である。


 なのに、なんでなんだ? 何故、そんなに自信たっぷりに断言できる?


「・・・・・・お前が疑問に思うのも仕方ない。しかし、”今”はその理由を言うわけにはいかない。虫がいいとは思うが、そんな私から言えることはただ一つだけ。私を”信じてくれ”と。ただそれだけだ」


 こちらを振り向くことなく、固い声でそう述べるケティ。


 俺はいつにないケティの様子にこれ以上何も言えなくなるが、それでもこれだけは言える。


 その結論に至ったのは、とても簡単な事だ。


 単にここ数日ほどケティという少女と過ごして来て、彼女は信用に値する人間だと、他でもないこの俺自身が判断したからだった。


「あぁ、信じるよ。だから、ここから”一緒に”脱出しよう」


「・・・・・・そうだな。一緒に帰ろう」


 俺とケティの間に難しいやり取りはいらない。共に危険を乗り越えたからこそ通じる何かがある。それは一種の絆であった。


 いや、戦友と言った方がこの場合しっくりくるか。


 そう思うと妙な高揚感が全身を駆け巡り、慣れない林道を行く足取りも軽くなるのを感じた。ルンルン気分で林道を進んでいく俺とは対照的に、俺の数歩ほど前を行くケティの足取りは重かった。


 何か気になることがあるのであろうか?


 いや、まさか。


 俺が考えたこの作戦は完璧だ。どこにも不備はないはず。


 だが”もしも”ということはあるかやもしれないし・・・・・・。ここは念のためにケティの意見を聞いておくのもいいかもしれない。それで何か改善するべき点があるのならば、その問題点を改善すればいいだけなのだから。


「なぁ、何か気になることがあるのか?」


「え? いや、はっきりとしたことは言えないんだが・・・・・・、なんていうか。上手くいきすぎているっていうか」


「? それの何が問題なんだ? 上手くいっているんなら何も問題はないじゃん」


「それがジャンヌたちの手の内かもしれない。私たちを油断させて、この闇夜に紛れて奇襲してくるやもしれない。確かにアラタの立てた作戦はいいとは思う。闇夜に紛れて移動するのは私も傭兵時代によくやった。夜になると人の目は鈍くなるからな」


「なら!!」


「だからこそジャンヌには効かない。この世界に来る前のジャンヌの職業を忘れたわけではあるまい?」


 俺はケティの言葉を聞いてハッと重大な事を思い出す。そして何でこんな重大な事を忘れていたんだと、間抜けな自分自身を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。


 そうだ、ジャンヌは、彼女は―――――――――――。


「・・・・・・ジャンヌは、騎士だったな。確か」


 そう、騎士だ。


 先ほどの高揚感がみるみるうちに冷めていくのを感じた。


 俺は何故こんな大事な事を忘れていたのだろうか? ちょっと考えれば分かることなのに。


 ならば、俺の考えた計画は既にジャンヌ陣には筒抜け状態? ということに。


 とすると、今の俺たちの動向は完璧に向こうに割れているというわけで。


 これ以上ここに留まるのは危険だ、と俺は足音を極力立てないように意識しつつ、ギリギリまで速度を上げて林道を進むことにした。


 勿論、ケティも俺に倣う。


 速度を上げたにもかかわらずケティの息は一つも上がってなかった。


 それに比べて早くも俺の方は息切れを起こしていた。ったく、体力ない自分が恨めしい。


 だが、辛いから、せこいからという理由で歩みを止まらせるわけにはいかない。


 歩みを止める=己の死に直結するからだ。


 それに、俺には時間がないのだ。二時間以内にこの森から脱出しないと。


 思い返せば時間に急かされてばかりな気がする、が。それくらいのスリルというかピンチが無いとやる気が出ないのは事実だ。


 なんていうのかな・・・・・・。言葉にするのは難しいけど、すごく生きてるって感じがするんだ。


 それがいいのかはよく分からないけど、けれど何もせずにいるよりかはマシだと、そう思うから。


 だから、俺は限界に達するまで足掻き続ける。


 俺とケティはカンテラが照らす仄かな明かりを頼りに、暗闇に包まれた枯れ葉舞う林道を無言で進んでいく。視線は真っ直ぐに、姿勢を伸ばして。


 互いに目指す場所は一点のみ。


 そこに辿り着くことだけを考えて、俺たちは歩き続ける。


 両者の無事を互いに願いながら、俺とケティは林道に敷き詰められた落ち葉を踏みしめて。


 まだ見えぬ目的地へと肩を並べて向かうのであった。


 そう、まさかそのすぐ背後から迫りつつある脅威に気づくことなく。


 

 


 ―――――――――――そして、その脅威はすぐそこに。

 何だか中途半端に終わりました(汗)

 次回から少し展開が動くと思いますので、よろしくお願いします。

 では、次回に。

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