プロローグ
《 プロローグ 》
まだ、雪が積もるには早い11月下旬。
中学1年生である泉谷 馨は、入学式からずっと気に入らない奴がいる。クラスメートである嘉景 百合。
自分がどんなに辛くて、悲しくて、泣きたくても笑っている。僕とは正反対だ。
最初はそんな根拠なんてなかった。いつも笑っているな、くらいの印象しかなかったし、そこまで重症だとは思わなかった。人並みには怒ったり、驚いたりするが、何があっても泣くことはなかった。そもそも常に笑顔だった。
父親のDVで家に帰れずに、学校に最後まで残っていたときも、離婚後、母親が亡くなったときも、彼女は泣かなかった。それどころか、ただ人形のように笑っていた。
今は親戚の家に引き取られてはいるが、そこでもうまくいっていないことも知っている。なのに、何故笑うのだろう。
僕は怖かった。笑っているだけの人形のようで、背筋が凍るのだ。
僕は、保健委員としていつの間か決定されていて、面倒ながらも放課後残って仕事をしていた。きっと、僕が居眠りをしている間に、勝手に決めたのだろう。
「 はぁ…、もう帰るか。 」
そして今も、少し夢の世界に行ってしまっていた。もうとっくに会議も仕事も終わっていて、誰一人いなかった。
僕は人よりよく寝る。だから、放課後や休み時間に一人になることが多かった。
「 あ、教室にスマホ忘れた。 」
もう午後6時半を過ぎている。さすがに誰もいないだろう。そんな学校も悪くない。僕一人だけの学校。
「 ………ん? 」
何か物音がした。まだ誰か残っているのだろうか。
そっと教室を覗いたとき、ちらりと見えた。
そこにいたのは、嘉景 百合。僕が最も嫌いな奴だった。でも、今日はいつもと違う。窓際の席である僕の机の上に座って、静かに泣いていた。いや、違う。泣いているように見えた。しかし、その瞳から涙は溢れていなかった。そんな彼女の姿は、今まで目にしてきた何より綺麗だった。だが、それと同時に腹が立った。そんな悲しい表情をしているなら、泣けばいい。一人のときくらい、涙を流してしまえばいい。
彼女のことは、まだよく知らない。だから、泣かない理由も知らない。そこまで我慢する理由など、あるのだろうか。人前なら『 恥ずかしい 』という理由で泣けないかもしれない。けど、彼女は一人ですら泣かない。そこまでさせている理由が、知りたくなった。
「 なんで、泣かないの。 」
ドアの近くから、できるだけそっと、感情的にならないように声をかけた。
彼女は別に驚いた風もなく、ゆっくりこっちを向いた。
「 一人のときも泣いてない。何故? 」
「 …………………。」
ただ、じっと見つめてくるだけで、彼女は何も言わない。そして…、笑ったのだ。
「 なんで?!なんで笑うの!? 」
「 ……なんでだろうね。 」
彼女は、今にも消えそうな声でそう言った。目線も微妙にあってない。
「 …本当、なんでだろうね。顔が勝手に笑うの。昔から…人前でも、一人でも自然と笑ってしまって、泣けないの。 」
いつもと同じ笑顔だった。
…あぁ、彼女は狂ってるのか。人間として、壊れてしまったのか。
そう思ったら、自然と涙が頬を伝った。
「 なんでキミが泣くの。」
わからない。でも、ひとつわかったことがある。彼女は別に我慢していた訳でも、泣きたくないと思っていた訳でもなかった。心が壊れてしまったのだ。
涙は止まることなく瞳から溢れていく。これは僕の所為ではない。だけど、彼女の所為でもない。
「 ……泣かないで。 」
なら、涙を止めてくれ。小さく唇を動かしたが、声にはならなかった。だが、彼女には十分通じたのだと思う。気がつけば、顔が至近距離にあって、そっと唇に何かがあたる。それが何かわかっていた。彼女の唇は柔らかくて、僕の涙の味がした。
それが、僕のファースト・キスだった。
初めまして( ´ ▽ ` )ノ
壱月 透心鈴です。←⚠︎変更したので今は『 桜ノ宮 妃緩 』です
今年から憧れのJKです。マイペースで不思議、声が高いなど言われてます(笑)
まだ、初心者ですが頑張ります☆
この小説を読んでくださり、ありがとうございました(。-_-。)
次回作も書く予定ですので、読んでくれるとうれしいなぁ、なんて思ってます(OvO)
でわでわ⊂((・x・))⊃