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02 二人の若者

 

 ララは艦長室に入ると椅子に座り深く息を吐きながら机に突っ伏した

 

 先程の模擬戦闘で訓練航行は終わり、配属が決まれば晴れて正式な艦長として指揮することになる

 

 その事自体は彼女も嬉しかったが、最後の模擬戦闘は勝って終わりたかった

 

 だが戦隊長であるソリス百揮長は、ララを勝たせる気など初めから無い。実はソリス自身が≪サルヴァーシュ≫を操っていたのだ

 

 訓練航行の最終模擬戦闘の相手役を戦隊長が務めるのは一般的なことだが、訓練生達にはそのことは知らされない

 

 ララは敗北を経験するという通過儀礼を終えた

 

 その時艦長室の室外通信機が鳴った。卓上端末を見るとカイルの顔が映っている。ララは体を起こすと端末を操作して扉を開けた

 

「艦長、お疲れ様です」

 

 カイルが部屋の中へ進むと、扉は勝手に閉まった

 

「先程の模擬戦闘の事ですが……」

 

「カイル」

 

 カイルの話を遮ってララは

 

「二人しかいないんだから、いつも通りでいいよ」

 

「ああ、そっか」

 

 それを聞いてカイルは思い出したように言った

 

「言っとくけど、私は落ち込んでなんかいない」

 

「おいおい、僕の仕事がなくなるよ」

 

 カイルは苦笑いして言う。ララはそんなカイルの顔をじーっと見ながら何か言いたそうだ

 

「あの三人に言われたの?」

 

「まあね」

 

 カイルは隠さず答えた

 

「みんなもそれほど心配してないよ」


「そうかな」


 ララが卓上端末に目をやると二人ともしばらく黙っていた


「カイル……」


 ララが口を開いた


「なに?」


「黙って突っ立っていられると落ち着かないんだけど」


「なるほど」


 カイルはうなずきベッドに座った


「相手の艦長は誰だったんだろう」


「そうだねぇ」


 ララは模擬戦闘での《サルヴァーシュ》の艦長のことを考えた


 艦の性能が同じなら勝負を決めるのは艦長次第というわけだ


「実はソリス戦隊長だったりして」


「まさか」


 そう言うララ自身も最初は同じことを考えていた


 もしそうなら始めから万が一にも勝ち目はない 

「まぁ考えてもしかたないよ」


「うん、そうね」


「じゃあ僕はもう行くよ」


 カイルは立ち上がって出ていこうとした


「カイル」


 扉の前で呼び止められてカイルは振り向いた


「ん?」


「心配させてごめん」


「いいよ、気にしないで」


 カイルは笑顔で退室した


「しっかりしないと」


 椅子の背もたれに体を預け、静かにつぶやいた 




 星系連合軍が艦隊を展開している宙域は、超空間航路を使っても端から端まで行くのに半年以上かかるほど広大になっている


 彼はその広大な範囲の一番端にいた


 彼の仲間達も星系連合領域を囲むように配置されている


 そして彼は今ちょっとした異常事態に陥っていた

 

 輝く星たちの海の中にいるはずの彼だが、彼の視界の中央に星の輝きは見られない


 そこにあった星たちが一斉に消えたとも考えられない


 彼は持てる力の全てを使って原因を調べ始めた 

 原因はすぐに判明した 

 星が消えたのではなく星と彼との間に何かが割り込んでいるのだ


 何かの正体を調べている間にもその影はみるみる巨大になり、ついに彼の視界は影で埋め尽くされた


 調査した結果を仲間に届けた後、凄まじい衝撃とともに彼はこの宇宙から消えた




 


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