選択肢
真っ暗悩みの中。
私は横たわっていた。
あたりを見渡しても、黒、黒、黒。
本当に全てが漆黒で埋め尽くされている此処は何処?
そして私は何の為に此処に……?
ただ暗いだけなら時期に目が慣れるはず。
もし目が見えなくなっているならば手探りで進めばなにかに触れるはず。
そう思い手を伸ばすと自分の体がはっきり見えた。
「……え?」
手をグーにしたりパーにしたり
自分の体を触ってみたり。
足があるから死んでるわけではなさそうだが、もし私がちゃんと自分の姿が見えてるならばなぜ周りは暗いのか。
「だってここは僕の世界だからさ。」
「う、わっ!?」
背後から突然声をかけられた。
驚いて尻餅をつく。
「ごめんごめん。やたら君が面白い行動してるからつい。」
てへ、と言わんばかりに舌を出して笑っているのはもうひとりの私。
僕の世界って、どういう事だろう。
なぜ私が彼女の世界にいるんだろう。
また頭が混乱してきた。
「君は僕と契約したんだ。」
「契約……?」
あ、そうか。
あの時あいつらのことが許せなくて名前書いたっけ……。
「した……かも。」
「だから契約内容の確認とかをするためにここに君を呼んだんだ。」
契約内容の確認、か。
それを成立させたら私は死ぬんだっけ……。
「そう。ただAとBを選べるよ。」
そう言って紙を何枚か私の前に出した。
そこに書かれていた内容は、こんな感じ。
Aコース……おまかせ型。僕が責任をもって全員地獄へ落とします☆
Bコース……自主型。あなたが自分の手で全員地獄へ落とすことが出来ます☆
なお、Aコースは契約後49日は地獄を味わってきた君へ冥土の土産として君の望む世界をプレゼント。
Bコースは先に死なないと自分の手で殺すことは出来ないが生まれ変わりの種を差し上げます。
「どういうこと……?」
「要するに。僕に頼んで49日間幸せな時間を送るのか、自分でやって生まれ変わりの種をもらうのか、って事!」
ということは……。
彼女に頼めば49日間だけ私のしたかった事ができる世界になって、
私が自分でやるならば生まれ変わりの種をもらえるがここで死ななければならない、ということか……。
「そういうこと!」
「だからあんたは勝手に私の頭の中を覗かないの!」
「はぁ〜い。」
「てゆーかさ。あんたに頼んだら生まれ変われないってこと?」
「それはどーかなー♪」
こいつムカつく。
別に生まれ変わりたいとは思わない。
けど生まれ変わりたくないと言ったら嘘になる。
私は私自身がどっちに進むことを望んでいるのかわからない。
「今すぐには決められないよ……。」
「じゃあ1週間以内に決めてね!じゃ!」
そう言って彼女は消えていった。
次に目が覚めた時は病院のベッドの上にいた。
心配そうに見つめる私の祖母の顔が映る。
「先生!孫が!孫が目を覚ましました!」
バタバタと走って行く祖母。
先生を連れて祖母が入ってきた時、私はまる2日目が覚めていなかったらしい。
様態も良くなく、時間の問題だとも言われていたそうだが今は容態が安定していてこのままなら二日後には退院できると言われた。
おひるごはんを食べながらあの時の話を思い出す。
「AとBか……。
天国か地獄ってことだよね。」
ぽつりひとりでつぶやく。
私はどちらが正しいのか、彼女の与えた選択肢に頭を抱えていた。