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幕間 企み

 楽しんでいただけたら幸いです。


 更新休んですみませんでした。

 この更新から連日更新に戻りますのでよろしくお願いします。

 アラタたちが黄昏の森に到着する数時間前。


 ある一人の少女が能面のように無表情な顔で、自分の目の前に気を失って倒れている数人の少女たちを見下ろしていた。


 この少女たちは先ほど”捕まえた”狼藉者であり、その罪状は私の庭であるこの森を不法に侵入したというものである。本来ならば死刑ものであるが、この少女たちはまだ”使える”と判断したので、しばらくの間だけ生かしてやることにしたのだ。


 それにしても、本当に気に食わない。


 少女―――――――――、改めジャンヌ・ダルクは今一度横たわる少女たちを忌々しそうに見下ろし、思わず無茶苦茶に壊してしまいそうになるが、僅かな理性を総動員して自分の野獣じみた衝動を抑え込む。


 曲がりなりにも自分は騎士だった身だ。そんな自分が己の感情に支配されるようではいけない。


 しかし、それでも自身の腹の内に渦巻く嫉妬の炎は激しく燃え上がるばかりだ。


 醜いほどの嫉妬をこんな人間の、しかも幼い少女に抱くなんて、自分は本当に”人間”として終わっているな、とどこか他人事のように感じた。


 この少女たちに何の罪もない。むしろ被害者だとは思う。思うのだが、それでも憎まずにはいられないのだ。


 だって、そうしなければ私の”心”は壊れてしまう。


 平常心を保つためには、”何か”にあたらなけらばいけない。


 その何かとは、この眼下に倒れている少女たちなわけで・・・・・・。


 そこまで思考しているうちに、私はある真実に気づいてしまう。


 なんてことはない。もう、ずっと前から私の心はとうに”壊れている”のだと。それはいつの時か。数年前か、それとも数百年前か。考えてもその答えは見つかりようもなかった。


 だって、もう昔の記憶なんて思い出せないのだから。


 ただ鮮明に覚えているのは、自分が昔”騎士”だったという事と、その身分のせいで私は”処刑”されてしまったということだけ。


 ただ、それだけ・・・・・・。


 と、考え込んでいる間に、どうやら気絶していたはずの少女たちが目を覚まし始めたようだ。微かな呻き声を上げながらモゾモゾと身動ぎをする。


 長く考え込んでしまった様だ。そこは反省しなければ、とジャンヌ・ダルクは己の迂闊さを叱咤しつつ、横一列に並べて置いた中で一番右端に倒れていた少女の元へと近寄ると、もっとその顔を見るべく膝をついてしゃがみ込む。


 どうやら捕えてきた少女たちの中では一番の年長者のようだ。腰まで伸びた赤毛に白い肌。体つきは身長の割に少しやせぎすであるが、それでも病的な感じではないので体質なのではないかと思う。服装は森を歩いた為であろうかボロボロではあったものの、質はとても良いものであると服の作りを見て分かった。


 捕らえた相手を注意深く観察するのは昔からの癖だ。こればかりは体に染みついていて、そう簡単には拭えなかった。


 実に習慣というのは恐ろしいものだ。


 あまりジロジロと見ていたのが悪かったのか、ジャンヌが観察していた少女の意識が徐々にだが覚醒しつつあった。定まっていなかった焦点は次第にハッキリとしてきてのが、瞳孔の震えや伸縮具合で確認できた。


 やがて完全に焦点が定まったようで、未だボンヤリとした視線であったが、自分の顔を覗き込んでいるジャンヌの存在に気づいたようで、覚醒しきれなかった意識が本格的に目覚めたようだ。慌てて消耗のあまりロクに動けない体を懸命に動かして逃れようとする。


 しかし、それを黙って見逃すジャンヌではない。必死にもがく少女の手を思い切り踏みつけ、激痛に顔を歪める様を淡々とした表情で見下ろす。


 自分は別に人が痛がる様を見て喜びを感じるサイコパスではない。しかし、捕虜に対して甘い顔は見せないことと、多少の暴行を加えることの重要さは認識していた。


 ジャンヌの目論み通り、手を踏まれた少女はさっきまで激しく抵抗していたのに、今や借りてきた猫よろしく大人しくなっていた。


 ジャンヌは少女が大人しくなったことに満足し、努めて優しい声を意識して語りかける。だが優しいのは声だけで、そこには一切の感情は含まれていない。あるのはこの人間は使えるか否かだ。


 それをこれから見極めるというわけだ。


 もし否であれば・・・・・・・、言わずとも分かるであろう。


 使えぬものは処分するのみ。


 私の”楽園”には人間は不要なのだから。


「それで、お前はどこの誰? 簡潔かつ明瞭に答えよ」


「・・・・・・わ、わたしは、ヤヤ。バロンズ・ガーデンから逃げ出して来て、それで・・・・・・」


 バロンズ・ガーデンという名は聞いたことがある。確か魔女の巣窟だった街名だったはずだ。そこから逃げ出してきたとなれば、答えは一つだ。


 この人間の少女たちは――――――――――――、使える。


 先ほどから肌がザワザワと鳥肌立っている。恐らくあのクラリスが言っていた人間どもがやって来るのであろう。この少女たちはその人間を動揺させるための”罠”として活用させてもらう。


 人間というのは総じて”仲間意識”が高い。あえてそこを突くというわけだ。


 ジャンヌはこの少女たちの正体をすでに把握していた。理由は街名に聞き覚えがあった事と、少し前にその街で人間を囲っていた魔女が反乱を起こし行方不明になったこと。


 それをこの前来たクラリスとかいう魔女の言動からそれとなく感じ取っていたのと、あとは風の噂である程度の詳細を知っていただけではあったが。


 正直に言って確証はなかったが・・・・・・、そう。この人間らが・・・・・・。


 ジャンヌは久しく感じる面白い予感に胸の鼓動を昂らせながら、いつしか消え去ったドロドロとしたどす黒い感情が雲散しているのに気付かずに、これから起きるであろう波乱という名の”遊び”を心待ちにして――――――――――――、ジャンヌは次なる行動に出た。


 ジャンヌは怯えるヤヤの顔に己の手のひらを押し付け、


「―――――――――――――大丈夫。”さぁ、一緒に遊びましょう。ねぇ、ヤヤ”」


 先ほど聞き出した少女の”真名”を呪文と共に乗せて、ジャンヌはヤヤにある呪文をかけた。すると、ヤヤの顔から怯えを含む一切の感情を取っ払ったかのような、虚ろな表情を浮かべてどこか夢見心地のような状態でジャンヌの顔を黙って見つめる。


 そんなヤヤを満足そうに見つめたジャンヌは、彼女に無言で次なる指示を送る。するとヤヤは何を命じられたわけでもないのに、黙々とジャンヌの望み通りに動き始めた。


 その背中を眺めながら、ジャンヌは久しぶりに心の底からの笑みを浮かべて、これから起こる楽しい楽しい日々を待ち望みつつ、ヤヤが次々に目覚めさせた少女たちに魔法をかけるべく行動に移すのであった。


 

 主人公たちがやってくる前のジャンヌを書いてみました。

 ジャンヌは少女たちを使って何をする気なのか? 

 こういう場合はきっとロクなことないですよね。洗脳系は割と好物です。

 次回から新章が始まりますので、よろしくお願いします。

 では、次回に。


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