五里霧中
なんとなく設定練ってたら方向性が見えてきたので再開。
目が覚めたのは夕陽が沈みかける頃、畑仕事から帰って来た村人が下の食堂でワイワイしだしてるのが聞こえてくる。
「女将さん、エールも一杯!」
昼メシ食って即寝てたので余りハラは減ってはいないが、明日にはムラを出て丸1日歩くハメになる以上、無理してでも食っておかねば持たないな…
とボンヤリ思いながらカウンターに座って晩飯を頼む。
相変わらず誰がナニ言ってるのかサッパリなのは変わらないとしても、少しでも耳を鍛えて早いトコこの世界に馴染まないといつまでたってもロクに仕事も出来ねぇコトになる。
”晩飯と、なんか軽く一杯くれ”
”はいよ。次の一杯から銅貨3枚だよ”
相変わらず黒パンに付け合わせのサラダ、昨日とはまた少し違ったシチューにビール。
不味い、が、旨い。
なんだろうな、具一つ一つの味が濃厚なんだよな。
…モグモグと出されたメシを平らげ、木のタンブラーに半分残ったビールを一口飲み下しながら
(…ヤニ吸いてぇ…)
20年以上ビンボな時もそこそこ稼げてた時もやめらんなかった喫煙習慣。
(多分、二度と手に入らんのだろーなー…)
辞めるツモリも無いのに辞めるハメになりそうなタバコ。
(…ヤニもキッカリ抜けてるのが救いだけどなー。)
ニコチンの禁断症状は一切無い。無いのだが、記憶にまだ新しい紫煙の解放感と苦味から一生無縁になりそうなのがなんとも侘しい。
ポカーンと店の出口を眺めながら真っ直ぐアゴを引いて自分の座ってる椅子に目を落とす。
(…若返っちまってコッチの我慢が辛くなりそうなのも痛し痒しだしなぁ…)
幾らなんでも流石にアラフォーに迄なると、だいたいソッチの欲求は程よく”枯れ”ちまってたし、スマホなんかあっても無くても女体の神秘に事欠かない世界から、
女ッケ無縁のママにヤりたい盛り迄巻き戻されしもうた。
「エール、もう一杯。」
そして、異世界でリセットニューゲームしてしまった自分のコレから。
(…若い頃はとにかく目先の好奇心と中途半端なアタマでっかちで人生ズッこけてるからなぁ、、、
若い頃のオレと若返ったオレ。
なんか変われるのか?
変わらない方が良いのか?
その辺もサッパリだ。
多分、三つ子の魂百迄、になんだろなー、と他人事の様に思いつつビールをチビチビ呑む。
とりあえず、ナニがあるのかこんなムラじゃあサッパリ判らんし、そもそもコトバが通じねんじゃハナシにならん。
ソレに若返ったとは言え、いや、若返ったからこそ、
(現代ニホンじゃあるまいしエアコンもPCもクルマも多分ねー世界…
どんだけムチャが効くのか判らないが、死なないように鍛えなければならない。
(腕立て腹筋スクワットからやり直さねばなぁ……)
さしてカネがあるでも無しに更にもう一杯エールをやっつけて軽くホロ酔いになったトコロで尿意を感じて外にある便所に向かう。
完全に日が落ちきって、月明かりの下なんとか目を凝らして便所迄辿り着き用を足し終え、井戸水で手と顔を洗い、口をゆすいで宿に戻ろうか、というタイミングで
野太い咆哮と馬の嘶き、蹄が土を蹴り、火矢が空気を切る。
(____オレ、もうちょっと悪運強い方だと思ってたんだけどなぁ…)
洋の東西問わず、戦争に付き物と言えば、
田捏ね、乱取り、焼き働き。
異世界に来て早々進退窮まってしまった事を自覚しながら、どうやって逃げきるか、ハヤトは走る事も叫ぶ事も出来ずただ茫然と立ち尽くすのだった。




