表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/536

幕間 その頃のルーシアたち(3)

 楽しんでいただけたら幸いです。

 いつも読んで下さる読者の皆様には感謝しかありません。

 これからも皆様に楽しんでいただけるように頑張りますので、

 これからもよろしくお願いします。

 村唯一の診療所の炊事場では、幼げな容姿にはそぐわない程の知性さを兼ね備えた一人の少女が腕を組みながら「う~ん、う~ん」と唸り声を上げていた。


 少女の名はミリアといい、この診療所に医師として暮らす魔女のルーシアを手伝う助手として寝食を共に暮らしているのだ。


 普段の彼女を知る人物ならば、ここまで眉を顰めて考え込む彼女は珍しいと口を揃えるほどであろう。それほどまでに普段のミリアは頭を悩ます事象がないといえるのかもしれないが・・・・・・。


 では何をそんなに悩むことがあるのであろうか? 


 それは―――――――――――、ふたを開けてみると実にくだらない事であった。


「ふむ・・・・・・、困りましたね。ヴァレンシア様に飲ます用の上等な茶葉がない。再来週でないと商人が来ないし、どうしたものか」


 そう。


 彼女はヴァレンシアに飲ます紅茶の茶葉が品切れな事に頭を抱えているのだ。


 いつもルーシアに飲ましているのは、村唯一の食堂である”スノー・ベリー”でも使用されているごくごく普通の茶葉であるが、たまに来るお客様専用に上等な茶葉を置いていたのだが・・・・・・、茶葉が品切れているのにも気づかず、この前商人が来たにもかかわらずその茶葉を買い忘れていたのだった。


 そのことにすぐ気づけば良かったのだが・・・・・・、ここ最近は来客が来ることなど皆無に等しかったのですっかり忘れていたのだ。


 普段のミリアでは信じられないほどの初歩的なミスだった。


 このようなミスをしでかしてしまうとは、自分の主であるルーシアにも顔向けできないし、彼女にも恥をかかせてしまう。それだけは何とか避けなくては。


 けれど、ここにはいつもルーシアに飲ませている普通の茶葉しかなく・・・・・・。最早ミリアに残された道はこの茶葉をヴァレンシアに飲ますしかなかった。


 この普通の茶葉を上等茶葉の味に近づけさせようと、ミリアはいざという時の為にとっておいた瓶詰めドングリオイルを食品棚から取り出した。このドングリオイルをほんの少しだけ紅茶に垂らすと、ナッツ特有の香ばしさが紅茶にプラスされるのだ。


 この村ではドングリは貴重なたんぱく質を補うために食されている木の実であり、ミリアもドングリなどのナッツ類は大好物であった。生肉を食べれない今ではこのドングリは、自身の獣欲を満たすための貴重な食糧でもあったのだ。


 だがドングリを好む村人はあまりおらず、多くの村人は必要な食材であるから仕方なく食している感が強い。しかし、クリスがドングリを使ったタルトを考案してから、皆喜んでドングリを食べるようになったのだ(ドングリは生で食べるとアクが強いため)。


 ミリアは出生が出生だから、通常の人より味覚が感じられなく、例えアクの強いドングリも平気で生食できる。そのエグミが昔食べていた生肉そっくりで・・・・・・、今でもミリアは一人でこっそりドングリを生で食している。


 だからこの診療所には他所の家よりドングリが豊富に貯蔵されているのだ。


 ミリアは瓶のコルクを開けると、中のオイルを指先に少し垂らす。このオイル瓶を開けてからだいぶ日にちが経つので、ドングリオイルの風味が損なわれていないか確かめようとしたのだ。


 指先に垂らしたオイルの雫をペロリと舐めてみる。ドングリオイルの香ばしさや少々アクの強い風味が鼻先に突き抜ける。どうやらまだまだ美味しくいただけるようだ。


 ペロリと唇を舐めたミリアは、紅茶を入れる準備を整え始めた。とはいってももう茶葉に注ぐ湯は沸騰してあったし、もうポットに入れ終えた茶葉にそのお湯を注ぐだけで準備は完了するのだ。


 ミリアはポットにお湯を注ぎ終えると、茶葉を蒸らすためしばらく待つことにする。あまり時間が経ちすぎると紅茶が渋くなってしまうので、そこは注意しないと。折角オイルを垂らしても渋くなっては意味がないからだ。


 三分ほど待つと、ミリアはポットを手に持つと二つほど用意したカップに紅茶を注いでいく。薄桃色の紅茶が湯気を放ちながらカップの中に溜まっていく。


 ポット内に収まっていた全ての紅茶を注ぎ終えると、ミリアは手にしたナッツオイルを数滴ずつカップ内の紅茶へと垂らした。


 すると薄桃色の紅茶の色が真紅色に染まり、芳醇な薔薇のような香りが炊事場に広がり始める。


 この紅茶ならヴァレンシアも満足していただけるはず。


 ミリアは己の機転の良さに自分自身で拍手を送りながら、ソーサーの上にカップを置いて、その二つをトレイの上に乗せると、応接間で待つ彼女たちの元へと紅茶を溢さないように慎重に歩きながら向かう。


 応接間は炊事場のちょうど真上にあり、階段を上らないといけないので神経を集中させて、一歩、一歩を慎重に慎重に進んでいく。


 紅茶を溢さないだけに神経を注いでいて、ミリアは”あること”に気を使わないことをすっかり忘れていた。


 それは――――――――――――――、



「ミリア~、少しいい? ・・・・・・あれ? ミリア、それどうしたの?」


「!?」 


 突然の来訪者に驚き、ミリアは手元が大きく揺れ動いてしまう。そしてその拍子にカップ内の紅茶の水面に映った自身の頭頂部に生えている”モノ”に気が付いた。


 いつもは引っ込めている本来の耳である”狼耳”が頭頂部から、自身の存在をアピールするかのようにピンッ!! と立っていた。


 そして、その来訪者とは自身の友と呼べる親しい間柄である少女―――――――、ナタリアが驚愕に満ちた表情を浮かべて戸先に立っていたのであった。


 今回は幕間を書きました。

 次回の更新から次章がスタートしますので、よろしくお願いします。

 ケモ耳っていいですよね・・・・・・。リアルにいたらどんだけいいか。

 まぁ、本当にいたらビックリするでしょうけど(笑)

 では、次回に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ