表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑わない僕と泣かない花。  作者: 桜ノ宮 妃緩
8/13

一刻千秋-祈りのユートピア-

・漆・一刻千秋いのりのユートピア


あったかい光と音に包まれたキレイなお城。

静かなのに、心地よくてまるで「アナタは此処にいていいんだよ。」って言われてるよう。


─── わんっ!!


遠くから1匹の犬が走り寄ってきた。

長くてサラサラしてて、でもふわふわしてる尻尾しっぽを振って、愛嬌を振りまいている。


可愛いなぁ。ねぇ、触ってもいい?


─── わんっ!!!!


さっきよりも元気に返事をしてくれる犬の頭に手をおいて、なでなでしてあげた。


キミも、地上むこうに未練があるの?


犬は答えなかった。代わりに私の隣に座ってくれた。

私も隣に座って、犬をぎゅっと抱きしめた。

あったかい。なんだかこのまま眠れそうだった。私はその波にのまれて静かに目を閉じた。





「 着きましたよ!ここに百合さんがいます! 」


10分…いや、もっとかかったのだろうか。

少女に案内されて来た場所は、お城の最上階。

階段を登りきって、最初に目にしたのは「とてつもなく美しい絵画かいが」だった。

ひとりの女性が色とりどりの花を抱え、目をつむっていた。見事な金髪に白くてなめらかな肌、シルクで出来たような布に身を包んで座っている女性の絵が、表せないほど大きかった。


「 この方が今の女王様。つまり、神様です。 」


ということは、此処は神様のお城?

「 そういうことです。 」


少し進むと、広くて太陽の光が1番差し込む場所があった。

そこに、1匹の犬と一緒に眠る百合がいた。


その姿は死んだ時のようで怖かった。でも、ゆっくり近づくと、彼女の小さい寝息が聞こえてホッとした。


「 ゆり、今までありがとう。」


そっと耳元でささやいた。此処で初めて声を出した。(声を出さなくても天使には心の声が全て聞こえていたのだ。)

彼女はゆっくりと起き上がった。

眠そうに目をこすりながら、小さく欠伸あくびをする。


「 ゆり、僕のことわかる? 」

「 …え、もしかして、馨...くん……? 」

彼女は目を見開いて驚いた。

「 うん。 」

「 ...これ、夢なのかな? 」

「 夢じゃありませんよ! 」

後ろから天使が自慢げに声を張る。彼女は後ろにいた天使に今更気づいたようだった。

「 私は天使です!名前はありません! 」

「 そうなの?じゃぁ、名前を付けてもいい? 」

「 付けてくれるのですか!? 」

「 もちろん! 」

キラキラした瞳を向ける天使に、生きていた時と変わらない笑顔で彼女は言った。

ゆりは少し考えてから、何かを思いついたように顔を上げた。

「 明るくてあったかいから、ひまわりちゃんは? 」

「 ひまわり!!!気に入りました!これからはひまわりと名乗ります!! 」

嬉しそうにぴょんぴょん跳ねてどこかに走ろうとした。

「 私、女王様に名前をお知らせしてきます! 」

背中にある白い羽でふわっと浮いたかと思うと、窓からどこかに消えてしまった。


「 可愛いね、ひまわりちゃん。 」

独り言のように彼女は呟いた。

「 ...ゆり。 」

その声に振り返る彼女を抱きしめた。

彼女の吐息が近くで聞こえる。

「 え!あ、あの、どうしたの...? 」

突然のことに驚いたのだろう。体がビクッとこわばったのがわかった。

「 ゆり、手紙ありがとう。」

手紙のことは、彼女に最初に言おうと決めていた。

「 ...読んでくれた? 」

「 うん。 」

心臓の音がうるさい。顔も見せられないくらい赤く染まっていた。

言いたいことが沢山あるのに、言葉が出てこない。

「 ……馨くん、好き。 」

不意に耳元で彼女は言った。耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。

「 くん、はいらない。 」

「 えっ...か、おる? 」

「 ...うん。」

嬉しかった。これ以上ないくらい嬉しかった。

「 ...僕も、好き。 」

恥ずかしくて恥ずかしくて、顔は見れなかった。

「 ...うん、あのとき、聞こえたよ。」

あの時っていつだろう。好きなんて言葉にしたのは初めてなはずなのに。

「 私が死んじゃったとき、かおるく...かおる、言ったでしょ? 」


「 愛してる、って。」


思い出した。ゆりが小さな声で、でもはっきり愛してると言ってくれた。

聞こえてないと思っていた。もう息はしていなかったから。

「 嬉しかったなぁ。もう少し頑張りたかったんだけど、なんか宙に浮いちゃって、自分が真下にいるの。幽体離脱ゆうたいりだつってこんな感じなのかなって、ちょっと思ったんだぁ... 」

「 ...聞こえてないんだと思ってた。 」

彼女と向き合って顔をちゃんと見た。

彼女は少し泣いていた。

「 ...かおる、今笑ってる。初めて見た... 」

「 泣いてるゆりをちゃんと見るのも初めてだよ。 」


「 かおる、ありがとう。 」

そう言った彼女が光に包まれた。ふわっと彼女が宙に浮いたとき、彼女が言った。

「 ねぇ、最期にキスして。 」

そっと抱きしめて唇を重ねた。彼女とのキスは2回目。最初に話しかけたあの時は、僕の涙でしょっぱかったけど、最後のキスはゆりの涙の味がした。


「「 またね。 」」


僕たちは、声をそろえて言った。

微笑ほほえみながら。












読んでいただけましたでしょうか?

今回は2人のお別れのお話です( ;´꒳`;)


次のお話はエピローグになります。

ここまで書けてとても心がるんるんです!

最後まで読んでいただけると嬉しいです\( ˙-˙ )/♥︎


感想や投票、評価などいつでも受け付けてます!

待ってます!(●´ϖ`●)ノ

また、ほかの小説も同時進行で書いてます(๑ ˙˘˙)/☪︎

よろしければ、どうぞ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ