青天霹靂-不思議なカギ-
・参・青天霹靂
6月20日金曜日、午後3時25分。
自分の、嘉影 百合に対して芽生えた気持ちを理解し、雨の中を傘もささずに走ったあの日から、もう10日が経過していた。
僕はあの日を境に風邪をひき、未だ自分の部屋にあるベッドの中にいた。…これだから雨は面倒臭い。
でももし、ひとつだけ雨のいいところを挙げるなら
“どんなに泣いても雨の中では誰にも気付かれないこと”
だ。それが心地良いと感じる。
いつまでも降り続ける雨と共に、僕は静かに泣いていた。涙脆いのが嫌になる。
この雨は梅雨の時期だからよく降るだけであって、別に僕の心が沈んでいるからではない。
けれど、今日もまだ雨は止みそうにない。僕の涙と同じように…。
自分の好きな人に好きな人がいたら……
どうするのが、正解なんだろう…
どれくらい寝ていたんだろう。
気がつけば、僕は泣き疲れて眠ってしまっていた。
まだ身体は寝ていたいと悲鳴をあげる。僕はベッドの上から動けずに、自分の部屋を見渡した。
寝る前より部屋が少し綺麗になっているような気がするのは気の所為か。
ふと、机の上にあるキラリと光る何かが目に止まった。掌より小さい、光る何かが。
「 …?なんだろう…? 」
疲れた身体を無理矢理起こして、机に手を伸ばす。
そこにあったのは…金色の鍵だった。
鍵にしては少し大きめで、赤いリボンが巻かれている。こんなもの、見たことない。僕の持ち物ではないことは確かだ。
「 妹の貰ったものが間違って僕の部屋に…? 」
そんなわけない。妹は間違ってでも、こんな綺麗で珍しい鍵を置き忘れるはずがない。
他に可能性があるとすれば…なんだろう。
雨の音は聞こえ続け、ジメジメとした長い夜は明け始めていた。