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笑わない僕と泣かない花。  作者: 桜ノ宮 妃緩
10/13

紫季’sanother story1


今回は紫季先生のお話です。

本編であんまり書けなかったので( ˊᵕˋ ;)


では、番外編へどうぞ。




◓ 紫季’sanother story1 ◒



あれは今から約20年前だっただろうか。確か、俺が8歳の頃。俺は親に捨てられた。


「 ママ...? 」

静かな部屋には幼い紫季がひとり。

自分の部屋を出て、誰かいないかと探す。

もう21時を過ぎているから、共働きの母親も帰っているはずなのに、母親の姿が見当たらない。

「 パパ...?ママはどこに... 」

そこにいた人影は、確かにパパだった。でも、様子がおかしいことに、まだ幼かった俺にもわかった。その時は、なんで父親の身体が冷たくなっているのか、どうしてベッドでもないところで寝ているのか、全くわかっていなかった。

「 ママ...帰ってこないな... 」

それから警察が来て、俺は保護された。



あとから分かったんだが、母親は育児放棄というやつで、働いた金で遊びまくっていたらしい。それに耐えられなくなった父親は、自殺した。

父親も母親も、連絡の取れる親戚はいなかった。そして俺は、孤児院に入れられた。



孤児院での生活にも慣れ始めた13歳の頃、俺を養子にしたいと1人の女性が申し出てきた。

36歳の既婚者で、子供は3人、優しそうな瞳に柔らかい物腰をした、笹原 鈴夏れいかさん。

なんだかいい匂いもした気がして、安心した。

鈴夏さんの家は大きい新築であろう一軒家で、そこそこ裕福な家庭だと感じた。

前の家とは大違いで、散らかっていないリビングにきちんと収納されたキッチンなどを見て少し感動したのを覚えている。


「 母さん、コイツ? 」

「 コイツなんて言わないの!これから家族になるんだから。 」

階段を降りてきたのは少し年上だろう青年。

「 おにぃちゃんとか言わなくていいから。 」

目も合わせずに一言だけ言って、どこかへ行ってしまった。

「 ごめんね。照れ屋なだけなのよ、きっと。 」

フォローしてくれる鈴夏さんだったが、俺は薄々気づいていた。誰も家族が増えることを喜んでなどいない、と。

次に話したのは姉であろう女の人。短い髪をふわっとさせた髪型をしているのに、少し鋭い目つきをしていた彼女は、ちょっと苦手だった。

「 …うちの部屋には入らんといて。 」

京都弁だろうか。けれど、何かが違う気がする。

「 あの子は、京都に行ってから京都弁大好きになってしまって…。生まれも育ちもここなのに、変な子よね〜。 」

修学旅行の影響だろうか。

「 おかぁさん、京都弁可愛いじゃない。おねぇちゃんが好きで言ってるんだから、いいんじゃない? 」

声をかけてきたのは、あまり歳が変わらなそうな少女。サラサラの黒髪を肩まで伸ばしていて、可愛らしい顔立ちをしていた。

「 あ!あなたが紫季くん?中学生にしては大人っぽいね。 」

にこっと笑いかけてくる彼女に人懐っこい印象を受けた。

「 よく高校生に間違えられます。 」

「 いいなぁ、私なんか未だに中学生?とか高校生?とか言われるんだよね〜。 」

えっ?ということは...

「 大学生!? 」

「 そうよ?最近19歳になりました! 」

誇らしげに胸を張る彼女は、どう考えても高校生くらいにしか見えない。これぞまさしく『童顔』。

「 あ〜!今、童顔って思ったでしょ〜? 」

「 …はい、すいません。 」

「 あはは、素直でよろしい!私の名前は笹原 碧香みか。ミカって呼んでいいよ! 」

それが彼女との出会い。


それから、相変わらず兄ともうひとりの姉には嫌われたまま、時間は過ぎた。

学校では、それなりに友達もいたし、告白してくれた女の子もいた。付き合ってみたこともあるけど、なぜか最後はフラれてしまう。


「 紫季くん、いつも楽しそうじゃないよね。 」


みんな似たようなことを言った。

楽しんでるよ、それなりに。


「 ちゃんと笑った顔、見たかったのに。 」


ちゃんと笑った顔ってなんだよ。笑ってんじゃねーか。ちゃんと?そんなのわかんねぇよ。



年上や先生からは大人っぽいと言われ、同級生には無愛想と言われた。

同級生の男子が全然面白くもなんとも無い会話をして爆笑している。何が可笑しいのか全くわからなかった。

そのうち、だんだん友達は減り、クラスでも家族でも浮いた存在になった。


「 紫季くん?悩み事あるなら相談に乗るよ? 」

唯一出会った時と変わらなかったのは、ミカさんだった。心配そうに声をかけてくれるから、俺は「大丈夫です。」とだけ言って逃げた。

気づき始めていた。俺は彼女に惹かれ始めていると。

でも俺は知っていた。彼女にはもう既に恋人がいる。1度だけ見たことがある。それほど高くはないが低くもない身長に、くせっ毛だろう髪、優しそうな目をした年上男性だった。


敵わないな。


そう思って諦めた学生時代を、俺は鮮明に覚えている。







読んで下さりありがとうございます!

番外編は下記の順番で書くつもりです。


・紫季’sanother story1

・ひまわり’sanother story1

・紫季’sanother story2

・ひまわり’sanother story2


この先は書くかもしれないですし、書かずに終わりにするかもしれないです。


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