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03 第一○六二戦隊

 

 星系連合軍第一艦隊旗艦、戦滅艦キアルークの艦長席で艦長のエルフェス提督は、退屈そうな表情で外部カメラの映像を見ている


 艦隊を構成する無数の艦が、規則正しく整列している


「提督」


「なんですか?」


 横を見ると副艦長のセルスカが立っている

 

「我が艦隊の巡視艦が監視衛星からの情報を受信しました」


「監視衛星ってどこのです?」


 エルフェスは視線を映像に戻しながら聞いた


「マルディス星系です」


「マルディス?あんな辺境で何があったんですか?」

 

 マルディス星系は一つの有人惑星と二つの無人惑星からなる星系


 これといった特徴もない平凡な星系だ


「いえ、マルディスでは何もありません」


「じゃあなんですか?」


 エルフェスの視線はまだ映像に向いている


「マルディス星系に配備されている衛星の内の一基が、数時間前に信号途絶しました」


 エルフェスは振り返る 

 同時に――退屈しないで済むかもしれない――とも思った


「攻撃されたんですか?」


「直前まで周囲には一隻の艦も確認されていません」


 エルフェスは手をあごに当てながら考え込んだ 

「映像を見るかぎり、隕石が衝突したようです」


 それを見てセルスカが答えを言った


 ――それを先に言いなさい――


 そう思ったが胸の中に収めることにした


「衛星の一基ぐらいたいした問題ではないでしょう」


「確かに。ですが問題は隕石の方です」


「衝突コースに入ったならさっさと撃ち落とせばいいでしょう」


 セルスカは首を振る


「そう簡単にはいきません。軌道要塞と遜色ない大きさなんです」


 惑星の軌道上に浮かび外敵から地上の人々を守るために建造された軌道要塞は、戦滅艦十隻分の砲撃能力と八千人を収容できる大きさを持つ


「それは……困りましたね」


 ――本当に困っているのか――


 セルスカは思った。本当に困った人間は笑ったりはしない

 

「その大きさでは、いくら外から撃っても無駄撃ちですね。そういえばコースはどうなんですか?」


 セルスカは携帯端末に目を落とす


「何事もなければ、到達点は《皇星ファムリオール》です」


「やれやれ。よりにもよって……」


 《皇星ファムリオール》は星系連合軍の総司令部がある、連合領内ほぼ中央の惑星だ


 もし隕石が《ファムリオール》に衝突すれば、想像を絶する被害はもちろんのこと、長い間人は住めなくなるだろう

 

「到達まで余裕はありますよね?」


「ええ、だいぶ」


「では早速一番近い艦隊を派遣して詳しい調査をしましょう。他の艦隊も予想進路周辺に移動です」


「わかりました」

 




「正式に配属が決まったわ」


 艦橋の正面に大きな通信窓が現われ、ソリス百揮長が高戦艦レイフロースの配属先を告げる 

 ララ達艦橋要員は真剣な表情を向けている


「あなた達の配属先は第一艦隊、第一○六二戦隊よ」


「第一艦隊ですか?」


 ララは少し驚いた。なぜなら第一艦隊といえば 

「そう。皇太子殿下の直轄よ」


 《星系連合国皇太子》にして《艦隊総司令官》それがエルフェスの肩書き


 彼が直接指揮する第一艦隊が、ララ達の所属になった

 

「じゃあ今からキッチリ二四時間後、第一艦隊と合流の為に出発するわ。準備よろしく」


 その時、通信窓から慌ただしい音が聞こえてきた。ソリスも副艦長から何やら報告を受けている 

「ララ十揮長、命令変更よ。出発は十二時間後」


「何かあったんですか?」


 通信窓からはまだ慌ただしく声が飛びかっている


「《皇星ファムリオール》に軌道要塞級の隕石が接近中、だそうよ」


「隕石?」


 軌道要塞級の隕石をララはすぐに想像できた。同時に最悪の事態によるその被害も


「それで私たちはどうするんですか?」


「今第五艦隊が調査に向かってるから、とにかく早く第一艦隊に合流しましょう」


「わかりました」


「それじゃ」

 

 通信窓が消え、外部カメラの映像に切り替わる 

「十二時間後とはだいぶ急ですね」


 クロムが言った


「仕方ない。緊急事態だから」


 ララは軽くため息をついた。まさかこんなにも早く緊急事態になるとは思いもしなかった


「でも軌道要塞級の隕石なんてどうやって破壊するんですか?戦滅艦の一斉射撃でも表面を削るくらいしか……」


 今度はイリアムが振り向いて言った。アトリアスは無言のまま端末に指を奔らせている


「それを考えるのは司令部の仕事だよ。それに高戦艦の火力じゃできることは限りなく少なそうだしね」


 後方の計務士席からのカイルの声にララは腕組みをしてうなずいた

 

「みんな、準備急いで」


「了解」


 ララの指示で一斉に端末に向かい操作し始めた。艦橋は三人の主任が部下達に指示を出す声で、一気に慌ただしさを増した


「配属が決まった途端これか。運があるんだかないんだか」


 カイルは周りに聞こえないように小さな声でつぶやいた







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