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05 合流

 

 現在、接近中の隕石に対して先行調査を行なっている第五艦隊は、隕石の構成物質や内部の様子などの調査を終えていた 

 隕石にはいくつかの鉱物資源が確認されたが、それらは全て現在の星系連合には必要とされないものだった


「これなら心置きなくやれますね」


 エルフェスの顔には笑みが浮かんでいる。この状況を楽しんでいるかのように


 ――よく笑っていられるものだ――


 横に立っているセルスカは、不思議そうに見ている。一応国の存亡がかかっているのだが


「セルスカさん、準備はどうですか?」


「あ、はい」


 突然話し掛けられ一瞬反応が遅れた。だかエルフェスは気にする素振りは見せない


「現在全艦隊の四割が作戦位置につき、待機しています」


 艦橋の床面に表示されている拡大宇宙図の中央、隕石の予想進路を示す二本の破線を挟むようにいくつかの黄色い輝点が光っている


「核融合弾は機動爆雷へ積み込み、高速輸送艦で輸送中です」


「数はどのくらいですか?」


「一個艦隊を孅滅させても余るくらいです」


「よろしい」


 エルフェスはうなずいた


 それから二人ともしばらく黙っていたがエルフェスが口を開いた


「セルスカさん」


「はい」

 

「私は、二○○年ぶりの実弾が隕石相手とは思いませんでしたよ」


 セルスカはぎょっとした


「提督、まさか……」


「もちろん戦争がしたいわけじゃありませんよ」


 エルフェスはうっすら笑みを浮かばせながら宇宙図を見ている


「まぁ、私が生きている間に撃つことになるとも思ってませんでしたけど」


「私もですよ。この国は国対国の戦争なんて数百年経験していないんですから」


「運が良いってことですか?」


「わかりません」


 艦橋に通信音が響いた 

「提督、第五艦隊からです。予定通り反陽子咆と機動爆雷による攻撃を試すとのことです」


 エルフェスはうなずいて答えた


 時差を考えればもう攻撃は終わっているだろう 

 ――私たちの出番はありますかね――


 第五艦隊の攻撃に有効性が認められれば第一艦隊まで回ってこない


 派手にやりたいエルフェスとしては少し心配だった

 




 第一○六二戦隊は第一艦隊と合流する為、コンラッド星系門に向けて超空間航路を航行中である 

 いつもなら瞬く星たちの輝きを映し出す艦橋の壁面も、今は無機質な機械の壁が剥き出しになっている


 今艦橋にいるのはララ、イリアム、アトリアスの三人


「第五艦隊が攻撃を開始したそうです」

 

 アトリアスが報告する 

「始まったか」


「イリアム、恐いの?」


「恐いというか緊張ですよ。配属と同時にこんな大規模作戦に参加するなんて」


 それを聞いたララはアトリアスを見た


 ――彼女は緊張したりするんだろうか――


 たとえ緊張や恐怖を感じているとしても、彼女の表情からは読み取ることはできない

 

「コンラッド星系門まで一二分。門管理局から許可おりました」


「うん。わかった」


コンラッド星系門はもう目前まで迫っていた


 艦橋の壁面は相変わらず機械の壁だが、艦の自動航行によって隊列は崩れることなく、まっすぐ門に向かっている


 床面には超空間航路図とコンラッド星系門周辺の宇宙図が広がり、宇宙図には第一艦隊と思われる黄色い輝点の集団がある


「隕石はどの辺まで来てるんですかね?」


 カイルが尋ねた


「もう第五艦隊は抜けてるだろうね。今頃第三、第四艦隊が準備に入ってるんじゃない?」


 星系連合軍にはもっとも規模の大きい第一艦隊から第八艦隊まであり、それぞれが現在八○○〜一○○○隻の戦艦で構成されている


 完成間近や練習航行中のものを含めると、その数は倍近くになる


「第三、第四艦隊を抜けたらいよいよ僕たちの番ですね」


「ここまで来ないかもしれないだろ」


 クロムが言った。それにこしたことはないな、とララは思った

 

「間もなく超空間航路を出ます」


 外部カメラの映像をだす。気付けば門は目と鼻の先だった


「門通過します」


 外の景色があっという間に宇宙の黒に変わった 

 第一○六二戦隊はコンラッド星系に入った


 同時に第一艦隊から通信が入る


「門の通過を確認。直ちに合流せよ、です」


「了解、と返信を」

 




 

 第一艦隊旗艦、戦滅艦キルアークでも門から現われた一○六二戦隊の姿を捉えていた


「提督、新編入戦隊が到着しました」


「来ましたか。映像通信を」


 頬杖をついていたエルフェスは通信が繋がるまでに姿勢を正す


 ほどなくして艦橋前面に通信窓が現われソリスが敬礼をしている


「提督初めまして。第一○六二戦隊長ソリス百揮長です」


「こちらこそ初めまして。ソリス百揮長」


 連合国皇太子であるエルフェスは広く顔を知られているが、同じ軍にいるからといって簡単に話はできない


 ソリスは少々緊張気味だ


 その通信窓の下ではエルフェスの部下たちがせわしなく動いている


 もうすぐ機動爆雷を積んだ輸送艦が到着するのだ


「バタバタしててすみませんね」


「いえ。作戦中ですから」


「そう、作戦中なので手短に伝えます。あなたの隊も作戦位置で待機、命令は後ほど」


「わかりました」


「隕石飛来は三日後の予定ですからそのつもりで」


 敬礼してソリスの通信窓は消えた

 




 


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