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第九章 誘い(3)

 楽しんでいただけたら幸いです。

 ――――――――あれからどうなったのだろうか? 


 俺はぼんやりとする思考の中、今自分が置かれている状況を把握すべく、どうにか頭を振って周囲の状況を探ろうとしたのだが・・・・・・・、困ったことに体が痺れて動けないのだ。


 身体が動けない原因は、やはり先ほど得体の知れないデカブツに吹っ飛ばされたからだろうか。もしかしたらその時に全身をどこか硬い物にぶつけたのかもしれない。それか体が何かの間に挟まっているとか。


 現に今俺の体は意志とは裏腹にピクリとも動かない。なのに感覚だけはハッキリとしている。


 にしても、このままだったら埒が明かない。今の俺たちにとって時間は有限ではないのだ。こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎてしまうであろう。そうなればあっという間にゲームオーバーだ。


 俺は恐らく近くにいるであろうケティへと助けを求める。もう彼女だけが頼りだった。


 唯一自由の利く”声”を使って、俺は姿の見えぬケティへと必死に呼びかける。


「ケティ、助けてくれ!! そこにいるんだろ、なぁ? ケティ、ケティ!!」


 ――――――――――呼びかけてから数秒ほど待つ。


 近くにいるのなら、何もなく意識があるのならば、俺の呼びかけに応じる筈、だったのだが・・・・・・。いくら待てどもケティからの応答はなかった。


 俺の脳裏に最悪の事態が過る。もしやケティは”俺の呼びかけに答えられない状況”なのではないかと。吹っ飛ばされた際に大怪我を負って意識を失っているのはないか、と不吉な憶測が浮かんでは消えを繰り返す。


 それも無理はない。


 それほどまでにあのデカブツの襲撃は何もかも想定外だったのだ。応戦どころか、逃げることも出来ずに、俺とケティはただただ蹂躙されるままであった。


 あのケティですら赤子の手を捻るかの如く、為す術もなく吹っ飛ばされたのだ。ケティの細身で華奢な体躯が大木や大岩にあの勢いのまま衝突でもしたら――――――――、大怪我では済まないであろう。下手したら即死している可能性だってあるのだ。


 ここはいつまでもケティの助けを待つだけじゃあ駄目だ。俺が、今のところ大して怪我もなさそうな俺が、なんとかしなければ。


 俺は身動きの取れない体をどうにかしようと力の入らない四肢でもがく。大丈夫だ、為せば成る。今までの”受け態勢”の俺から脱却するために、俺はここが踏ん張りどころだとこの窮地を脱するべく力の限り抗う。


 ”火事場の馬鹿力”とでもいうのであろうか?


 今まで身動き一つとれなかったのが嘘のように、俺の体が徐々にだが意思に沿うて動くようになった。どうやら動けないと思っていたのはどうやら錯覚だったようで・・・・・・、俺の意思次第でどうとでもなることであった。


 ―――――――――――俺はここでもケティに甘えようとしていたんだな。


 俺は自分の腑抜けた考えに気づき、そんな甘い考えを考えていた俺自身を恥じた。自分自身では動こうとしない他人任せな考えを一瞬でも思い浮かべた。その事実に反吐が出る。


 まだ若干痺れが残る四肢を確認の意味を込めて動かす。どうやら大丈夫なようだ。まだ本格的とまではいかないようだけど・・・・・・、ケティを探すくらいのことは出来るであろう。


 痛む体に鞭打って俺は今いる場所から移動しようと、まずは両足を動かしてみる。うん、大丈夫なようだ。そのまま次は上半身から腕へと移行しつつ、遅々とした動きであったがどうにか体を起こすことが出来た。


 体を起こしてみて初めて自分の身に起きた事象が判明し、その被害の大きさに絶句する。どうやら俺が倒れていた場所は数十分前にいた場所からだいぶ離れており、その周辺の木々はまるでハリケーンが通過したかのように滅茶苦茶に薙ぎ倒されていた、


 俺の体に目立った外傷がないのは、ちょうど上手い具合に倒れた木々と木々の隙間に入り込むようにして挟まったからのようで・・・・・・。微妙にすり傷や切り傷はあるものの、これからの移動に支障をきたすような傷や怪我がないだけマシか、とこの時ばかりは自分の悪運の強さに感謝した。


 コキコキと凝り固まった肩や関節をほぐすようにして鳴らしながら、俺は辺りに散らばった木々の枝や粉々に粉砕された石の破片を避けつつ、注意深く周囲を見渡してケティを探し歩く。


 こんなに散らかっているんじゃ見落としてしまいそうで怖いし、よ~く見ていかないと―――――――、俺は忙しなく視線を動かして辺りを観察する。


 それにしてもあのデカブツは一体何だったんだろうか。あんなのがうろついているんじゃ、あまり悠長にはしていられないな。早くケティを探してこの場から離れないと。


 額から滝のように汗を流しながら、俺はどこを歩いているかも分からずに、未だ姿が見えぬケティを探して森の中を這いずるようにして歩き回る。


 方々探しまわって、ようやくケティらしき人の姿が大木の端にもたれ掛るようにして倒れているのを発見した俺は、方々歩き回って疲れていたことなどすっかり頭の中から吹き飛び、ケティ?が倒れている場所へと駆け寄る。


 何度も足を取られながらも、僅かな望みをかけて、俺は――――――――――。


「ケティ!! ケティ、大丈夫か!! 生きているよな、な、な!!」


 と、呼吸するのも忘れて俺は倒れた大木にもたれ掛るケティ?らしき人物へと駆け寄る。その肩に手をやって無事を確かめようと揺さぶりながら声をかけるが、返事がないどころかピクリとも動かない。


 俺はまさかと思い、ケティの体をもっと激しく揺さぶる、と――――――――、激しくゆすり過ぎたようで、彼女の体がぐらりと傾き始めそのまま地面へと倒れこんでしまう。


 倒れた際に顔にかかっていた前髪がハラリと動き、髪の毛に隠れていた素顔が明らかになる。その顔を見て俺はあまりの衝撃に言葉を失うのであった。






 ――――――――――一方その頃。


 アラタが吹っ飛ばされた場所から数Kほど離れた場所を一人で歩いているのは、身体のあちこちに傷を負って血を流している少女―――――――、ケティであった。


 彼女はアラタとは反対の方向へと吹っ飛んでしまい、その時の衝撃で木々をなぎ倒しながら吹っ飛んでしまったようで・・・・・・、樹が若木であったからこの程度の傷で済んだが、下手したら即死ものであった。


 流石に即死だとヴァレンシア様に生き返らせてもらえないので、運が良かったと言えば聞こえはいいが、それでもまだ目的も果たしていない序盤の序盤でこの怪我は結構痛手だ。


 それに、思わず強敵も出現してしまったようだし、まずはこの場を切り抜ける為にもはぐれてしまったアラタを探さなければ。


 ケティは歩くたびに痛む体に鞭打ちながら、一歩ずつ確実に前へ前へと進んでいく。


 まずはこの傷の手当と本日の拠点を見つけなければ。酸素濃度が薄くなるのもそう遅くないはず。そうなれば二人とも死んでしまう。


 最悪の事態になるのだけは避けたかった。いざとなれば自分一人を犠牲にしてでもアラタだけは生かして帰さなければ・・・・・・。


 しかし、一つだけ疑問が残る。


 何故”アイツ”は自分とアラタを離れ離れにするような面倒くさい真似をしたのであろうか。そんな手を取らなくとも、二人まとめて始末してしまえば簡単だったはず。


 もしかして・・・・・・、ケティの脳裏によくない考えが過り、ケティは慌ててアラタを誰よりも早く確保するべく今の状態で出せる最高速度で森の中を走り抜ける。


 この考えが正しければ、これは”罠”だ。


 くそっ、もっと警戒していれば良かった!! と自分の迂闊さや考えの甘さに苛立ちを覚えつつ、ケティは森の中を疾走する。


 塞がってもいない傷口から血が流れ出てきて、その度にケティは激痛が全身を走るも、泣き言を一切吐かずに敵の手が迫りつつあるアラタを守るべく奔走する。


「くそっ!! くそくそくそくそぉ~~~~~~~~!!!!」


 ケティの悔しそうな絶叫だけが、静かな森の中に木霊しながら反響する。


 彼女の傷口から垂れた血が、まるで彼女の流した涙のように枯葉の道へと点々と付いていた。



 

 ――――――――――――呼吸が出来なくなるまで、あと1時間30分。

 主人公は無事にジャンヌの元に辿り着けるのか。

 主人公たちの向かう道は前途多難ですが、

 それでも懸命に抗いながら前へと進む様を書いていけたらいいなと思っています。

 では、次回に。

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