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幕間 見えぬ底

 短いですが楽しんでいただけたら幸いです。

 ゴポ、ゴポポ、ゴボリ、ゴポ、ゴポポ。


 口からこぼれた酸素が無数の泡となって、私の目の前を通りすぎていき、そのまま頭上へと不規則な動きで上がっては消えていく。


 それと反比例して私の身体はどんどん下へ下へと落ちていく。沈んでいく。


 どれだけ手足をバタつかせようが、無情にも私の身体は重力や引力に従って落ちていく一方。


 声を上げようにも、私の口から漏れるは掠れた空気のみ。


 それすらも気泡となっていく。


(ーーーーーもう、ダメ)


 ゴボボーーーーーー、体内に残っていた酸素すらも哀れな私を見放して空へと還っていく。


 少しずつ薄れていく意識、それに比例していくかのように手足の自由も効かなくなっていく。


 泳ぐことを忘れた魚のように、私は水底へと沈んでいく。


 霞始めた視界に映る水泡の中にーーーーー、

私は幻を見た。


 普段ならば決して見ることはない、偽りの光景だ。


 いや、本当にそう言えるのであろうか?


(ーーーーーいつの日? 私はーーーーー、アレを知っているような気がする)


 いつ見たか? いつの日の出来事か?


 ハッキリとは覚えてはいないが、それでも私は記憶があると断言できる自信があった、が。


 今の私にはもう深く考えれるほどの余力は残っておらずーーーーー。


 微かに残る思考に刻まれた思いはただ一つ。


 それはーーーーー。



(・・・・・・お姉、さま)



 ガボッ。


 一際大きな気泡を吐き出したのを最後に、私の意識は完全に消失した。


 意識が途絶える直前、私は救いを求めるかのように伸ばした手。


 その手の先に見えた、ある女性の顔を瞳に焼き付けた私はーーーーー、ほぼ無意識に微笑んだ。


 確証なんてどこにもない。


 だけど信じる。信じられる。


 この底の見えない暗闇から助けてくれる、その瞬間を。


 ただ信じて。


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