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04 コンラッド星系へ

 

「ミラトニア星系超空間門管理局、航路通行許可を求む」


 十二時間後、急ピッチで準備を終え本隊と合流する為、超空間門付近に来ていた


「こちら星系連合軍第一艦隊所属、第一○六二戦隊」


「こちらミラトニア星系管理局。通行を許可します、縦陣で進入してください」


 局員は淡々と許可を出し、軽く敬礼をして通信を切った


「通行許可とれました」


「ありがとう」


 第一○六二戦隊長ソリスは部下と局員のやりとりを見ていた


 超空間航路を通るには各星系の超空間門管理局に許可を取らなくてはならない


 とは言っても特別な事情でも無いかぎり、先程のような簡単な通信で終わる


「超空間門進入まで十分です」


「二列縦陣を」


 ソリスの指示が素早く戦隊全艦に通達され、ソリスの乗る巡視艦カリストとララ達の高戦艦レイフロースを先頭にした二列縦陣の形をとった


「二列縦陣完了、進入まで五分」

 




 

「侵入五分前です」


 アトリアスが告げる


 艦橋前面に映し出された外部カメラの映像にはミラトニア星系が管理する巨大な装置が見える


 四角い枠のような建造物がある。超空間門だ


 近づくにつれて門は大きくなってくるが、とても戦艦が通れるようなものではない


「超空間門拡大します」


 局員の声が艦橋に響く。すると門は四つの角に切り離され、それぞれが光の線で繋がれている


 門は最初の何倍もの大きさになり、戦艦六隻が充分通過できる程になった


「間もなく進入します」


 この時艦橋から見えるのは、宇宙とは明らかに違う色の空間


 広大な星系連合領内の移動に欠かせない超空間航路の入り口が目前にまで迫ってくる

 

 二列縦陣の一○六二戦隊六隻は、速度はそのままで門に進入して行く。星の輝きと宇宙の黒が、あっという間に後ろへ飛び去っていく

 

「超空間航路に侵入しました。≪カリスト≫から通信。進路をコンラッド星系門に設定後、到着まで艦内休暇とする」

 

 ララが艦内放送を流す

 

「全搭乗員へ通達。我々は無事に超空間航路に入った。目的地はコンラッド星系、到着まで艦内休暇とする。以上」

 

 放送を終えると艦長席の背もたれに体を預ける。今頃他の搭乗員達は仮眠をとったり世間話でもしているだのだろうか

 

 だが艦橋にいる五人はそうはいかない。コンラッド星系までは自動操縦なので特にすることは無いが、不測の事態が起こらないとも限らないので交代で番をする

 

「それでは艦長、失礼します」

 

「うん。お疲れ様」

 

 非番のアトリアスとイリアムが敬礼して艦橋を出て行った。ララも敬礼を返して見送る

 

 残ったのはララとカイル、そしてクロムの三人だ

 

「はあ、酒が飲みてぇな」

 

「持ってきましょうか?クロムさん」

 

 カイルが意地悪そうな笑みを浮かべながら言った

 

「どうせ置いてないくせに。超空間にも軌道商店街置いてくんないかな」

 

「どうやって買うんですか?航行中なのに」

 

「わかってるよ。お前は一技術士のささやかな願いを奪うのがそんなに楽しいか?」

 

 ララは二人のやり取りを静かに見物していた。超空間にも軌道商店街を、というのは彼女も考えたことがあった

 

 戦艦に積まれているのは長期保存が出来る軍用携帯食のみで、薄味で種類の少ないそれはあまり好まれてはいない

 

「カイル、私も飲み物は欲しいよ」

 

「わかりました。クロムさんは?お酒はないですけど」

 

「じゃあ珈琲。温かいので砂糖は四つ分」

 

「甘党なんですね」

 

「なんだよ、悪いかよ」

 

「いえ全然。艦長は林檎茶でいいんですよね」

 

「うん」

 

 カイルは艦橋を出て行くと五分としない内に注文通りの飲み物を持って帰ってきた。彼自身は紅茶のようだ。カイルから飲み物を受け取ると、それを啜りながら束の間の休暇を過ごした

 

 

 

 

 

 

 

 第一艦隊本隊ではエルフェスの元に第五艦隊から隕石の情報が定期的に送られていた

 

 距離がいくらか離れていて、到着まで数時間かかるため受信した時にはすでに最新の情報ではなくなっているが

 

「なるほど。軌道要塞より大きいですね」

 

 旗艦、戦滅艦≪キルアーク≫の艦橋の床面には拡大宇宙図が表示され、隕石の予想進路を示す破線と、各艦隊の現在位置が黄色い輝点で現されている

 

 さらにその上には、第五艦隊からの情報を基にした隕石の立体映像が出ている

 

「提督、作戦案が出来ました」

 

「良いのが出来ましたか?」

 

 エルフェスは椅子を回転させてセルスカの方を向いた

 

「良いか悪いかは提督が決めることです。で、案は二つ。破砕か分断か」

 

「破砕の方が派手で良いと思いませんか?」

 

 エルフェスは即答したが、予想していたセルスカは難色を示す

 

「破砕だと高い費用がかかります」

 

 と、一応言ってみる

 

「今まで貯め込んだのがあるでしょう。貯めるだけじゃなくて使わないと」

 

「わかりました」

 

 これも予想通り無駄だったセルスカは諦めて折れた

 

「ではそのように全艦隊に連絡艇で通達します」

 

「よろしく」

 

 セルスカが立ち去ると、椅子を正面に戻し再び拡大宇宙図を眺めた

 

「さて、忙しくなりそうですね」

 

 

 

 

 

 


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